01.10.確保
教習所にやって来た
もう居ないんだ……
会いたいって言ったら来てくれるのかな……
自信が持てない理由、それは
昨日言ってた予定って……
中学時代から意識していた
沈んだ気持ちのまま路上教習の予約を入れる。
本日受け持つ生徒の中に
とはいえ嫌でも時間は流れ、
「宜しく……お願いします」
「宜しくね、
気まずい……
気にしてるんだろうな、
はぁぁぁ
気まずかろうが何だろうがこれが
「出たら左……、いえ、右ね」
「はい」
コース指示のやり取りだけを交わし、教習車は走る。
これじゃ余計に怪しまれちゃうかな……
何か話さなきゃ……
焦る
訊いて……みようかな……
でも、
あたいにそんな事訊く権利ないし……
思いつめる
会話もないままの信号待ち。ただただ前方を見つめていると、
間違うはずもない。朝までベッドを共にしていた
信号が変わる。
「この信号左っ」
「えっ、でも直進レーンだし……」
「いいから、左っ」
交通ルールを無視した指示に困惑するも、
「あの車を追って!」
「あの車って……」
「白い軽よ、ほら、二台前の」
何? どうしちゃったの?
わけも分からず後を追う
「このまま突っ切って!」
「無茶だよ!」
大型トラックがクラクションを慣らしながら右から左へと横切る。停止した教習車のすぐ前だ。
「変だよ、
指導するべき立場の人間がルールを無視しろと命令する。普通に考えたらありえない状況。
あたい……、邪魔?
伝えてだってないのに?
「……ごめんね。
「
「会って話さないと……」
会って話すって……
「
「……」
答えようとしない
何台もの車が通り過ぎ、信号が変わった頃には白い軽は見えなくなっていた。
「このまま真っ直ぐ……」
「……」
それからどれほど走っただろうか。車内に会話はなく、すれ違う車どころか民家も疎らになってくる。本当にこの道で合っているのか二人にはわからない。白い軽を見失ってからいくつもの交差点があった。どこかで右に曲がったかもしれない。或いは左かも。教習車は只ひたすらに真っ直ぐに走り続けてきた。
二人が諦めかけた時、
「あの車……じゃないか」
だが助手席に
「いいえ、あの車よ」
この道で合ってた……
この先に
人気のない耕作放棄地帯を通る一本の古い道路。その道をこらに向かって歩いてくる
「
「
窓越しに声を掛けた
「
「何してたのよ、こんな所で……。心配したんだから」
「何って……、突然ここで降ろ――」
「怪我してない? 変なことされなかった? 誰なのよ、あの女。私の
あの交差点で
よかった~
こんな事するなんて
「連れてこられただけですから。怪我をしてるといたら……、
そっか、何もなかったのね
「ごめーん、
「
「ほんとだ、じゃあ……
「いいですけど……」
「はぁ……、何見せつけられてんだろ、あたい……」
◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆
「えへ~~~」
「どうしたの
後のスケジュールにも影響を及ぼしてしまい、業務終了後に所長に呼ばれで小言を聞くはめになってしまったのだが、そんな事などなかったかのようなだらしのない顔でロッカールームへとやって来た。
「まさか。この後
「はぁ……、朝はあんなだったし、全身ボロボロになって帰ってくるし、心配してこうして待っててあげた私に詫びろっ! 私だって暇じゃないんだからね」
「あはは、ごめん、
「はいはい、ごちそうさま。よくわかんないけど解決したみたいで何よりだよ。じゃあ先帰るね」
呆れた様子でロッカールームを出ていこうとする
「
「ああ、プロポーズされたの。今朝報告しようと思ったんだけどあんな感じだったしね、忘れちゃってたわ」
「プロポーズ……、おめでとう、
「ありがと。
何かを言いかけたのだが思いとどまる
「私がどうかした?」
「まあいいわ、言っても無駄なんだろうけど、そんなに
「逃がさないようにって……、
「だからじゃない。若い燕を可愛がるのもいいけどそろそろ真剣に考えたほうがいいよ。都会と違って煩いから、そういうの」
「私はそれでもいいんだけど……、
夏休みが終われば向こうに帰っちゃうんだろうし……
私は休みも不規則だからそんなに会えないだろうから、
漲る欲望を我慢しろってのも無理なことよね……
「訊いてみなよ、
「ええー、重たい女って思われないかなぁ」
「さあね」
「そんな無責任な」
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