01.03.初恋の記憶
いつものように担当教官が現れるのを一人ロビーの入り口で待つ
あの日から数日が経つが、
慣れてるからいいんだけど……
そんな事を思いながら、一人ぽつんと観葉植物の葉を眺めていると、ニヤケ面の男が近づいてきて
「よう、カミツキじゃねえか、久しぶり。相変わらず暗い顔してるな」
誰、こいつ
そもそも、カミツキじゃないし
……そう読めなくもないけど
いきなりパーソナルスペースに踏み込み、あろうことか接触までしてきた男に不快感を隠そうとしない
「俺だよ、俺、
ありがちな名前だな
実際、
だから、気のない返事をする。
「あぁ」
と。
これで興味を失って去ってくれれば幸いと言わんばかりに。ただ、
「あぁ、じゃねえよ。そうだ、
新井って……
その名前には心当たりがあった。
「おーい、
知らない人だ……
それもそのはず。
「へー、
嘘だ……
全然ドキドキしない
頼むから別人だって言って
「こいつ、さっきから、 “あぁ” とか “はぁ” とかばっかなんだぜ?」
「変わったなー、
何処見てるの……
こんなの
ないよね……
「あの……
違うよね……
「そうだけど?」
苗字が同じだけかも……
「
「面影ないかぁ?」
ない……
これっぽっちもない……
だが、
「わりい、この後路上なんで時間ないんだー。そだ、連絡先でも交換するか」
「はぁ」
この人と交換してもな……
性格も別人みたいだし、綺麗な思い出が壊れてくんだけど……
そんな気分で連絡先を交換していると、三人の元へと
笑顔だ……
ここ数日、僕には見せてくれなかった笑顔……
期待と不安でドキドキしながら
「
「はーい」
まるで
「
「こちらこそ、よろしく。じゃあまたな、
三人で居たにも係わらず、
クローキング……
僕は誰にも見えないんだ……
透明人間にでもなってしまったかのように全く意識されないまま
「いいなぁ、
当然ながら、ボッチを極めたからといって透明化の能力を獲得できるはずもなく、
初恋の人があんな風に変わってしまったという現実を突きつけた男は、認識できるはずなのに無視しているというもう一つの現実までもを突きつけ、傍らでニヤけているのだった。
「そうだな……」
あの時、お願いしますって言ってたらどうなってたんだろう……
「いいよな、
「あぁ」
あの時、惹かれちゃいますって答えてたら……
「そうだ、俺、
どうでもいいよ、そんな事。
「あと、
「いや、いいよ」
これ以上僕に係わらないでくれ
「何でだよ。お前ら噂になってただろう。あっ、紹介するまでもないってか?」
「もしかして、まだ付き合ってんのか?」
「話したことも無いんだけど」
「じゃあ、何で噂になってんだよ」
「さあ」
こっちが訊きたいぐらいだよ
こいつが僕に掛けた最初の言葉も『
どうでもいいけど。
「じゃあ、教官来たみたいだから」
「おう、今度飯でも行こうぜ」
やだ
そう思う
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