2章 牢獄塔
1話 水中牢獄
水中牢獄
「うぎゃー頭がくらくらするよ」
異世界渡航魔術をサターンさんがおこなって、着いたのは最良世界。そこで僕は転移酔いになっていた。
「吐きそうねえ吐いていいいいよね?」
「少し我慢して~。あった。はい、エチケット袋~」
それを手渡され、僕はひったくる様に取り、
しばらくお待ちください。
「ふぅ、落ち着いた。で、ここ何処なんだい? まるで水中の都市のような」
「ここは水中の牢獄、YOKOSUKAだ。っと、そうだ。俺の名は長宗我部だ宜しく」
まだ名前の聞いてなかった、ヘルメットを被っている人が声を発した。声の感じから、女性だと思う。
「横須賀ってことは、私の住んでいた所と同じ場所だよね? つまりこの世界だと、海に沈んでいるってこと?」
「そうだな。俺はお前の世界以外で、横須賀が沈んでいない世界を知らない。たしかすべての世界を巡った筈なんだがな」
「じゃあ、横須賀が沈んでないほうがレアケースなのか……なんで?」
「簡単に説明すると、あなたの世界では、数千年前にサターンが地殻変動を抑えたからね。後、サンも温暖化を止めたりしたのだけれども、けど大体の世界で温暖化は止まった筈だから、そこまでの影響は与えてないわ」
「そんなことができるの! 凄いや。で、此処には何エルピスがいるのかな?」
少し照れた顔をした、サターンさんがすぐ顔を戻して、
「ここの中央にある、あの塔あそこの中に、マーキュリー・エルピスが捕らえられている」
「なんで?」
「儂が知っている限りだと、マーキュリーは、魔法世界の守りを任されていたのだけれども、絡繰り世界に負けて捕らえられ、その後に暗殺事件の賠償としてこの世界に引き渡されたそうよ」
「なんで、この世界はマーキュリーを求めたの?」
「簡単な話よ。儂たちエルピスが、資源になるのを知っているのよ。儂は金を生み出せる。とかね。マーキュリーなら、軍艦を再生できる。だから、あの牢獄で、軍艦再生されているはずね」
「人を何だと思っているんだよ。この世界の偉いさん方は」
怒りを覚えた。人をただ単に道具としか見ていないという事に怒りを覚えた。
「まあ、我たちは、もうこの世の者ではないからな。道具扱いは慣れているんだが、今回のこの世界にはイラっとくるな」
「この世の人間ではないってどういう事なんだい? それじゃあ、まるで死んでいる様……」
「その通りだ。私たちは再現の中で死んだ者の亡霊」
「再現? どういう事さ。前に、幽霊ではないって話は聞いたんだけど、たしか、調律者って聞いたんだけど、一回死んでいるの?」
「何千年も生きている人間いないよ~。けどそっか~奈波の世界の教育だと、この世界が、作られているものだって習わないんだっけ?」
「そうだな。習わない。知っているものは基本居なかったんだがな、異世界と交流が盛んになった今、徐々に上の人間は知ってきている様だがな」
「そうなんだ。この世界って作られた物なのか……ん? どういう事? 作られたって神様にとかだよね」
「ううん、ちがうよ~。作ったのは人、上の世界で生き残った~、こんな結末を変えたいって人がコンピューターの中に作ったんだよ~」
「え、じゃあ」
寒気がする。作られた世界? てことは、
「僕たちって何?」
「データ……」
「ああ、やっぱり聞きたくないよ! ってほぼ言ったよね! 今データって言ったよね!」
「悪い、最後まで言わせてくれ。我たちはデータではない。脳だけになった生体ユニットのはずだ」
「……ごめん、そっちのほうが怖い!」
え、何、現実の僕たちは、脳だけになっているって、めがっさ怖いんだけど!
「怖いよね~。けどさ~、あっちの世界の事なんて知らないんだし、戻ろうとも思わないよね~」
「う、うんまあそうだけどさ」
「だから、此処がリアルでいいんじゃないかな~」
「それはそうだけどね、怖いものは怖いんだよぅ」
「そろそろいいだろうか?」
ん? 聞き覚えのない声だ。
「誰だい?」
「拙者は明智というものでござる」
「ん?」
僕が振り返るとそこには、足のない半透明の刀を持った和服の女の人がいた。
「幽霊?」
「驚かないでござるか。良きかな良きかな。それはそうと、お主ら、あの牢獄に用があるでござるか?」
「うん、そうだよ」
「拙者も、あそこに向かいたいが、警戒が強くて、なかなかたどり着けないでござる」
「そうなの? じゃあ一緒に行く?」
「有難い」
「という事でいいかな?」
そう皆のほうに向くと、長宗我部さんと光が、何か震えている。
「もしかして、そこに何かいるの~? もしかして幽霊?」
かなり、バイブレーションしてる。もしかして、
「幽霊怖いのかい?」
「うん~。そこに靄が見えるからもしかしてって思ったけど~」
「ああ、これはゾンビプロセスね。証拠に儂のことを認識していないわね」
「ゾンビプロセスって何?」
「簡単に言うと、この世界では自身が死んでもなお、使命のために動こうとしている精神の事を指すわ。つまり、幽霊と言われる者たちは、死ぬ間際に思ったことを実行し続けている者たちの事なのよ」
「え、じゃあ、この靄もそうなの~?」
「ああ、12年前にはいたな。その時もあの牢獄に向かいたいと言っていたな」
「じゃあ、ゾンビプロセスが、ヴィーナスさんの事を見えていないというのは?」
「見えていたら、あそこに行きたいと言わないはずなのよ。そして、ゾンビプロセスはさっきも言ったように思っていたことを実行し続けるだけ。このパターンのは、自身が見える人間に話しかけて、目的が一緒なら付いて行くというものね」
「へ~。じゃあ行ってみよっか~。あの忌まわしき牢獄に」
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