第4話 VS窃盗団
「おい撃て!撃ち殺せ!」
リーダーが仲間に指示すると、それに応えるように銃を撃ちまくった。
俺は間一髪駐車場に放置された車に隠れ込んだ。
車のドアは弾が貫通して穴だらけ。俺はホイールの裏に隠れているから大丈夫だ。
さて、俺の装備は奪ったAK47と持ってきたM19。
AKは装填されている分しかないから30発、拳銃は予備マガジンを含めても34発と少ない。
対して相手の数は多く、弾も奴らの方が多い。
しばらくすると、相手の銃撃が止んだ。再装填している音が聞こえた。
「よし。お前とお前、回り込んで殺せ」
リーダーが二人の男を使って、俺を銃で殺そうとする。
仕方ない。殺さないまでも痛い目に遭って貰うか。
幸い一人は先に車の横に来そうだ。
俺は腰だめでライフルを二発撃ち、男の両膝を撃ち抜いた。
「ギャアアアア!足が!足がぁ!」
撃たれて倒れた男は膝を抱えてのたうち回っている。
「この!」
回り込んでいたもう一人の男がAK47を乱射する。
その間に車の反対側に移動する。
怒りに任せて撃ちまくるのはよくないぞ。
俺が言った通りになり、男のAKの弾は二秒で撃ち尽くした。
「なっ……!」
「残弾は感覚で覚えないと」
男の肩と太ももを撃ち抜き、男を戦えなくした。
周りの窃盗団が俺を恐れるような目で見てくる。
「何やってんだ!さっさと殺せよ!」
バールを持っていた男が突撃してバールを振り落としてきた。
俺は軽く横に避け、AKのストックで男の後頭部を強くぶつけ、気絶させた。
今度は一気に窃盗団が襲ってきた。
前に来たAK持ちの男に膝蹴りして、その男を盾にしながら三人の肩に弾をぶち込む。
三人は肩の痛みで、銃を落として痛みで戦えない。
木刀を持った男が、その木刀で俺のライフルをはたき落とした。
もう一撃振ってきた所を素手で掴んで、持ち主に思いっきりヘッドバン。
窃盗団は同士討ちを恐れてあまり銃で攻撃してこない。
初めて銃を撃つから、仲間を撃つのに抵抗してあまり撃たないのが俺を有利にしている。
銃持ちの相手には近づいて銃のマガジンを抜いて、コッキングレバーを引いて弾を排出して無力化し、背負い投げやかかと落としで地面に倒す。
俺は銃の扱いに秀でていて、戦闘時に銃を無力化する事ができる。
拳銃の方がライフルより早く分解し、相手も無力化する。
近接武器持ちはそんなに強く打ってこないから、素手で掴んでから肘打ち、又はヘットバンで倒せた。
そうしてリーダー以外の窃盗団を死なせず倒す事ができた。
リーダーは仲間が戦っている間何もしてこなかった。
「やれやれ、俺だけかよ。めんどくせーな」
「お前のお得意のバットでかかって来いよ」
両手を構え、右手の指で相手を挑発する。
「いいぜ。やってやるよ!」
リーダーがジャンプしてバットを振り落とす。
俺が避けるとバットが当たったコンクリートが砕けた。
おいおい。そんな馬鹿力アリ?
