第7話 深まる二人

 学校の休み時間。

 木華ちゃんと友達になった事を私は音羽ちゃんに話す。


「ふーん」

「そうなんだ……。やっぱり両親は居ないんだ…」


 音羽ちゃんは何かを納得した表情で聞いている。

 実は音羽ちゃんも知っていた!?


「そうみたい…」

「両親は交通事故で死んじゃったって、木華ちゃんは言っていたけど…」


『キーンコーン、カーンコーン、―――』


 私が音羽ちゃんに説明している途中でチャイムが鳴ってしまう。


「あっ、チャイム成ったよ。恵那ちゃん」

「その話はまた後でね、恵那ちゃん…」


「うん…」


 木華ちゃんに関する話は、中途半端に終わってしまった。

 改めて説明する程の話ではないので、音羽ちゃんはわざわざ聞いては来ないだろう。


 ……


 今日の学校の授業が全部終わる。

 私は買い物に行かないといけないので、帰る準備をする。

 どうせ帰るなら、音羽ちゃんと一緒に帰ろうと思って声を掛ける。


「音羽ちゃん、一緒に帰ろ!」


「あっ、ごめん、恵那ちゃん…」

「今ちょっと、話から抜けられなくて……」


 音羽ちゃんはクラスの女子達と何か話し込んでいる。


「……じゃあ、私先行くね」


「うん、ごめんね…」


 私はそう言って、さっさと教室から出るが、音羽ちゃんとクラスの女子達の楽しそうな声が私の心に残る……


「別に、うらやましく何か無いもん……」


 私は校門を出た所で、誰かにいきなり声を掛けられる。


「恵那ちゃん、一緒に帰ろ!」


「木華ちゃん!?」


「待ってたよ☆」


 木華ちゃんは笑顔でそう言ってくれる。


「うん、一緒に帰ろ!!」


 木華ちゃんと一緒に帰る。

 やっぱり1人で帰るより、誰かと一緒に帰った方が楽しい。


 学校での事を木華ちゃんと話す。

 やはりクラスが違うと、知っている情報でも真新しく聞こえる。

 そして…、楽しいおしゃべりも、別々の方向に向かう道で終わりを迎える。


「じゃあね、恵那ちゃん。明日も校門の所で待っているから!」


「うん……」

「木華ちゃん……私、授業が終わると直ぐに教室から出るから、木華ちゃんに迷惑掛けちゃうよ…」


「私は大丈夫!」


「クラスの子達とおしゃべり出来ない位……、私は早く出て来るんだよ!」


 私は、木華ちゃんに少し強めに言う。

 木華ちゃんと、一緒に帰りたく無いから言うのではなく、女の子はおしゃべりで仲を深めている。私に付き合わせたら、私見たいに友達を失ってしまう……


「恵那ちゃん」

「私……、恵那ちゃんしか友達いないんだ…」


「えっ、何で!?」


「別に、いじめとかじゃないよ…」

「私……お家の事。お姉ちゃんと一緒にやっているから、あんまり友達と遊べないんだ」


「お姉ちゃんは『手伝わなくても良いよ!』と言うけど、大変なお姉ちゃん見ていると、やっぱり……」


 何か…、私達似ている。私はそう感じた。

 私は木華ちゃんなら事情を話しても良いかなと思った。


「木華ちゃん……私もね、お家の事手伝っているの」


 木華ちゃんに、私の今までの事を話す。

 昨日出会ったばかりの子に、私の内情を話すのは少し躊躇ためらったけど木華ちゃんになら話しても良いと感じた。


「恵那ちゃん。お料理も作るんだ……私より大変だね」


 木華ちゃんは私に同情してくれる。


「うん。慣れれば、大したことでは無いけど」


「恵那ちゃん。私の本当の事も話すね……」


 木華ちゃんが、この町に来るまでの経緯いきさつを話してくれる。


「木華ちゃん……」


 私は木華ちゃんの事実を聞いて衝撃を受けてしまう!?

 まさか、そんな非道い事が有ったなんて……


「恵那ちゃん、誰にも言わないでね…。この話を知っているのはお兄ちゃんとお姉ちゃんと恵那ちゃんだけだから…」


「お兄ちゃん……?」


「うん。私達を大切に想ってくれて、そして引き取ってくれた人」

「だから私は、その人の事をお兄ちゃんって呼んでいるの」


 木華ちゃんの事情は、聞いてる側も耐えがたい内容だった。

 物語の主人公が入れ替わる位の重い内容だった……


「そう言う事!」

「だから、私の友達は恵那ちゃんだけ!」


 あんな重い話をしたのに、笑顔で声を掛けてくる木華ちゃん。


「バイバイ、恵那ちゃん。また明日!!」


「えっ!?」

「あっ……うん、バイバイ! 木華ちゃん!!」


 木華ちゃんは『たっ、たっ、たっ』と走って行くが途中で振り返る。


「私達、本当の友達に成れるかもね…」


 木華ちゃんは『にこっ』と笑顔だけど、少し寂しそうな表情も混じっている様に見えた。

 それでも私は、大きな声で言う!


「木華ちゃんとは本当の本当に友達だよ!!」


「恵那ちゃん! ありがとう~~」


 こうして、私と木華ちゃんの仲は直ぐに深まりました。

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