第16話

女子高生に人気の韓国アイドルグループの末っ子キャラみたいだと思った。

そして何より


「背が高いんですね」


東京見物にやってきた田舎者みたいに、藤野さんを見上げながら言った。


「182あります」


新しいスーツに革靴姿の千広さんは、初々しくてまぶしく、およそこれから私と変態行為に及ぶとは思えなかった。


「写真より可愛いですね」


どういうつもりでそんなことを抜かしているのだろう。

油断させて財布をすろうとしているに違いない。


手が冷たい。

のどが乾く。

足が、消えてしまったのではないかと思うほど、感覚がない。


「行きましょうか?」

「・・・・・・は、はい」


背が高くて、顔が小さくて、足が長くて…

ちんちくりんの私が並んで歩くと、どんとん惨めな気持ちになってくる。


「交通費は面接受けた会社が負担してくれるから、ホテルはちょっといいところ取っちゃいました」


ついて行って本当にいいのか。

引き返すなら今なんじゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る