第18話

彼の部屋に近づく一歩一歩が、恐怖を増幅させる。

二人きりで乗ったエレベーターは、地獄へ続いている。


「昨日の夜調べたんですけど、このホテル、防音はバッチリらしいんで、安心してください」


「よかったです」


何もよくない。


エレベーターよ、止まらないでくれ。

と思った瞬間に、密室の箱は上昇を止めた。


靴で踏むカーペットの感触すら、心臓の鼓動を速める。

怖い怖い怖い。空気を吸っても吸っても息苦しい。帰りたい逃げたい。消えてしまいたい。


「ここです」


藤野さんがカードキーで部屋のドアを開けた。

震えながら、ためらいながら、私は中に入ってしまった。


予想より広い部屋。大きめのベッド。カーテンが閉まった窓。


「適当に座っててください」

「はい」


そうは言われたものの、どうすればいいのか分からずおろおろしていると視線を感じた。

振り返ると、藤野さんが邪悪な笑みを浮かべている。


「そんなに緊張します?」

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