第18話 順平を取り巻く女性たち

 翌日、牧村が3人の女性を案内して順平の部屋にきてそれぞれを紹介する。

「順平君、まずこちらが朝比奈さよりさんだ。衛生工学を専攻していた」


「朝比奈さよりです。18歳、身長153㎝、体重50㎏、バスト82㎝だけどまだ成長途中よ。順平さんに教えてもらうのを楽しみにしています」とウインクする。

 眼の光が強く、短髪で活発そうな感じの明るい娘だ。


「次に、西田すみれさんで、物理学専攻だ」


「西田すみれです。やはり18歳で、物理学を勉強してきています。あ、身長は155㎝です」

 少しおとなしめで、体重はたぶん45㎏位、バストは70㎝台か。肩までかかるやわらかそうな髪だ。


「最後に、篠山はるかさん。生理学を専攻していた」


「篠山はるかです。生理学を専攻していて、江南大学はがん治療のメッカなので大変楽しみにしてきました」

 身長は150㎝、体重45㎏位、やはり長髪でやわらかい目線の優しそうな娘だ。


「ええ、と。あなたたちには、基本的にはそれぞれの専門の教室で学んでもらうが、部屋は同じ階で用意しているので、基本はそこから通ってもらう。3人とも、順平君の開発誘発セミナーにはできるだけ参加してもらいたい。いいですか?」


「「「はい!」」」3人が答える。


「ちなみに、女子寮の部屋にはもう入っているよね。」


 牧村の問いに朝比奈さよりが答える。

「はい、昨日入りました。個室だし立派な部屋で驚きました」


 その日帰宅後、牧村が妻の早苗と話し合っている。

「順平君に付けるようにということで、3人、どの子も天才級の子たちを送り込んできたけど、だいぶ政府のたくらみが入っていそうだね」


「美人なの?」


「うん、それぞれに個性的で美人だね。特に16歳の篠山さんはめったにいないレベルの美人だな」


「私が政府側の人だったら、順平君には早めに女性をあてがって、結婚などさせずできるだけたくさんの子供を作らせるわね」


 さらに、考え込んで言う。

「たしかに、あれだけの天才はなかなか生まれないとも思うけど、優秀な女性との子供だったら、順平君ほどの天才とはいかなくても超優秀な子が生まれる可能性は高いもの。

 開発誘発セミナーが広まってきているおかげで、いわゆる天才がいなくても大きな成果が期待できることがわかって、知識を系統的に早く身に着けられる優秀な人の需要が高まっているから、政府の期待は大きいと思うわ」


「しかし、女性側はいやだろう。結婚せずに子供だけというのは」


「そうでもないと思うな。特に、天才級の優秀な女性は、恋にあこがれるなどということはないと思う。それより、歴史に間違いなく残る超天才の順平君の子供だったらほしいと思っているはずよ。

 優秀な子供というのは彼女等本人が優秀であればあるほど、ほしいはず。また、幸せな家庭を築きたいのだったら、その子供をもってからほかの男性と結婚すればいいのだから。


そのあたりは、彼女たちはすでに言い含められているはずだし、たぶん国から経済的な援助も約束されているはずよ。第一、順平君は、使いきれない以上の収入があって、たとえ子供が10人できても、20人できても全く困らないのよ。今度来た3人は、ライバル同士とお互い意識していると思うわよ」


「そうかな。国もそこまで考えるだろうか。また、10代の女性が受け入れるだろうか?」


「私はそうだと思う。13歳の順平君も魅力的な女性のアタックにはかなわないと思うな。ちょっとお母さんの洋子さんには、ショックを受けないようにレクチャーしておかなくては」


「ええ!そこまで?」


「賭けましょう。私が勝ったら、パリに連れて行って」


「よし、受けよう!僕が勝ったら、ニュージーランドだな。前から行きたかったんだ」

 2か月後には、牧村は早苗に負けを認め、夏にパリに行くことになった。娘の舞は大喜びであった。


 セミナーの部屋に行く順平に、3人の魅力的な女性が絡まりながら一緒に歩く。廊下ですれ違う人々は目を丸くして振り返る。順平は、隣り合う若い女性の触れる手、やわらかい肩、においを意識せざるを得ない。

