江南大学物理学科の若き准教授・牧村正樹に届いた一通のメール。それは水素の核融合に関する画期的な論文であり、それを独学で書き上げた吉川順平は、10歳の男子小学生だった! ひとりの天才少年の登場で急速に発展していく日本の光景にSFロマンを感じます。
順平君が打ち立てた理論によって、無限のエネルギーを生み出す核融合発電が可能に! 夢のクリーンエネルギーを実現させるため、彼を見出した牧村や学部長の大戸教授、さらには政府関係者、重工業メーカー、産官学を巻き込んだビックプロジェクトに挑む大人たちの群像劇がわくわくさせます。
大学に順平君を迎えたことで、ほかの研究者の刺激になり、異なる分野でも新技術や発明が生まれる。それらを用いたシステムや製品の大量生産で経済も一気に上向き、日本を悩ます災害や国際問題も解決して、ついには新型の重力エンジンを用いた宇宙戦艦で宇宙へ!と、世の中が激変していく疾走感がたまりません。
科学の進歩が人類の未来を切り開く、SF小説の入門書としておすすめしたい作品です。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)