第12話

ラインを交換してからしばらくは、くすぐりとは関係のない話題が続いた。

ヒロさんこと藤野さんの就活の話や、卒論の話、私の仕事の愚痴など、、


藤野さんは理系で私はばりばりの文系なので、研究の話はよく分からなかったが、私の満員電車での通勤の愚痴を聞いて優しく慰めてくれたのは嬉しくて、不覚にもときめいてしまった。

なんとまあ、簡単な女だろう。


藤野さんは卒業後、関東での就職を考えているらしく面接のためにこちらに来るかもしれないと言っていた。

それを聞いても、今一つピンと来ない私はだんだん彼と知り合ったきっかけも忘れて、ただたわいのないやりとりを続けていた。


このまま、こんなやり取りが続くのか、それとも、会話の間隔が広くなっていき、自然消滅するのか。


親しくなった相手でも、急に音信不通になるというのは、マッチングアプリではよくあることだ。


最初の頃は傷付いていたけど、何度もそんなことを経験するうちに何も感じなくなった。

私自身、メッセージを返さなくなることもあったし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る