2話 明透
明透
僕たちは、ドローンやサーチライトから隠れつつ、牢獄塔から離れた塔を目指していた。
「あの塔に、何が有るのかな? 中央の牢獄塔から、少し離れているんだけど」
「あそこには、拙者の刀があるでござる。名を明透というのでござる」
「名刀? いや名刀なんだろうけど、そのままだね」
僕がそう受けごたえすると、ヴィーナスさんが、
「あ、それ想像している漢字が違いそうね。明るい透けるで、明透よ」
と訂正してくれた。成程、透明の逆読みなんだ。
「へ~。で、どんな刀なの~?」
「簡単に言うと、視界、鏡には映らない、見つけられなくなる。という代物ね。まあそれには、鞘から刀を抜いていないといけないんだけど」
「夢のような武器だね~」
「僕の索敵からも逃れられるのかな?」
「そういえば~、あの時、海の噴水を降りて行ったとき、どうやって索敵したか教えてくれてないよね~。それにここに来るのも、先頭を歩いていたし~」
「あ、それはね、僕の先天的能力が、人の場所が分かる、ついでに視線も解るってものなんだ。それで分かったんだよ」
「あ、だから~居場所探知って能力なんだね~」
「うん、前に確かに言ったよね」
「けど~、どれくらいの範囲かは聞いてないよ~」
「そうだね……。おっと、視線を感じるよ。北方向から見られているね。150メートル先にある。けど、こちらを確認はできていないみたいだね。少し止まってやり過ごそう」
皆が物陰に隠れ動きを止める。すると、今から進もうとしていた道路を監視用車両が通る。
「と、まあこの町ぐらいなら何処に人や機械がいるかは分かるよ」
「すご~い! でも、人の位置情報多すぎて、頭パンクしない~?」
「そうだね。だから、普段は、150メートルぐらいに抑えているんだよ」
「成程ね~」
そんな話をしている間に、目的地に着いたようだ。というか幽霊だからって勝手にトコトコ行って、僕たちは置き去りにされかけたよ。
「ここでござる」
そこにだけ土と木があった。頑張って育ったであろう木と、それを育て上げた土だ。日は少し差しているけど、こんなところに木が生えるなんて、少し不思議な感じでもある。
「この中に埋まっているのかな?」
「そうかもしれないわね」
「じゃあ、必要無いかもしれないけど、僕は見張りをするよ」
「じゃあ、あたしは~この木を引っこ抜くよ~」
「え! 引っこ抜く?」
僕は、楽をするために見張りを買って出たら、光は、一番難しそうな仕事を引き受けていた。
「いっくよ~!」
光が、手を鋼鉄化そして、巨大化。その手で、木を握りメキメキと音が出るレベルでつぶしながら、引っこ抜いた。驚きすぎて声が出ない。
「あれ~? 何か、固い物が木の中にあるよ~」
光が手を開くと、そこには刀があった。鞘に収まっており、その鞘も壊れず、綺麗なままだった。
「ありがたき幸せ、これで、拙者も、成仏できるでござる」
「え、あの牢獄塔に行きたいんじゃないの?」
「そうでござるが、拙者はその刀の力を信じているのだ。なので、お頼み申す」
どんどん、明智の透明度が上がっていく。と言うか消えていっている。
「どうか、どうか! ヴィーナス様の救出お頼み申す! では」
「へ?」
「やっぱりね」
ヴィーナスさんがそう呟くと手を合わせた。そして、此方に向き直ると、
「彼女の機能はかなり失われていたみたいね。本当はもう少し会話ができる。人の認識ぐらいはできるはずなの」
「え、でも、さっき、そういうのは不可能だって」
「騒がれたくなかったからね。嘘ついたわ。彼女はこの刀を誰かに託したくて待っていた。そうだったのだと思うわ。で、この刀、だれが持つのかしら? ちなみにエルピスは持つ気ないからね」
「そうですね。ヴィーナス様、我らエルピスだと、宝の持ち腐れですからね。まだ力の無い3人の中の誰かが持っていたほうがいいでしょう」
「俺もパスだ。うまく扱える自信がない!」
「じゃあ、奈波が持っていてよ~。そのほうがいい気がするんだ~」
「え、じゃあ僕が持つけどいいのかい?」
「うん~」
私は腰のベルト部分に刀を差し、持っていくことにした。
「じゃあ僕が、通行の邪魔になりそうな見張りを壊していくから、皆隠れながら来てね。安全地帯は、通信端末で知らせるから」
「おっけ~」
木のあった場所を離れ、視線を気にしながら、こそこそと建物の上に上り、まずはすぐ近くの牢獄塔に近づくのに、邪魔な監視用ドローンを風のサモンエッグに自分の魔力で作った風を送り込み、召喚したペガサスをぶつける。その風の勢いで、壁にぶつけ、落とした。そして固定型の監視カメラも雷のサモンエッグで召喚した、雷犬が体当たりして破壊。そして、皆に安全ルートを通信端末で知らせた。その後、僕は辺りにあるすべての監視カメラを破壊を開始しだした。
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