第25話 木華の名前 その1

 晩ご飯の時。

 私は昼間、音羽ちゃんに相談を受けた事をお姉ちゃんに話す。

 友達の相談を他人に話す事は、良くない事だと思うけど、お姉ちゃんと音羽ちゃんは、お向かいさんの関係でも有るし、私としてもお姉ちゃんには聞いて欲しかった。


「……」


 お姉ちゃんは私の話を聞いた後、目を瞑って考え始めた。

 考えが纏まったのか、お姉ちゃんはゆっくり目を開けると、困った顔をしながら話し始めた。


「お姉ちゃん。木華ちゃんとは会った事ないから、良く分からないけど、結構複雑そうね…」


「そうなんだよ!」

「今回は音羽ちゃんが自己解決しちゃったけど、木華ちゃん自体の問題は解決していないんだよ!!」


「別に喧嘩している訳じゃないから、無理に仲良くさせる訳にも行かないしね……」


「どうしよ、お姉ちゃん…!」


「しばらく、様子見るしかないね!」

「音羽ちゃんが一方的に思っている問題だから」


「やっぱり……」


 お姉ちゃんに相談しても、あまり良い答えは出なかった。

 音羽ちゃんは木華ちゃんの事、有る程度は理解している見たいだけど、木華ちゃんはどうなんだろう?

 しかし、木華ちゃんは木華ちゃんだし、私が無理に2人を仲良くさせようとして、却って仲が悪く成ったりしたら、取り返しの付かない事に成るんだろうなと私は思った。


 ……


 翌日。

 私は何時もの時間に起きて、朝食を作り、朝の仕事をこなしていく。

 昨日の事は、あれはあれと割り切る事にした。

 私が首を突っ込んで、解決出来る問題では無いし、音羽ちゃんと木華ちゃんの問題は、最終的には2人で解決するしかない。

 もし何か有ったら、私は2人のサポートに回れば良いと思った。


 学校に行く時間になり、何時も通り家を出る。

 音羽ちゃんも、昨日の事は何も無かったように接しており、そのまま学校に向かう。

 何時もの曲がり角に来ると木華ちゃんは、今日も元気良くあいさつをしながら、私達の元に走って来る。


「おっはよ~。恵那ちゃん、音羽ちゃん!」


「おはよう、木華ちゃん!!」


「……おはよ」


 私は普通にあいさつをしたが、音羽ちゃんは不満げにあいさつをした!

 木華ちゃんも音羽ちゃんの異変に直ぐ気付く。


「あっれ~、元気ないね。音羽ちゃん!」


「そう…? ……普通だよ!」


 ぶっきぼうに言う音羽ちゃん!?


(あれ?)

(何、この空気! 前より悪く成っていない!!)


 私は危険な空気を察知して、この場で立ち止まらせない様にする。


「音羽ちゃん。木華ちゃん!!」

「それより、学校に行こ!」

「又、ギリギリになっちゃうよ(汗)」


「そだね…。恵那ちゃん」


「……何か、今日は不機嫌だね、音羽ちゃん。もしかして、女の子の―――」


「早く、行こ! 恵那ちゃん!!」


 音羽ちゃんは声を荒げて、スタスタ歩き始める。

 私と木華ちゃんは、急いで音羽ちゃんの後を追いかける。


 ……


 3人で学校に向かう。

 さっきの音羽ちゃんの言葉で、険悪ムードが続くかなと思っていたけど、そうにはならず、3人一応まとまっていた。


 私は3人で仲良く喋れそうな話題を出して、話が出来ないかなと考えてみる。

 音羽ちゃんVS木華ちゃんに成るから、音羽ちゃんは勝手に不満に成る。

 音羽ちゃんも私が居る手前なら、木華ちゃんに厳しい言葉を掛ける事は無いだろう……

 私は『何か、話題が無いかな…』と考えながら、3人で歩いていった。

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