 しかし、そんな彼女たちは優秀で、セミナーに参加すると、たちまち優秀な構成員になって発想の抽出を促す。


 そして、たまたまほかの2人が外に出ていて、順平と朝比奈さよりが2人きりになった時、さよりがそっと言う。

「ねえ、順平さん。明日は土曜日ね。デートしない?」


「デ、デート!う、うん!もちろんいいよ。どこがいいかな?」


「わたし、呉に行ってヤマトを見てみたいな」


「うん。でも、今はヤマトは改修中で、呉にいるよ。飛べないけど中には入れるよ。それでいいかな」


「ええ、うれしいわ。でも西田さんと篠山さんには秘密よ!」


「う、うん。わかった」

 天才の順平といえども、性的にお子ちゃまである。ドキドキして動揺しまくった順平にとっては、その日はセミナーに集中するのに大分時間を要した。


 翌土曜日、順平は警備責任者の酒匂に頼んで呉まで車を出してもらう。すでに、森下艦長には視察の許可はもらっている。今日の同行者は休暇から帰った、木山、安田コンビである。大学の正門前で待っていた、朝比奈さよりが車から降りた順平に寄ってくる。


「ちょっと、残念ながら、2人だけでは行けないけど、さあ乗ってください。」

 後部座席に並んで座る。


「西田さんと篠山さんには何と言って?」


「デートよ!ってね。冗談だと思っているわ」


「呉は始めて?」


「いいえ、おじいさんが海上自衛隊だったの。だから何度か呉のおじいさんの家には行ったわ。戦艦大和の縮小モデルとか、潜水艦に入るとことか。なにより、沢山の護衛艦が印象的だったわ。

 ねえ、順平さんは今まで女の子と付き合ったことは?」


「ないよ。周りには大人の女性ばかりで、僕もあまり関心がなかったから」


「いまは、関心があるの?」


「うん、あるよ。朝比奈さんとこうしているとそわそわ落ち着かないんだ。でもうれしいよ」


「さより、と呼んで」


「うん、さよりといるとうれしいよ。僕のことも順平と呼んで」

 さよりは、順平の手を取って、体を寄せる。順平は体を硬直させるが、おずおずと肩に触れる。さよりはさらに体を寄せる。  

 呉までの2時間、順平は夢心地であった。彼は護衛の人のことはいることが当たり前でほとんど意識していない。


 ヤマトは、すでにレールガン、バリヤーなどの取り付けは終わっているが、最後のコントロール装置の調整に入っている。宙航護衛艦は、今3隻が同時に建造中で年末には完成の見込みである。


 艦載型のレールガンは、問題はその周辺の空気層であり、その不安定さは如何にレーダー連動の射撃装置を備えても10㎞以上の射程の精密な弾着は不可能である。

 その点ではヤマトは基本的に空気層を通らない射撃ができる理想的なレールガンのプラットホームであり、口径100㎜重量5㎏の弾を10秒間隔で撃てる大容量ガンが2基設置されている。


 なお、航空機、ミサイル対策に口径が25㎜、初速が2㎞/秒のガンが4基積まれており。これは毎秒1発撃てる。また、ミサイルや砲弾でも防げる(大容量レールガンは無理)バリヤーも設置しているので、たぶん無敵に近い能力をもっている。


 森下艦長が迎える。

「おお、順平君、デートか」


「い、いや、一緒の部屋の研究生の朝比奈さんがヤマトを見たいというので」


「まあ、入ってください。中は、前と違っていないけどね」

 1時間ほどヤマトの中を順平が説明して森下が補足すると言う形で見て、外に出たが、ちょうど昼時である。


 海辺のしゃれたレストランで順平とさよりは昼食をとる。

「どう、ヤマトは?」


「世界最初の宇宙バトルシップでしょう。すごいわ。でも普通の潜水艦もみたいに狭苦しくはなかったわね」


「うん、そのあたりは工夫したよ、場合によって1年以上の長時間航海が必要になるからね。超光速飛行の見込みもついたので、ヤマト型の2号艦以降が完成したら、宇宙探検だ。来年からだね」


