第6話

 暫く、そんな事を考えていると、又後ろから声が掛かった。

 「すいません。もしかして、自売りさんですか!?」

 振り返ると、大夢と同じ位の歳の20代前半の綺麗な女の人が立っていた。

 「そうですけど!もしかして、貴女も自売り利用されたいんですか!?」

 普段、客に対してこの様な逆質問はしない大夢だが、余りにも綺麗な人だったのでつい言葉に出てしまった。

 「そうです。ネットで調べてつい気になってしまって。女性でも、大丈夫なんですか?2時間だけ、利用したいんですけど幾らになります?」

 女性の質問に大夢は「女性でも、大丈夫です。2時間ですと、1万5千円ですね。因みに、長時間の方がお得になるプランが付いていますけど?」

 「有難うございます。2時間だけで大丈夫です」と、即答で答え「直ぐ、利用できますか?」と、この女性は何やら急いでいる様子を見せていた。

 大夢は「因みに、この姿は本来の私では有りません。今、利用されてる方が居るので、直ぐには利用出来ないですね。深夜の0時以降になります。何をするのに、自売りを利用されますか?すいませんが、全てのお客様にこの様な質問をしているので。後、お客様のお名前も頂戴出来ますか?」と、優秀な営業マンみたいなト-ンで女性に聞いてみた。

 女性は「名前は梨沙(リサ)です。0時以降でも大丈夫です。自売りをお願いしたいのは、現在婚約中の彼氏が要るのですが、彼に最近別の女性の影がちらついているを共通の知人から聴きまして、その…別の人になって、彼の行動を把握したいなと思ったからです。女性だと怪しまれるので、男性になった方が良いかな…と」

 この梨沙という女性は、落ち着きつつも感情を露にしたト-ンで大夢に言ってきた。

 大夢は〈…こんな、綺麗な人とは別に他の女性と浮気してるなんて一体どんな良い男なんだ!〉と、思ったが「そうですか。では、梨沙さん、此方が貴女のICカ-ドになります。此方に、梨沙さんのICチップの番号を入力頂けますか?先程も言いましたが、現在私の自売りを利用されてる方がいまして、その方が戻ってきてからの御利用になります。入力は、その方が戻ってきてからでも大丈夫ですが…どうされます?」

 この、自売りという仕事は提供する側の私情を持ってきてはいけない。

 大夢は十二分に、その事を理解していた。

 

 

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