第7話
侍たちが上陸したのを見て急いで近づいていきました。
「おおぃ!お侍さーん!今ここに鬼はいねぇぞぉ!」
そう叫びながら侍に向かって言いました。
侍たちは一直線に向かってくる若者を見据えていました。
そして、侍の眼前にまで近づいた若者は一太刀で切り捨てられました。
「あ?な……ぜ?」
自分が何故切られたかも分からず若者は死んでしまいました。
「ふん!鬼め、人に化けよって」
桃の家紋の侍は若者を鬼が
「よし、奴が隠してるはずの財宝を捜せ!」
家来たちに命ずると一人は犬のように素早く辺りを嗅ぎまわりながら探し始め、一人は
もう一人は猿の様に素早く木から木へと飛び移りながら辺りを見回していました。
「
「でかした!」
そう言って侍はその小屋に入ると中には沢山の宝石が置かれていました。
「よーし見つけた。これをまとめろ」
家来たちに命じた侍は、小屋の外に横たわる丸太に腰掛け煙草を取り出し美味そうに吸い始めました。
「頭、積み終えました」
「よーし、戦利品も得られたし鬼も退治できたし、万々歳だな。あはははは!」
高笑いした侍は意気揚々と街に
人々は桃の家紋の侍を称え、家来たちを
そして、最後に
「このように何十匹もの鬼を
そう言うと侍は深々と頭を下げました。
「桃の
その言葉に呼応するように群衆から同様の声かけと拍手が沸き起こりました。
「頭、うまく行きましたね」
猿のような家来が耳打ちすると
「しっ!誰が聴いてるかわかんねぇ、黙ってな」
群衆は熱狂し、侍を称え宴を繰り広げました。
鬼ヶ島の海岸で打ち捨てられた若者の周りには鬼たちが集まっていました。
その中には娘の姿もありました。
「ごめんなさいね。貴方様を犠牲にしてしまって。この一年本当に貴方様は私たちを仲間と思い受け入れてくださましたね。でも、これも私たち一族が生き延びるため、仕方ないことなのです」
鬼たちはすでに一年前から桃の家紋の侍たちの動向を察知していました。
そして、どう防ぐかを日々考えていたところ、偶然若者が島に盗みに来たことで、それを利用することを思いつき、一年をかけて信用させ、このタイミングで桃の家紋の侍たちが来ることがわかったため、その状況をわざと見せるように街に帰ることを認め、その間、鬼たちは全ての財宝と家財を持ち出し、島の反対側にある洞窟に身を潜め、災難をさけたのでした。
幸い桃の家紋の侍は卑怯者と聞いていたので思惑通り若者を鬼と間違え切り捨てると満足してさらに若者が貯めていた宝石だけで喜んで帰ったため、鬼たちには被害がなくやり過ごせました。
一人の若者の犠牲によって"鬼ヶ島"の
めでたし、めでたし。
了。
桃太郎外伝-新説 鬼ヶ島ー 美月 純 @arumaziro0808
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