03.06.4Person

 「そうやって見られてると落ち着かねえなぁ……」


 初恋の相手を前にして、自らは既に半裸の状態。後はこのまま流れに身を任せて……、とは行かないようだ。嵐に負けずにやってきたからと、二人でさせて貰えることにはなったのだが、だからといって琴乃ことの真耶まやがこの場を去るなどという事はないのだ。三人での行為に慣れてしまっているそらには抵抗がないようだが、絵梨菜えりなにとっては初めての経験。誰かに見られながら、など初めての事なのだ。


 「直ぐに慣れる。どうせ最後は全員」


 「そ、そうか……。そら……」


 漸く思いが叶うのだ、ここで引くわけにはいかない。覚悟を決めてそらの腕の中に飛び込む。

 ちなみに、灯りを消してくれるなどという気遣いは二人にはない。そらと新たな嫁の行為を見物する気満々なのだ。



    ◆♀(→_→)◆ ❤♂♀❤ ◆(←_←)♀◆



 「はぁ、はぁ、そら……」


 6年越しの想いが叶い、うっすらと涙を浮かべる絵梨菜えりな。それはそらも同じだった。初恋の相手と結ばれ、得も言われぬ達成感に酔いしれていたのだ。


 「ねえ、いつもより長くなかったですか?」


 「真耶まやのいう通り。ゆるかった?」


 「ゆるくないっ! ゆるくなかったよなっ、そら。違うって言ってくれ」


 「勿論だよ、これで何回目だと思ってる? ちょっと根本も痛くなってきてるしそんなには無理なんだって」


 「えっ、じゃあ私とは……」


 「ま、まだ大丈夫かな」


    そんな顔されたら無理だなんて言えないよ……

    そうなると琴乃ことのだけ無理だなんて言えるわけないよな……


 「よかった~、私も長くしてくれるんですよね」


 「うん……、ちょっと休憩が必要だけどね」


 「わかりました♪」


    えっと……、休憩は……


 真耶まやが何やら始め、絵梨菜えりなは余韻を楽しむようにそらに体を預け、鍛えられていない薄い胸板に頬擦りする。


 「そういえば絵梨菜えりな、家の人にはここに来ること言ってきてるの?」


 「……」


 「言ってきてないんだ。探してるんじゃない? 台風も来てるしさ」


 そらの事しか見えていなかった絵梨菜えりなには仕方のないことなのだが、台風の夜に行方不明などとは、大事にならないわけがない。家族総出で探し回っている可能性もある。


 「そうだな。連絡しとこうかな……」


 一旦そらから離れ、玄関に置いたままのびしょ濡れのバッグからスマホを取り出して再びそらの胸に顔を擦りつける。


    “さがさないで”


 そらが目にしたのは、そんな一言だった。


 「それだと家出したみたいだけど」


 「そうだな……」


 しかし、絵梨菜えりながメッセージ送り直すよりも早く電話がかかってきた。


 『絵梨菜えりな、心配してたのよっ。無事なのねっ、今どこにいるの? お父さんに迎えに行ってもらうわ』


 「あー、男んとこにいるから心配しないでくれ。迎えもいらない」


 『男って、誰なの? (貸しなさい、母さん) ちょっと、あなた……。  絵梨菜えりなか、今どこに――』


 電話先で母から父へと代わり、その途端、絵梨菜えりなは通話を終了してしまった。


 「いいの? お父さん」


 「あんな奴どうだっていい。連絡もしたし、これでこっちにいられるな♪」


 あんなやり取りで十分かどうかは定かではないが、嵐の中を探し回るという心配だけは無くなっただろう。そもそも絵梨菜えりなはそんな事すらどうでも良かった。折角受け入れてくれたそらから離れるつもりなど無かったのだ。


 「絵梨菜えりなは進学したの? それとも就職?」


 「進学したにはしたんだけどさ、そらも知ってるだろ? 地元の女子短大だよ」


    名前書ければ合格できるって噂の……


 「あんなとこ卒業してもどうにもならないし、辞めちまおっかな。そしたらずっとこっちに居られるし」


 「そろそろ交代です、絵梨菜えりな


 「絵梨菜えりなっていきなり呼び捨てかよ」


 「嫌ですか? でも同じ歳ですよね。私も真耶まやでいいですから」


 「そうだな。同じ嫁だもんな、そらの」


 「ええ。で、どいてくれないのですか?」


 「そうだな……」


 名残惜しそうにそらから離れる絵梨菜えりな。今度は見物する立場へとまわる。


 「うお~、そんなことするのか! 後であたいにもしてくれるか、そら


 「ちょっと、静かにして下さい。集中できないじゃないですか」


 「……わるかった。つい興奮しちまって」



    ◆♀(→_→)◆ ❤♂♀❤ ◆(←_←)♀◆



 「やっと終わった。漸く琴乃ことのの番」


 「もう喋ってもいいんだよな。人がしてるの見てるのって変な気持ちだな。あたいもあんな風になってたのか……。それに見てるとしたくなってきちまうもんだな……」


 「次は琴乃ことの


 「わかってるって」


 真耶まやを押しのけ、そらに抱きつく琴乃ことの


 「な、なんだそれ……、そんなのもありなのか?」


 「ふん、アンダー65のG。余裕」


 「Gなのかよ……」


 絵梨菜えりなの視線が真耶まやへと向けられる。


 「な、なんですか」


 「AAか……」


 「人が気にしてる事をっ、そらは綺麗だって言ってくれますから。絵梨菜えりななんて…」


 「70のDだ」


 「D……、そらぁぁぁぁ」


 甘えるようにそらに抱きつこうとする絵梨菜えりなだったが、琴乃ことのに阻まれる。


 「琴乃ことのの番」


 「わかってますけど、少しぐらいいいじゃないですか」


 「よくない。琴乃ことのはじっとまってた」


 「……わかりましたよ。早く始めてください。準備できてますよ」



    ◆♀(→_→)◆ ❤♂♀❤ ◆(←_←)♀◆



 「よっし、あたいの出番だ!」


 絵梨菜えりなを無視し、再び起動準備に入る琴乃ことの


 「あたいにもそれやらせてくれって」


 「二人共、今日は無理なんじゃないかな。根本が痛いよ」


 「そんなこと言うなよ……、そら


 「そうですよ、そういう約束なんですから」



    ◆◆◆◆◆ ❤♀♂♀♀❤ ◆◆◆◆◆


    ……

    ……

    ……


 嫁が増える事は嬉しいことなのだが、体がもつかどうか心配なそらだった。

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