01.04.助言
いつものように担当教官が現れるのをロビーの入り口で待つ
「何であいつばっかり……」
「全くだ。あいつが居る所為で俺らに一人もまわってこねーよ」
「このままじゃ合宿終わっちまうよなー」
例の男子学生三人組だ。
話題にしているのはロビーに現れ、女子達の黄色い歓声に包まれているイケメン。
既に何人か喰ってしまっているという噂である。
行かないとか……
女子たちの視線が突き刺さるのは目に見えている。だが、ここで待っていても自分を見つけてはくれないだろう。そう思った
僕だって好きで彼に担当してもらったわけじゃない
代われるもんなら変わってやりたいさ
そういう仕組みを作るべきなんじゃないかな、ここは……
「
「はい」
「この後君を担当する
「宜しくお願いします」
「そう緊張するなって。リラックスして……、おいおい、会話する気はないのかい?」
「酷いじゃないか、折角の品定めの時間が台無しだよ」
「待ってますから、どうぞ」
噂は本当だったんだ……
呆れ顔の
「で、どうだった?
「
「他に誰がいる?」
「心当たりはありませんが……」
実際、
「隠す必要はないよ。抱いたんだろ?
「そんなわけないじゃないですかっ! 寧ろ……、無視されてるぐらいですから……」
いきなり抱いたとか、どうなってるんだよ、この人の頭……
見た感じもそんな感じの人だけど……
「俺の勘違いだったのか……、まあいい、教習をはじめようか」
何の勘違いなんだよ……
路上へと繰り出す
「
ホテル街……
ネオンの色……
……僕が言われたやつじゃん!
やっぱ誘われてたってこと?
厳密に言えば、『じゃあ、こっちのネオンは?』だったけど、
状況的にはホテルのネオンにって事だよね……
「その表情……、君、
「断って無いですよ……。返事しなかっただけで」
「断ったのと同じだよね、それ」
「……」
そういう事になるのか……
じゃあ、僕と目を合わせてくれないのって……
「勿体無い事したな。俺なんて何回頼んでもOKして貰えないってのにさ」
「お願いしてるんですか……」
「当たり前だよ。あんないい女、ほっとける奴はEDか男色だけだろうね。……もしかして、君……、俺はそっちの趣味は無いから。変な気は起こさないようにね」
「僕も無いですから」
「ならEDなのか……、若いのに」
「そっちも否定しておきます」
「だったら何故なんだ? “据え膳食わぬは男の恥” って言葉、知らないのかい? 仮にだ、仮に、他に好きな女が居るとしてもいい女に誘われたら応じるのが礼儀だと思うんだよね」
「言ってる事がよくわかりません」
「そうか……、君は童貞なんだね」
「……」
「図星みたいだね。どうしたらいい? こんな品祖なので軽蔑されないかな……いや、立派そうだね。兎に角だ、そんな下らない事をうだうだ考えてる暇があったら経験豊富な
この日の路上はそんな感じの会話をしただけだった。コースの指示以外は何のアドバイスも指導もなく、何となく運転して教習所へと戻ってくる。
いいのかこれで……
大丈夫なんだろうか……
免許が取れるのか不安になってくるのだった。
アドバイスは貰った……のかな
少なくとも、悶々と無視されていることを気にしているのが無駄だと思えるような情報は貰えたのだろう。
問題の原因はわかった。後は行動するかどうかだ。勇気を出して男になるか、それとも、このまま何事もなく卒業し全てを忘れるか。全ては
でも、もう気が変わってるかもしれないし、
他の誰かを見つけてるかもしれない……
だったら頑張ったって……
どうするべきかと思考を巡らせながらロビーへと向かう。
「
「あ、うん」
「どうした?
別に何かをされたわけではない。ただ
「嫌だなあ、
“
名前で呼び合ってるんだ……
などと、二人の顔を交互に見ていたのだが……
「……なるほどね。そんな目で見なくても
と、勝手に何かに納得する
別に何かあっても僕には関係ないけど
「
そんな
何……
「おいおい、
「
「そうですよ、あるわけないじゃないですか」
あの頃の
今目の前にいる
それに……
「
余計なことされたらややこしくなりそう
「今日はありがとうございました」
「あっ、待てよ
その場を立ち去ろうとする
「何もない」
「けちけちしないで教えろよ」
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