01.09.放置
「
「
雪女……
その隣には彼女の母親が座っていて、
勉強を見て欲しいって事だったんだけどな……
彼女は
そもそも、何で僕なの……
その理由も理不尽でしかない。母親同士が高校の同級生らしく、勝手にそんな話を進めていたのだった。もう店を予約してしまったからと無理矢理連れてこられた
母親たちはそんな
放ったらかしにされている方はというと、これといった会話もなく運ばれてくる料理を淡々と食べているだけ。
だだっ広い和室の真ん中に四人だけ。店は貸切状態で他に客は居ない。合掌造りの古民家を移築した雰囲気のある店で、
「なんだかこの子たちのお見合いみたいね」
そんな話で盛り上がり、
「そうだ、これを。雪ちゃんのプロフィールよ」
履歴書のような物を渡される。
「お母さん、勝手なことしないで」
見合いかよ……
思い出話はその後も暫く続き、足の痺れも限界をとっくに超えたところで漸くお開きとなりそうな気配となってきた。
「随分と長居しちゃったわね、
「そうね、そろそろ帰りましょうか。
「……」
人見知り同士なのだ、何のサポートもなくうちとけていると思う母親が間違っている。
「もうー、しょうがないわねー。二人で喫茶店にでも行ってきたら?」
「……はい」
この状況に至ってもサポートする気のない母親。
「そうね、後は若いもの同士で。頑張ってね、
頑張るって……
結局断ることもできず、
別に
わかってたことなのに……
何でこんなに苦しいんだろう……
そんな
次第に道沿いの民家も疎らとなり、最後に見かけた民家から更に15分が経過。舗装されたのが何時なのかもわからない程劣化したアスファルトの一本道をただひたすらに走り続け、水田だった名残だけを残しつつ森に飲み込まれてしまってた耕作放棄地帯へとやってきていた。もちろん、この1時間まったく会話が無かったのは言うまでもない。お互いずっと正面を向いたままだった。
こんな所に喫茶店なんて在るのかな……
流石の
道路に積もった落ち葉はしばらく誰も通っていない事を主張し、当然ながらこんな所に喫茶店などあろうはずもない。
昨日味わった不安と似ていなくもないが、昨日にはあった期待感が全く無い。
「あのー、何処まで行くんですか?」
「そうですね。そろそろいいでしょう」
路肩に車を停める
「降りてください」
「は? ここで?」
ここが喫茶店でないことは誰の目にも明らか。ならば、何故ここで降りなければならないのか。
「下心が見え見えなんですよ。勉強に託つけて私に近づいて来るなんて」
「何を言っているのか――」
「警察呼びますよ」
「何なんだよ……、あの女」
と、ぽつり。
タクシーを呼ぼうとスマホを見るも圏外表示。周囲の状況からすれば当然なのかもしれないが、最後に目撃した民家からは15分程は走り続けた。時速60kmで走行していたと仮定すると……
15キロ……
「3時間かよ……」
◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆
同じ日の早朝。
「はぁぁぁぁぁ」
教習所のロッカールームには昨日に続いて大きな溜息をつく
「まあ、そういう事もあるさ。弘法にも筆の誤り、猿も木から落ちる、
「何よそれ、最後だけ豚に真珠みたいになってるんだけど?」
「えへっ、気付いた? そう気を落とさなくても夏はまだまだ終わってないぞっ!」
「ご心配なく。ちゃんと頂いてきたわよ。ふわ〜〜〜ぁ」
「えっ、まさかいきなり朝まで……、トラウマになってないいといいんだけど、童貞くん」
「平気よ、たぶん」
「じゃあ何で溜息?」
「色々とね」
『僕は
はあ〜
昨日の
一夜限りって諦めてたからなのかな……
余計なこと言わなきゃ続いてただろうな……
なんであんな事言っちゃったんだろ……
……そうだ、全部
あとでぶん殴ってやる!!
その原因が
「はぁ……」
もう会えないのかな……
私で自信つけて
傷つけちゃったよね、私の事好きだって言ってくれたんだもん……
「顔が怖いんだけど……」
「うるさいっ」
教習車の整備に向かうと、後ろから
会ってちゃんと誤りたい……
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