「ええ!宇宙探検って本当?」


「ああ、僕は出来ると思っているよ。ところで今日は何時ごろまで帰ればいいの?」


「そうね、5時ごろまでかな。ねえ、もう少し順平とお知り合いになりたいな。どこかないかしら?」


「うーん、セキュリティがあるから、ちょっと不特定多数の人が来るところは無理なんだよね。ホテルのスイートとかになってしまうな。父と母とかでよそに行ってくつろぐときはそうなるんだよ」


「でも料金がとんでもないでしょう?でも順平は問題ないか」


「そうなんだよね。使い道のない金がね。どう、あそこに見える、リゾートホテルはどう?」


「うん、行こう」


 海辺の丘に建つリゾートホテルに行き、安田が、スイートを取る。寝室の他に、20畳を超えるリビングがあり、ベランダもある。さよりはベランダに出て、乗り出して叫ぶ。


「わあ、きれい!」


 しかし、10分もすると言って、引き戸を締める。

「でもちょっと寒いな」


 2人が大きなソファに隣り合って座ると、順平は少し大胆になって、さよりの細い手を取る。さよりが体を寄せると、順平はドキドキしながらさよりの体を引き寄せる。


 ホテルを出て帰途についたのは2時間後であった。帰りの車中、順平とさよりはずっと寄り添っていた。護衛の2人は閉口したが、自分の少年時代を思い出し、完全なプライシーを持てない順平を気の毒にも思った。


 さよりが寮に帰って部屋に入ると、すぐノックの音がして、ドアを開けると西田すみれと篠山はるかが立っている。

「まあどうぞ」

 さよりは部屋に招き入れ、小さな応接セットに座らせる。


「まあ、お茶をいれるわ」とポットの電源を入れる。


「本当にデートだったの?順平君と?携帯をシカトして」

 湯が沸くのを待ちながら、すみれ少し尖った声で言う。


「うん。楽しかったわ。呉に行って、自衛隊の宙航護衛管“ヤマト”を見学して食事をして、楽しくお話をしたわ」

 さよりがしれっと答える。


「だけど、場所が困るでしょう。人が来ないところというと」

 すみれが言うのに、さよりがこたえる。

「うん、だからホテルのスイート」


「ええ!ホテル!」2人が驚く。


「ベッドだけしかないところとは違うわよ。でも結構いいところまで行ったわ」


「ええ、もう!」


「最後までは、いってないわ。彼もまったく女の子に触るのも初めてのようだから。  まあ、わたしも経験があるわけではないんだけど。でも、時間の問題ね」


「ど、どうするんですか。結婚もしていないのに許すんですか」

 若い篠山はるかがいう。


「彼は、おそらく人類の歴史始まって以来の天才よ。もうそれは知る人は知っていて、日本にとっては最大の宝で、よその国にとってはよだれが出そうなほど魅力的なターゲットだわ。

 だから、彼の相手の結婚は大変よ。いつもセキュリティがついて。私は、彼の子供が欲しいのよ。歴史上最高の天才との子を産むなんていいと思わない?


 まあ、本人も結構キュートで胸がきゅとはなるけどね。子供ができたら、まあ気楽に付き合う仲で、その気になったらセックスもするという感じかな。

 また、いい人がいたら、子連れで相手が納得すれば結婚してもいいな。だから、あなたたちがアプローチするのは全く邪魔をする気はないし、あなたたちが子供を作ろうというのであれば、応援するわ。あなたたちも、あの早良さんから話は聞いたでしょう」


 さよりは言って、皆に沸いたお茶を注ぐ。

「ええ……。近づいて、まあ仲良くなってほしいという話ね。子供を育てるのに際しては、国が全面的に面倒を見ると。また、育てる間は秘密で十分な資金を出すということ。養育費は年間500万円は保証すると言っていたわ」

 すみれがためらいがちに言う。


「そう、国は、彼が結婚して、彼の子供の数が2人とか3人止まりになることは避けたいわけ。多い方がいいのよ。同じレベルの天才が、たとえ一人でも生まれてもすごいことよ。まあ、私たちも畑はいい方だから、歩の悪い賭けではないわね」

 さよりがなおも言う。


 2人は毒気に充てられた様子で帰って行った。

 さよりが妊娠して、ひそかに女の子を出産したのは翌年1月であった。その後、西田すみれは男の子を4月に出産した。

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