第6話 木華(このは)

 ある日の夕方……。私は晩ご飯の準備を始める。


「今日は、肉じゃが!」


「じゃがいも・玉ねぎ・にんじん・豚肉……」


 私は一人喋りをしながら、肉じゃがの材料を準備する。

 戸棚を開けて、醤油のペットボトルを取り出すが……


「あっ!」

「醤油が、少ししか無い!!」


 醤油などの調味料はお母さんが特売の時に、纏めて買っているはずだが、戸棚の奥を見ても醤油ボトルの新品は無い……


「う~ん……、買いに行くしかないな~」

「お姉ちゃんは、早く帰ってこない日だし……」

「塩味の肉じゃがでは、美味しくないと思う…仕方ない、買いに行くか!」


 私は晩ご飯の準備を一旦中断して、急いで近所のスーパーに向かう事にした。


 ……


 近所のスーパー……


 買う物は醤油しか無いので、店内に入った私は、そのまま調味料コーナーに足早に向かう。

 調味料コーナーに行くと、私と同じ位の子がいる。この子もお使いなのだろうか?


 私は横目でその子をチラ見して、我が家で使っている銘柄の醤油を見つけ出して、醤油を持ってレジに向かおうとした時に……


「あっ、あの……醤油。どれを買えば良いの?」


 私は声で振り向くと、その子はとても困った顔をしていた。


(あっ、この子……たしか、この前転校して来た子だ!)

(名前は……覚えていない…。隣のクラスの子だし……)

(たしか、お姉ちゃんが居るって、音羽ちゃんが言っていた)


 私はどの様に答えようかと迷ったけど、当たり障りの無い返事をする。


「家で使っている、醤油を買えば良いんだよ!」


 私は、その子にそう言うが……


「判らないの……」

「お姉ちゃんに『醤油。買って来てって』と言われただけだから」


「そうなの?」

「じゃあ、これにしたら。量も沢山入っているし、値段の割に美味しいよ!!」


 レジに持って行こうとした、1L入り醤油のペットボトルを、その子に見せる。


「じゃあ、それにしようかな…」

「美味しい醤油なら、大丈夫だもんね…」



 その子は私と同じ銘柄の醤油を持って、一緒にレジに向かう。

 会計をしてスーパーを出る。私とその子。


「あの、ありがとうございます…」

「助かりました……」


「別に、お礼何か要らないよ。転校してきた子だよね!」


「はい!」

「私の名前は篠立木華しのだちこのは。クラスは、5年○組」


「私は、白川恵那」

「隣のクラスだよ。よろしくね、木華ちゃん」


「はい! よろしくお願いします!!」


『ぺこり』


 丁寧にお辞儀をする、篠立木華ちゃん。

 親のしつけが良いのかな?

 帰り道が同じらしいので、途中までは一緒に帰る事に成った。

 その間、木華ちゃんは家族の事を教えてくれる。


「へぇ~」

「……お姉ちゃんと2人で、こっちに来たんだ…。何か、大変だね」


「うん……。色々と有ってね…。こっちで住む事に成ったの」


 木華ちゃんと話ながら、しばらく一緒に歩いていると……


「あっ…私。こっちの道だから!」


 木華ちゃんは、そう言ってきた。


「じゃあ、ばいばい」

「木華ちゃん。また明日!」


 しかし……、木華ちゃんはその場から歩き出そうとしない。

 すると、木華ちゃんは“もじもじ”しながら話し出す。


「恵那ちゃん……。私と友達になってくれない?」


 私は直ぐに返答をする。


「もう、友達だよ。木華ちゃん。スーパーで会った時から!」


 木華ちゃんは満面の笑顔で応える。


「うん!!」

「ばいばい、恵那ちゃん。明日も学校で会おうね!」


 うれしそうな顔で、手を振りながら遠ざかって行く木華ちゃん。

 友達、1人増えたみたい!

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