第18話 社会見学

 私は建物の中に入って行くと、既にお姉ちゃんはチケット売り場で、チケットを買い終わっていて、私にパンフレットと共に渡してくれる。

 私はパンフレットを受け取り、パンフレットの表紙を見る。

 そのパンフレットには、回天歴史館と書いてある。


「お姉ちゃん?」

「回天歴史館ってなに?」


 私は、お姉ちゃんに早速聞いてみる。

 お姉ちゃんは、待っていましたばかりに答えてくれる!


「回天は第二次世界大戦で、旧日本海軍が作り出した特攻兵器!」

「別名“人間魚雷”。そしてここはその歴史館!!」


 さらっと言うお姉ちゃん!?


(特攻兵器?)

(人間魚雷??)

(なにそれ!!!)


 私はその……人間魚雷の事を、お姉ちゃんに聞いてみる。


「お姉ちゃん」

「人間魚雷って何…?」


「それわね、恵那」

「……魚雷の中に人が入って、人が魚雷を運転するの」


「???」


(さっぱり分からない??)

(魚雷って運転できるの? そもそも、魚雷って何!!)


 私はその場で、思考がショートして固まりかけてしまった!!


「あっ…、判りにくかった、恵那。ごめん…」


 すると、お姉ちゃんが謝ってきた。


「うん……全然解らない!」

「まだ、学校の授業で習ってないから…」


「そうだよね!」

「でも、学校の授業じゃあ、余程の事が無い限り教えないけどね♪」

「じゃあ、館内を回りながら説明するね!」


「うん。そうして欲しいな。お姉ちゃん!!」


 そして私は、お姉ちゃんと一緒に、回天歴史館を見学する。

 回天は九三式酸素魚雷を元にした、神風特攻隊の魚雷版で、敵艦に回天(魚雷)を命中させて敵艦を沈める特攻兵器……

 回天の中に居る人は……魚雷の爆発時に、その爆発に巻き込まれて、死んでしまう……


 私が生まれる前に大きな戦争が有って、日本がその戦争に負けて、その事はテレビの特集とか新聞の特集で知ったけど、自ら死に行くなんて、戦争って改めて、むごいなと感じた……


 お姉ちゃんの言っていた社会勉強は、本当の社会勉強に成った。

 回天歴史館を出た後…、私達は歴史館入口右側に有る鐘楼しょうろう前で、お姉ちゃんと一緒に『戦争・紛争がこの世から、早く無くなりますように!』と祈った。


 ……


 歴史館を出た後、私達はふもとに有る食堂でお昼ご飯を食べて、その後は戻るのだが、船の出発まで時間が有るので、それまでの間、島内をのんびりと散策する。

 今日の天気は薄曇りだけど、風も適度に有って、歩くには丁度良かった!

 私はこの旅行に実行してくれた、お姉ちゃんにお礼を言う。


「お姉ちゃん、ありがとう!」


「えっ、恵那!?」

「いきなり……何、言い出すの??」


「だって……こんな遠い所まで連れて来てくれて、旅行代金も全部お姉ちゃんのバイト代から出ているし、私はお礼を言いたかったの!!」


「恵那……お礼なんて良いわよ!」

「私も、久しぶりに旅行したいなと思っただけだから!」


「それとね、お姉ちゃん……今までごめんなさい…」


「どうしたのよ、恵那?」

「今度は、急に謝りだして//////」


「今日の恵那は、どこか変だよ?」


「私ね、お姉ちゃんこと、今まで嫌いだったの!」

「でもね……お姉ちゃん」


「私の事を結構、気にして居てくれている事に気付いたの!!」 

「だから、その……ごめんなさい」


 私は立ち止まり、お姉ちゃんに向けて頭を下げると……


「恵那……」

「お姉ちゃんもね、恵那の事に中々気付け無かったの!」

「恵那が頑張ってお家の事を全部やっちゃうから、それが当たり前だと思っていたの!!」


「けど、最近の恵那は凄く疲れた顔をしていたから、私も何か、お手伝いをしなくちゃと感じて……」


「お姉ちゃん…//////」


「恵那!」

「これからは“どんどん”、お姉ちゃんを頼ってね!///」


「うん!!」

「本当にいっぱい頼るね。お姉ちゃん!!」


「恵那……ほどほどにね…」


 ……


 その後は船に乗って戻り、そのまま帰るのでは無く、日帰り温泉に寄ってから家に帰りました。

 お姉ちゃんが、途中で仮眠を取ったので、私の家に着いた時間は翌日の昼前でした。

 私は行きより、お姉ちゃんにたくさん話をしました。


 夏休みの思い出……

 お姉ちゃんと旅行に行けたのは、もちろん楽しかったけど、お姉ちゃんとの溝が、ほとんど無くなった事が一番の思い出です!!


 来週から学校が再び始まり、忙しい日々がやって来ます。

 けど……今度は夏休み前よりも、楽しくやれそうな気がします。何となく!!

 お姉ちゃんとの生活。やっと楽しく成って来たのかな?

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