第2話

 借りに、この仕事を自分売り(自売り)と名付ける事にしよう。

 全うな仕事では無かったこの自売りは、この世界でも殆どの人達が知る事が無かった。

 しかし、10年近くこの仕事を続けていた大夢はこの自売りという仕事を誇りに思っていた。

 日が落ちてきた駅前の広場では、制服を着た学生、大学生位の若いグループ、いちゃつくカップル、仕事終わりのサラリーマン、ギターを弾きながら歌っているミュージシャン、飲み屋の客引きやスカウトマン等が所狭しと大夢の目の前を通りすぎて行った。

 

 〈今日も、何も無く終わるか…?〉

 この自売りという仕事は歩合制だった事も有り、大夢の稼ぎは殆ど無い状態で有った。

 〈もう、終わりにして家に帰るか?あぁ、又上司に怒られるかな💨〉

 溜め息をつきながらそんな事を思っていた大夢に、後ろから声が掛かった。

 〈お前、もしかして大夢じゃね!?〉

 後ろを振り返ると、そこには同じ孤児院で一緒だった同級生の淳也(じゅんや)が、顔にうっすら笑みを浮かべながら立っていた。

 「何やってるんだよ、大夢?まさか、お前自売りなんかやってるのか?」

 「そ…そうだけど!?」

  


 

 

 

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