03.11.墓参り

 丁度彼岸の時期ということもあり、真耶まやそらや他の嫁と共に神月こうづき家の墓参りに来ていた。


    やっとお祖父様にお礼が言えるのですね


 そんな思いでこの場に望む真耶まや

 初めてはそらと。実際に結ばれるまでそんな想いで悶々と過ごしていた真耶まや。未経験ということで自慰行為にも色々と制約が付く中、少し変わった欲求の満たし方法を見出してしまっていた。今となっては止めるに止められなくなってしまったそんな性癖をそらは受け入れてくれた。

 それも全てはそらの祖父が口癖のように言い聞かせていたというどうしようもない言葉によるものなのだ。


    “女の子のお尻は綺麗だから舐めても平気なんだぞ”


 何を思ってそんな事を言っていたのか今となっては知る由もないのだが、幼少期からそんなことを言われて育ったそら真耶まやが要求するまでもなく自然とそれをやってのけてしまったのだ。

 運命の人にそんな要求ができるわけないと思っていた真耶まやにとって感動の一瞬だった。全身に電流が走る感覚だった。もう本当にこの人しかいなんだと思った瞬間だったのだ。


 「お祖父様、感謝しています」


 その思いがつい口に出てしまう。


 「なんだ真耶まやそらのじいちゃんに会ったことあるのか?」


 「そんな訳あるはずないじゃないですか」


 「だよなぁ。じゃあ何の礼だ?」


 「そ、それは……」


    絵梨菜えりなだってしてもらってるじゃないですか

    不思議な感じだけど気持ちいいって言ってたじゃないですか

    そらがあんな事してくれるのはお祖父様のお陰なんですよ……


 だからといって、そらに暗示を掛けてくれた事に感謝、などと大きな声で言えるわけがない。


 「そらを育ててくれた事に対してです」


 含みを持たせてやんわりと誤魔化す。そういう方向に育てたという意味では嘘にはならない。


 「そっか、じゃああたいも。あんがとな、じいちゃん」


 わかってないまま手を合せる絵梨菜えりな


 「そらはお爺ちゃん子だったのか?」


 「どちらかというとお婆ちゃん子だったと思うけど」


 「意味不明だな」


 それもそのはず。そらが祖父の話をしたのは真耶まやにだけ。いつものように二人でスーパーへと向かう途中での事だった。

 故に、単に育てたと言われれば、絵梨菜えりな琴乃ことののように文字通りに捉えるのが普通だ。挙句、お婆ちゃん子だったなどと聞かされれば不思議に思うのは無理もない。


 「琴乃ことのさんにはわからなくていいのです」


    お祖父様、とおるに名言残してくれて、ありがとうございます!

    本当に感謝しています!!


 「わかった、これだな」


 徐にそらの股間を指差す琴乃ことの。ここは育てようと思って育つものなのだろうか……


 「おお、そういうことか! そらのじいちゃんもでかかったのか!」


 「意識してなかったから知らないよ……」


 「遺伝子に感謝」


 その意味では感謝しても良いかもしれない。


 「あとセフレにも」


 セフレとはゆいの事。確かに、そらを大きいだけではない存在に育て上げたのはゆいだ。


 「ゆいさんの事はもう……」


 「琴乃ことのは諦めない」


 「何でだよ、僕はもう何とも思ってないのに、何で琴乃ことのが……」


 「ここに引っかかってる」


 そらの左胸を指先でつんつんする琴乃ことの


 「引っかかってなんか……」


 「無理しない」


 お見通しとばかりにそらを抱きしめる。


 「……ごめん。琴乃ことのと、真耶まやと、絵梨菜えりながいるのにね……。もう少しだけ……、時間が経てば忘れられると思うから……、だから、それまでごめん」


 「心配ない。琴乃ことのゆいが気に入った。一目惚れ。必ず手に入れる」


 「まあ、斎藤さいとうさんならしょうがねえか。そらの初めての人なんだしな。琴乃ことのの所為であたいもそっちもいけそうな気がしてきてるし、いいんじゃないのか、斎藤さいとうさん」


 「私は……、正直に言えばこれ以上増えてほしくはありません。できればそらを独り占めしたいぐらいです」


 「ダメ」


 「わかってますよ。わかってますけど、せめて今のままでいてくれれば……」


 「そらなら大丈夫。いっぱいしてくれる」


 「それもわかってます……。でも……」


 「真耶まや、心配ないから。僕はこれ以上増やす気ないからね」


 実際そらにそんな甲斐性など無かった。琴乃ことの真耶まや絵梨菜えりなも、向こうから転がり込んできたようなものなのだ。


 「第五条、そらにそんな権利はない」


 第五条、嫁を追加するには厳正な審査が必要。容姿、性格、性癖を考慮して琴乃ことのが判断するというとんでもない家訓だ。あの時誰も拒絶しなかったため、その効力を発揮してしまっている。


 「……おかしいよね、それ。僕のお嫁さんなんだけど」


 今更言っても遅いのだ。

 付け加えれば、よほどの事がなければそらは来るものを拒まないだろう。いや、拒めないのだ。コミュ障故に上手く断れないのだ。流されるまま、嫁が三人になったように受け入れてしまうだろう。

 それを抑制する為の第五条、そらはそう思っていた。もしもの時は琴乃ことのが上手く断ってくれるのだと。だから拒絶しなかったのだが、逆手に取られてしまったようだ。


 「家訓に抵触すると罰が当たる」


 「当たらないから、絶対に……」


 罰が当たる事はないだろうが、この第五条によりハーレムの実質的なリーダーは琴乃ことのとなり、こ先の勢力拡大に多大な影響力を持つこととなる。

 そんな事実が先祖の墓前で胸に深く刻み込まれた。

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