第15話 岩寺 望美と◯ part2

「図書室、よくくるの?」


♣︎


静かな図書室前の廊下。夕方になり、黄金色の光が窓から差し込んでいる。図書室の、綺麗に磨かれた机。大気にちらほらと光る埃はまるで妖精のようにひらひらと来る者を魅了する。


「本の匂いって、私好きです」


長い本棚の列を少しずつ、少しずつ歩きながら岩寺望美が一冊の本を手に取る。


「知ってますか?場所によって本の匂いって違うんですよ?」


「そうなの?」


彼女が手に取ったのは意外にも三島由紀夫。

『サド侯爵夫人』だなんて、なかなかに渋いセンスだ。


「家の本棚にある本は、冷たくて、すこし、雨の匂いがするんです。本屋さんには印刷物と女物の香水と、あとはおじさんくさいの匂い。図書室は、お日様と、汗と、砂のにおいがします」


「…文学的だね。でも、言い得て妙だ。そう言われるとわかる気がする」


「ほんとですか!?」


「うん、俺はあんまり書店には行かないけど。でも、家と図書室のはわかるよ。図書室のが俺は好きだな。誰でも彼でも受け入れてくれる感じがさ」


「…!!そう、です。私もおんなじ事言おうと思ってました…///」


「マジか…。なんか良いな。こういうの、誰にも共感されそうになくて」


「今時読書なんて肩身が狭いですよね…」


持っていた本を戻すと、また、歩き出す岩寺。一定の間隔を空けて、ついていく。心拍がいつもより早いことがフィーリングで分かった。


「家でもよく読む?」


「そう、ですね。うち、母子家庭なんですけど、母はほとんど帰ってこなくて…裕福じゃないから本しかやることがなくて…。ううん、多分他のものがあっても本しか読んでないと思います」


「そっか…。そう、なんだな」


一緒だ、とは流石にいえなかった。


「新島くんは?」


「俺も家ではずっと一人でさ。何回もおんなじ本読んでる。最近なんて小学校の頃読んでたワトソン教授読んだよ」


「わぁ!あの謎解きのやつ…!」


岩寺の頬が僅かに紅潮した。


「ガキのきったない字でめちゃくちゃ書いてたよ。本がもったいねぇ」


「…でも、それも愛おしいんですよね」


分かってる。なんていうレベルじゃない。俺自身なんじゃないかってくらい、彼女との会話にストレスはなかった。


「私、こんなに盛り上がったの初めてです」


「俺も…。本の趣味もめっちゃ合うし」


かれこれ2時間図書室にいる気がする。

いつもの、どうでも良い奴らと話してる時とは大違いだ。時間はあっという間に過ぎていく。


『キーンコーンカーンコーン』


「あ、チャイムなっちゃいましたね…」


「あぁ…」


「そろそろ、出ましょうか」


図書室の司書さんに一礼して共に部屋を出た。クラスが一緒だから下駄箱までは隣同士。


「…」


「…」


沈黙が続く。俺の手はとても震えていた。

お互いのことをとても意識しているのが肌でピリピリ感じる。


手のひらの汗がすごい。胸が苦しい。彼女との思い出はたった2時間。なのにこんなにも切ない。

「終わってほしくない」なんてとてもじゃないけど言えない。『初めて』の洪水で、少しパニック気味まである。

なのに、なのに何故、


何故俺の陰茎はこれまで以上ない程勃起しているのだろうか。


初めての経験だ。血液がたくさん集中しているのがわかる。彼女を触ったわけでもないし、欲情しているつもりもなかった。なのに何故、こんなにも…。


「フーッ…フーッ…フーッ…」


隣で息を荒げている岩寺さんに気がついた。汗もかいていてとても性的、…っていや、何考えてるんだ俺は。


「い、岩寺さん。息荒いけどだいじょ、う………あ」


俺は岩寺さんを見て言葉を失った。なぜなら





岩寺さんの目線は迷うことなく俺の股間を釘さしていたからだ。


「え、あっ…新島くんっ///。…その…///」


もう、引き返せないんだなと思った。

今までに感じたことのない、雄の部分が刺激された。血管が浮き出る。彼女の甘い汗の香りは最高のスパイスだ、フェロモンでも出ているのではないか。


「もう、もうしょうがない。俺は悪くない。誘っているのはこいつだ」と、悪魔が囁いた。


「あのさ、俺の母さんが本めっちゃ好きでさ、古い本とかめっちゃあるのよ」


はやく、はやく。


「よかったら今からさ、家来ない?」


はヤク、クワせロ。



「はい。お邪魔でなければ是非、お願いします…//」


俺は家に帰る最中、何度も一人で果てるのを我慢した。

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いや齋キモすぎる。書いた自分もキモすぎる。次回はエッッッッッッッッ回です。


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いつか刺される俺とヤンデレ彼女どもとの日々。 一般大学生 @roriking

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