第39話 はと その2

「おっ、お姉ちゃん!」

「さすがに鳩を潰しちゃ、鳩が可哀想すぎるよ!」


 私は、慌ててお姉ちゃんに言う。

 幾ら鳩が憎くても殺すのは不味いし、それに犯罪行為に成ってしまう!!


「なら……近づけ無い様に、するしか無いわね」


 お姉ちゃんは、理性を取り戻したようだ。


「うっ、うん、そうだね」

「鳩がベランダに来なければ、問題は無くなるもんね!」


「仕方ない…。恵那が言うからそうしてやるか…」


 お姉ちゃんはそう言い終えると、雑巾を持って来て、鳩の“フン”で汚れた手すりを雑巾で拭き、洗濯物を干し始めた。


(お姉ちゃんって、こんなにドス黒い性格だったけ…?)


 問題なく洗濯物を干している所を見て、私は大丈夫そうだなと思い、掃除機を掛けに、下に降りて行った。


 ……


 洗濯物を干し終わったお姉ちゃんは、先ほど言ったように、鳩を撃退するため(?)の買い物に出かけた。

 私はその間、部屋の掃除機掛けやトイレ掃除をして、そろそろお昼の準備をしようかなと思った時、お姉ちゃんの声が聞こえてきた。


「ただいま~~」


「お帰りなさい。お姉ちゃん!」


「恵那。買ってきたわよ! 鳩撃退グッズ!!」


 そう言ってお姉ちゃんは、自信満々に大きなレジ袋を私に見せる。


「早速、やるわよ~!!」


 お姉ちゃんは『ドカドカ』足音を立てて、2階のベランダに向かって行った。


(お姉ちゃんは、一体何を買ってきたんだろう?)

(気になるし見に行くか…)


 私はお昼の準備を後回しにして、ベランダに向かった。


 2階のベランダ……


「さて、早速、こいつを吊すか!」


 お姉ちゃんは両面が“きらきら”輝く円盤を、物干し掛けの有る場所に吊し出す。


「……そんな円盤で、鳩に効果有るの??」


「恵那。鳥は、光に弱いらしいのよ!」

「だから、円盤の反射光で鳩はビックリして、来なくなるのよ!」


 自信満々に言う、お姉ちゃん。

 あまり効果無いと何処かで聞いた事が有るけど、それを言ったら、私が“かかし”にされるかも知れないし、取り敢えず黙って置く事にした。


「さて、これは良しと! 次は……」


 円盤を数ヶ所付け終わった、お姉ちゃんは、今度は風船を膨らませる。

 何で風船と思って、しばらく見ていると、刈り入れ時の田んぼで良く見掛ける、目玉付きの黄色い風船だった。


「これを、此処にと……」


 黄色い風船をベランダのひさしの部分に取り付ける。

 ベランダには洗濯物と、鳥よけ円盤と、黄色い目玉風船が風で泳いでいる。

 日常風景からかけ離れた世界!?


「さあ、これで、大丈夫でしょう!」


 お姉ちゃんは、安心した顔で言うが……


「……お姉ちゃん」


「何、恵那…?」


「家のベランダがカオス化しているのだけど…」


「仕方がないわよ。恵那!」

「『鳩を潰すな!』と、恵那が言ったんだから!」


「でも、何か、異彩を放ち過ぎだよ!」

「こんな変な家、うちぐらいだよ!」


 私はお姉ちゃんに抗議をする。

 こんなの絶対に近所の人達の噂話に成るからだ!!

 お姉ちゃんはすると、ため息をついた。


「……じゃあ、恵那。どうしろと言うのよ」

「誰かが常に監視していれば、鳩は来ないだろうけど……あっ、そうだ!」

「じゃあ、恵那が鳩避けに“かかし”に為ってくれる?」


「!!!」


 何でそうなるの!?

 今日のお姉ちゃんは、本当におかしい日だ!!

 これでは、私は“かかし”にされてしまう!!

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