「まだまだぁ!」
続けてリーダーがバットを振り回して攻撃する。
振るスピードが速い。威力が高い上に速度が速いってマジかよ。
避け続ける俺だが、拳銃を出す暇がなくて困っていた。
最初から持っておけば良かった。後悔しても遅いが。
ブンブン振り回すリーダーの攻撃を避け続けていると、足にバールが当たった。
リーダーがバットを振って、それを避けてからバールを持ってリーダーの背中にぶつけた。
「……ぐっ!やるじゃねえか」
後ろにバットを振って、俺との距離を取った。
「お前の能力、だいたい分かったよ。手に持つ物に攻撃用の能力を与える、かな?」
「能力を与えるって所は正解だ。俺はバットを軽くしたり、硬くしたり、衝撃を和らげるとかを自分の能力でできる。勘が鋭いんだな」
「能力を物に与えるのは何度か見た事がある。それでピンときただけだよ」
能力者の特徴はあらかた分かっている。
自身を強化する能力、自然の力を使う能力、そして物に対して能力を発揮する能力など。
コイツは後者のだろう。
「なら、早めに始末させて貰うぜ」
リーダーがバットを握り締め、ポケットに入れていた鉄球を投げた。
バールである程度弾き、鉄球が当たって変形して使えなくなったバールを捨てて突撃する。
待っていたかのようにリーダーがバットを俺に振る。
伏せて回避し、リーダーに掴みかかる。
「甘えぜ」
すぐに俺の背後に回り込み、バットで俺の首を絞める。
「ぐっ……!」
「このまま絞め殺してやる……!」
首が絞められ、息苦しくなり、抵抗するが中々リーダーがタフで微動だにしない。
このままだと……絞め殺されてしまう……。
命を天秤に取った俺は脇のホルスターからM19自動拳銃を出してリーダーの左脇腹を撃った。
撃たれて拘束した俺を解放したリーダーは反射でバットを強く振る。
後ろにステップして避けた俺はリーダーの両膝を撃ち抜いて地面に倒した。
「クソが!」
バットを握った右腕を踏み、足でバットを遠くに飛ばした。
そして右腕を踏んだまま拳銃を向けて制止させる。
「動くな。聞きたい事があるんだ」
「……んだよ」
「ボーリングセンターにあった米軍の物資の事だ」
後ろから建物の屋上で監視していた響子がやって来た。
俺と同じように顔を目出し帽で隠している。
近くの窃盗団の男から奪ったのか、《G19》自動拳銃を両手で握っていた。
「何一人で銃撃戦やってんの?警察がもうすぐ来るわ」
「コイツに一つ聞いてからすぐに逃げる。おい、質問に答えろ」
リーダーの右腕を踏んでいる力を強める。
「いてえよ!分かった。話すから足を退けてくれ」
もう抵抗しないと判断した俺は言う通りに足を退けた。
「……あれは黒装束の奴から売られた物だ。500万積まれて、それであれらを貰った。ただ奴らから最近集金を命じられてよ……。それで仲間集めて窃盗団なんかやってたんだ」
これで窃盗団の結成と盗んでいた理由が分かった。
リーダーはその謎の奴から米軍の物を買って、それを大学の仲間に知らせて銃を楽しんでいた。
だけど黒装束の奴から金を集めるように言われて、窃盗団を結成して都内で盗みを働いていた。
「何で奴の命令に従ったんだ?」
「奴はガタイから外人だと分かった。それで自分はCIAの人間だと名乗った」
CIA……アメリカの諜報機関がここで絡むのか。
「後には引けねえ。それに仲間の命を人質されたら反抗できねえよ」
「意外に義理人情あるのね。だったら、今から自首したら?罪が軽くなるかもよ?」
「へっ……そしたら、一人殺した罪は軽くなるんか?どっちにしろ俺は牢屋行きだ」
それにコイツも窃盗を働いている。殺人と窃盗、その他諸々の罪で逮捕だろう。
「CIAの事で何か教えて欲しい」
「それは俺にも分からねえが、情報屋なら知ってるかも知れねえ……。『キングマン』という伝説の情報屋だ」
キングマン?そうかそうか。確かアイツの偽名の一つがそれだったな。今度聞いてみよう。
リーダーの男は諦めた表情を浮かべて、その場で足を組んだ。
「まったく、こんな事になるなら、あんなの頼まなきゃ良かっ」
リーダーが後悔は言葉を言っている途中で、銃声と共に額を撃ち抜かれた。
俺と響子は即時に後ろを振り向いて拳銃を構える。
そこにはサングラスをかけ、スーツを着た白人の男が拳銃を構えて俺達に威嚇していた。
「お前……」
「…………」
「銃を置け。でなければ、」
話してかけている間に男が響子の肩に弾を撃ち込む。
俺は容赦なく引き金を引き、拳銃弾の雨を浴びせた。
「~~あぁ!やっぱり痛い!」
響子のブレザーに撃ち込まれた弾がポロリと落ちた。
響子のブレザーは防弾繊維と布で対弾性に優れている。
スパイの姉からのプレゼントされた物で、響子は気に入っている。
俺はリーダーを見たが、額から血を流してくたばっていた。
「大丈夫か?」
「ええ!痛いけど!」
そりゃ生きている証拠だ。我慢しろ。
白人の男の体を漁っていると、男のスマホを発見して回収する。
すると、響子が遠くに男がいると言った。
駐車場の外で、柱から監視するように見ていた。
響子のその声で男はすぐさま逃げる。
「逃がすか!」
俺と響子は逃げる男に射撃する。
しかし、一発しか当たらず逃がしてしまった。
「クソ!」
響子がバイブしているスマホで優子と連絡を取る。
「ねえ。優子から連絡。警察が来てるって。逃げましょ」
「了解。ここから撤退する」
武器をしまった俺と響子は近くの裏路地を使って現場から立ち去った。
途中で警察に見つかる事はなかった。
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