04.03.鉢合せ
「さて、仕事の話をしようじゃないか」
なんでも、サービス開始日は決まってるのに仕様が固まっていないのだとか。しかも、依頼元は自分たちが作りたいサービスのイメージすらできないらしい。そこで、先ずはプロトタイプを作り、そこに肉付けしてく感じで進めたいということなのだが、
「まさか、これだけですか?」
「そうだな。依頼元からはこれしか出てきてないんだ」
「……他あたってもらえますか」
あまりにも酷すぎる。サービス名だけでシステムを開発しろと言われているようなものだ。こんな案件を受けてしまえばろくなことにならないのは目に見えている。
「そこを何とか頼めないか? 報酬もはずむっ。そうだな、月200でどうだ?」
「SES、月40時間でいいなら受けます」
SESとは、System Engineering Service の略であり、特定の業務に対して技術者の労働を提供する形態の契約となる。労働時間を提供するだけなので、成果物に対する責任を問われることはない。
普段
だが、今回
「
「20時間分は言い過ぎですけど、こんな条件でもいいなら受けてもいいですよ」
「決まりだな。ただ、条件が1つあってだな、デザイナーと連携して進めてほしいんだが」
「まあ、そうでしょうね。僕だけで作ったらイメージ湧かないでしょうから。ってことは
残念ながら
「そうなな。だが喜べ、すごい美人だぞ」
「間に合ってますから」
「
「嘘……、彼女いるのに私にあんな事……」
深夜に突然酔っ払いに押しかけられ、早朝から意味不明な言葉が飛び交う中、この部屋の主でありながらぽつんと取り残されていた少女が割り込んでくる。
「何かしたみたいな言い方やめてね。仮に何かしてたとしても君が勝手にしたことなんだから」
「酷いよ、そんなの……」
顔を押さえ、肩を揺らして泣いているのか。いや……
「あーずーざー、嘘泣きだってのはわかってるからな。少し黙ってて貰えるか?」
「なによ、ここ、私の家なんですけど?」
「登記上の所有者は私なんだが?」
「ちぇっ……」
ふてくされて部屋の隅で体育座りしてしまう
「
「どっちも出しませんから」
「そうか……。まあいい、今日ちょうどデザイナーの彼女と会う約束があるから
「構いませんけど……」
その前に三人に連絡しとかないとな
昨日は連絡もしないで外泊しちゃったし
心配……というより、怒ってるだろうな、きっと
でも第四条には抵触してないからね
「電池切れか……」
「私のを貸そうか? 生憎ケーブルは持ってないんだ。
「連絡先覚えてないので一旦家に帰ってから出直すことにします」
「あー、時間が無いんだ。10時の約束だからそろそろ出ないと間に合わない」
酔っ払って遅くまで寝てたみたいだから仕方ないか……
顔合わせだけならそんなに時間もかからないかな
「わかりました。顔合わせだけしてすぐに帰りますね」
「それで問題ない」
◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆
やって来たのは
「
デザイナーは現れなかったが、代わりに見知った美人が
何でこんな所に……
GPS? 電池切れてるしな
あれ? 髪の毛、黒くない?
「帰ってこないと思ったら、こんな所で女の人と一緒だったんですね……」
「いや、これは仕事で……」
「
「えっ、
ってことは、デザーナーって
「念の為確認なんだが、今の会話から想像するに……、二人は付き合ってるってことでいいのか?」
「「はい」」
「しかも同棲してると?」
「「はい」」
「だったら話が早い。
「……」
不満、不服、それに少しばかり怒りを混ぜ込んだ視線を
起こった顔も綺麗だな……
そんな事を考えている場合ではない。その矛先が
「何か問題でもあるのか?」
「昨夜は……
「あー、そのことか。私事なのだが旦那に浮気されてしまってな、悔しいから
バン
「ホテルっ!?」
テーブルを叩き、身を乗り出して
「落ち着いて最後まで聞かないか。行こうとは思ったんだが頑なに拒否されてしまったよ」
「じゃあ、何もなかったんですねっ!」
「そうだな、私とは無かったな」
「私とは?」
その一言で矛先が
この案件、コケても知らないからね
“私とは” なんて些細なことに気付かなくても……
魅力的な顔だけど……怖いって、やっぱ
「何も無かった……と思う」
自信ないけど……
あったとしても意識のない間に起きた事なんだし
僕の所為じゃないというか……
「誰と?」
「何もなかったから――」
「誰と?」
「
「……」
無言で
怖いです……反省してます……
「ごめんなさい……」
沈黙に耐えきれず、自覚もないのに謝ってしまう
「はぁ……、
「いいだろう。こちらとしてもそうしてもらえると助かる」
「二度とこんな事が起きないようにずっと側に居ますから」
「私も
「もう二度と
「貪欲って……」
結果的に、
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