第26話 木華の名前 その2

(そうだ!)

(この話題なら、3人で話が出来る!!)


 私はひらめいた事を、早速実行する。


「そう言えば、木華ちゃん!」

「木華ちゃんの名前って、そのまま平仮名このは?」


「ん~、違うよ、恵那ちゃん。漢字だよ!」


 そう言って木華ちゃんは、名札を見せてくれる。

 名前はスーパーの時に聞いていたから、改めて名札を見るまではしていなかった。

 登下校中は安全のために、名札を隠す事になっている。

 名札を見ると『篠立木華』と書いてある。


「へぇ~~。木の華と書いて木華このはなんだ。何かすごいね~!」

「木華ちゃん!!」


「そっ、そう!!」


 名前を褒められて、少し照れている木華ちゃん。


「ふぅ~ん、良い名前だね。木華……」

「当て字見たいな感じもするけど……でも、良い名前だよ。木華」


 けなしているようで、ほめている音羽ちゃん!


「ありがとっ! 音羽ちゃん!!」


「!!///」


 木華ちゃんに言われて、少しほおを染める音羽ちゃん。


「でもね、木華だと判りにくいから、普段は漢字の方は伝えていないの」

「『このはと言います!』とだけ言うの!」


 木華ちゃんがそう言うと、音羽ちゃんは指摘する様に言い始める。

 実際、名前を聞いても漢字まで連想する人は少ないと思う。


「でもさ、木華!」

「もう私達○年生だし、そろそろ漢字の方でも伝えるべきでは無い?」

「テストの名前も木華で書いているんでしょ? まさか、まだ平仮名で!?」


 音羽ちゃんがそう言うと、木華ちゃんはバツが悪そうに答える。


「うん…。先生にも言われている。『名前は漢字で書きなさい』と……」


「ならさ、木華ちゃん。今日から、漢字に変えたら?」

「きっと今までは周りの人達に説明するのが大変だから『そう言って置きなさい』と言われたのでは無いかな?」


 私がそうアドバイスをすると……


「そう?」

「なら、今日から漢字で書いていくよ。恵那ちゃん!」


「そうした方が良いよ。木華!」


「そうだよ。木華ちゃん!」


 これで、丸く収まったかと思ったけど、木華ちゃんは少々疑問を持った表情をしていた?


「……音羽ちゃん」

「今、気付いたんだけど私の事、木華と呼んでいるね…」


「そうよ。木華と呼んでいるよ!」

「大人の人達は“ちゃん”付けで呼ばないの!」


 音羽ちゃんは木華ちゃんの言った事を肯定する!


「ふ~ん、そうなんだ!」

「えっ、じゃあ、私も恵那とかで呼んだ方が良いの。恵那ちゃん?」


「別に無理して、呼び捨てで呼ぶ必要は無いよ。木華ちゃん!」


 私はそう答える。


「じゃあ、恵那ちゃんは今まで通りね!」

「音羽ちゃんは、これからは音羽と呼べば良いの?」


「木華の場合は、音羽さんと呼んで!」


「え~、何で~~?」

「なら、今まで通り音羽ちゃんで良いや……ブ~~!」


「ぷっ!」


 ふて腐れる木華ちゃんを見て、私は何故か笑ってしまった!?

 木華ちゃんの名前でこんな展開に成るなんて、予想していなかった!!


 ……


 その後。

 数日間、私は2人の様子を見守っていた。

 仲良くまでは行かないけど、2人共普通に接している。


 私は改めて、音羽ちゃんに木華ちゃんの事を聞いてみたら『何か、どうでも良くなってきて……』の回答が来たけど、音羽ちゃんの顔は少し笑っていた。

 音羽ちゃんの中では、木華ちゃんとの距離を少し縮めた感じで有った。


 音羽ちゃんが木華ちゃんに敵対心持った理由は不明だが、取り敢えず関係が修復出来て良かったと私は思った。

 これをきっかけに、もっと仲良く出来れば良いと思う。

 私の本当の友達は、音羽ちゃんと木華ちゃんだから……

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