第18話
彼の部屋に近づく一歩一歩が、恐怖を増幅させる。
二人きりで乗ったエレベーターは、地獄へ続いている。
「昨日の夜調べたんですけど、このホテル、防音はバッチリらしいんで、安心してください」
「よかったです」
何もよくない。
エレベーターよ、止まらないでくれ。
と思った瞬間に、密室の箱は上昇を止めた。
靴で踏むカーペットの感触すら、心臓の鼓動を速める。
怖い怖い怖い。空気を吸っても吸っても息苦しい。帰りたい逃げたい。消えてしまいたい。
「ここです」
藤野さんがカードキーで部屋のドアを開けた。
震えながら、ためらいながら、私は中に入ってしまった。
予想より広い部屋。大きめのベッド。カーテンが閉まった窓。
「適当に座っててください」
「はい」
そうは言われたものの、どうすればいいのか分からずおろおろしていると視線を感じた。
振り返ると、藤野さんが邪悪な笑みを浮かべている。
「そんなに緊張します?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます