第14話 心に誓って

 心に誓って

 

 


家にベランダから戻り、目覚ましを7時にセット。一度寝てから、目覚まし通りに起きて、着替え、リビングに意を決して向かう。


「お母さん、相談なんだけど」


「何?」


僕はおどおどと今から話すことを考えると、大きな態度を取れないでいた。その反面、お母さんは、真面目な話だという事は通じているのか、テレビを消して、僕の方に向き直した。


「僕、旅に出ようと思うんだ」


「どこ行くのかしら? 国内、国外?」


「目的はあるけど、どこに行くかは解らないんだ、けどどうしても行きたいんだ」


「期間は?」


「……分からない」


お母さんは目をキュッと吊り上げる。怒られるのは分かっているんだ。怯える必要はない。


「何、阿呆みたいなことを言っているの!」


この反応は分かっていた。だって僕も他の人から聞いたらそう思うもん。でも!


「お願い! 行かせてよ。もしかすると、飯野さんたちを助ける手伝いを、出来るかもしれないんだ」


「駄目よ! そんな長い旅だなんて! それに奈美ちゃん、あの時はあなた一人で助かったのよ。だから、そんなどこの人か解らない人を追いかけるのは止めなさい!」


涙がぽつりと頬を伝う。何でお母さんはそんなこと言うのだろう。僕は確かに、飯野さんに助けてもらった。飯野さんはあの後聞いたけど、あの時町のみんなから追われていたらしい。そんな状況なのに、助けてくれた。だから、僕もそんな優しい人になりたい。そう思っていたのに、お母さんは何で反対するんだろう。僕の気持ちを知っているくせに!


「わかったよ! 今日は僕学校休むから!」


「あ、奈波!」


部屋に戻り、鍵をかけて、こっそりと身支度を整える。しばらくは、お母さんがドアを叩いて、


「奈波、開けなさい! 奈波ったら!」


と怒っていたけど、気にしないで、お気に入りの本や、服を押し込んで、端末を持つ。途中で、お母さんの声が聞こえなくなったけど気にしない。そして、僕はベランダから飛び出した。

8時前、皆がいるはずの公園に戻ると、そこには、飯野さん以外の3人と名前の知らないフルフェイスのヘルメットを被った人とお母さんがいる。何で?


「お母さんどうしてここが? というか何しに来たんだい?」


お母さんが少し涙を浮かべつつも、僕に物を手渡してきた。


「奈波ちゃん、これを持っていきなさい。後、これは友達と食べるのよ。もう、友達が一緒ならそう言っておいて頂戴。もっとおにぎり作ったのに」


「なんで?」


「奈波ちゃんが止まりそうになかったからよ。しょうがないわね。真美ちゃんには私が伝えておくわ。けど、貴女が帰ってくる場所はここなんだから必ずちゃんと帰ってくるのよ」


「あたしが守るから、安心してください」


「お母さん……」


どうしてだろう、涙が頬からこぼれる。僕は、奇異な目で見られていたせいで、お母さんには迷惑をかけっぱなしだった。だから、ここまでしてくれて、とても嬉しかった。なら、僕は、涙を拭いて、笑顔で!


「大丈夫だよ! お母さん! 行ってきます」


僕は、お母さんの気持ちに答えるために、笑顔になって、手を振って、旅に出る。たとえどんなに厳しい旅でも。無事に帰ってくることを心に誓って。

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