第11話

翌朝、通勤の電車の中で、昨日のやり取りを見返してみた。


「僕もしてみたいです笑」


短い一文を見つめる。

ヒロさんが宮城の人でよかった。

万一、都内在住だったら、実現していたかもしれない。

いや、そんな訳ないか。

向こうは20代前半の若者で、私はアラサー処女。

こんなことで舞い上がるなんてみっともない。


また、ヒロさんからメッセージが届く。


「ライン交換しませんか?」


アプリでのやり取りに満足していた私は、このような申し出を受けるとは思っておらず、またしてもドキッとさせられる。

でも、嫌な気分ではなかった。


いったん冷静になろうと、画面を暗くして、窓の外の景色を見る。

電車の窓から見える朝の景色が、すごい速さで流れていく。


「交換しましょう!」


夜になって、ラインの友達登録の通知が届いた。

「藤野千広」という名前の表示を見た時、今さらながら生身の人間とずっと会話していたのだということを思い知った。

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