第18話 『現実主義者には現実主義者を』

王都にたどり着いた。それも話によれば予定より1ヶ月早く着いた


さすがフランソリワよりも北にある国だけあって少し寒い。それに家もフランソリワとは全く異なっていて高床式の家が多い。多分、よく雪が積もるからこそ高床式なんだろうけど


それに道中、町の近くを通るとその住民がわざわざ出てきて歓声を上げたり、手を振ったりする人々に少しびっくりした。エドワードの言っていた通りだった。イヴァンは良き制裁を取っていたという証拠だ

なんやかんや優秀な男らしい。ゴギブリ男だけど




☆。.:*・゜☆。.:*・゜



私は王都にたどり着くとほとんどの人が妻や家族に会いに行くらしい。私は居ないけど


その間に私は騎士団総長に会う。イヴァンと一緒に

なぜイヴァンと一緒なのかが疑問なんだけど

近衛騎士にするつもり?いや、さすがにそこまで我儘言うつもりないよね?



んなわけで騎士団総長にあったんだけど、普通に気難しい人には見えない人だった



まず顔が童顔で、身長が163cmしかない

マーヴィン卿は爽やかイケメン風で身長が172cm。まさにどうやったらマーヴィン卿が生まれた?てなる

マーヴィン卿の弟と言われた方が納得できる

それくらいに若々しい感じだ

この人本当に中年男性?絶対うそに決まってる!


「久しいな。サーマン」

「ご無事で何よりです。陛下」


へぇー。マーヴィン卿と声が似てるんだ

ちょっと低くて掠れている感じなのがサーマン公なんだ。てか、本当にマーヴィン卿の父親なんだね。マーヴィン卿は母親似なのかも


「それで帰国早々の話とは?」

「隣にいるクロムナイト卿についてだ」

するとサーマン公は私をじっと見る

私はニコニコと微笑む

恐らく品定めしているんだと思う

「弱そうですね。へらへらしている感じまですし、筋肉もそれほど着いていないように見えます。こんな人間がバハムート大聖公など信じたくありませんね」


はぁ?!?

いや、筋肉ついてないように見えるのはしょうがない。それは知ってるよ?だって女だし

でもだからってへらへらしているってのは違うでしょ!?

てか、笑ってるからおちゃらけて見えるのは普通でしょ?何このオッサン?もしかして本当はマーヴィン卿の弟とかじゃないの?


するとイヴァンが私の顔を見て吹いた

そして笑ってる

「ふっ」


私はイヴァンを見て狂気を含んだ微笑みを返す

おい!イヴァン。てめぇ、後で覚悟しとけよ!マジで許さないから!てか、大事なあそこ。蹴ってやろうか?!あぁん?

ん?あ、待って。アソコ蹴って、不妊になって処刑されるのはごめんだからクソまずい料理でも出してやろう

うん。そうしよう


「陛下。何がおかしいのですか?」

「いや、可哀想だなと思ってな」

「可哀想?」


私はイヴァンの方を見て、ニコニコと笑う。この笑顔がホラー映画のピエロだったというのはイヴァンしか知らない


「陛下。空の彼方まで飛んでいきたいのですか?」

するとサーマン公は眉間を顰めた

「は?」

「んー…。それは嫌だな。イーサンみたいにはなりたくない」

「あ、そういえば陛下には魔法が効かないんでした。あー…、残念。折角、鳥の気持ちになれたはずなのに」

「あぁ。残念だ。そういうクロムは飛んだことがあるのか?」

「ありますよ。よく使うので」

「それは素晴らしいな」

「ええ。使う分には素晴らしいです」


「人を飛ばす……とはどういう魔法で……?」

「単純にいえば空間を引っ張る力で自由自在に物質を移動させる魔法です。なので上に引っ張るようにすれば上に飛んでいくし、逆も同じです。いわいる特殊魔法です」

「なるほど……」

「ひとつの物体しか動かせないのであまり強いとは言えませんが、自分にかける場合だと色々と利点が多いです。その他にも攻撃型聖魔法も使えます」

「ふむ。微妙な魔法だな……」



「路線が外れてしまったな。戻そう。それでなんだが、彼を騎士団に入れさせたいのが俺としての意見だ」

「クロム卿は陛下に忠誠を誓った騎士ではあります。ですが元は他国の者です。何を考えるか分かりませんし。何よりも弱そうです」



「クロムとしてはどう思う?」

「……なんとも言えないというのが実情です。ヒメラルギー王国の動向によっては私の立場も変わるでしょう。私を騎士団に入れれば大陸を制覇する気があるということになります」


「保護した場合だとどうなるんだ?」

「そうですね。教会では4年に1度。大陸中の国々から王族や重役が集まるのはご存知ですよね」

「ああ。あの会議は国際的な立場を決めるようなものだろ?」

「ええ。そうです。ヒメラルギー王国は食物がよく育つ国土。その上、バハムート大聖公という教会的も国際的にも大きく影響を及ぼす人間が近隣国にいた。だから覇権を得られていた。でも今は違います。ヒメラルギー王国に吸収された上にバハムート大聖公を助けたという名誉がある」

「ということは国際的に絶対的強者としていることができると?」

「ええ。今の代で磐石な基盤と生産力。国民の支持を得られればこの国は100年以上は安泰です。ですが、一言いえるならこの国は泥船に乗ったということ。そして敵が教会の批判派という国よりも厄介な奴らになるということです」


「大陸を収めれば批判派という概念はなくなるのか?」

「はい。まぁ、私が陛下と結婚しなきゃいけなくなるんですけど」

「結婚?クロム卿は男であろう?」

「寝耳に水かもしれないがクロム卿は女だ。批判派の反発を軽減するために男と偽っている」

「はぁ……。なるほど……」

「まぁ、俺はく………………クロム卿が好きだからいいんだが

私は咄嗟にイヴァンの口を手で押えた


「好きに決めてくださいが私の本心です。舵取りによっては滅びを産みます。その逆も然り」

「会議で決めろということか……」

「はい」



するとサーマン公は私を見て顎に手を置き考え始めた

どうやら私の評価を考え直したみたい

なぜふざけていると誤解されたのかは謎だけどでも、これで頭がいい変な奴に変化しただけマシ

その上、私の重要性を強調できた

手放すのはもったいないということを理解してくれたはず!我ながら名演説だったわ


「……頭がいいのだな」

「ええ。策略、政略ともに得意です。体は女ので貧相ですが頭はよく動くので」

「はぁ……。ザッカリー卿の報告通りだったということか」

「クロム卿は奇策を立てる人間だ。ふざけてみえるのは天才だからが故だと理解してくれ」

「なんか悲しいですね。真面目にやってるつもりがふざけて見えるなんて……。そういえばジャレッド卿にも言われたような気がします」

「それはご愁傷さま」

私はイヴァンを見て睨んだ


その後、しばらく話したのだが普通にいいひとだった。単純に仕事になると気難しい人になるだけだったらしい




☆。.:*・☆。.:*・゜


そんなわけで無事、説得は終わった



俺たちは今、廊下を歩いていた

ちなみに人は誰もいない。詰まるところここはあまり利用しない廊下だ


「リゼル。この後は暇か?」

「ん?ええ。暇だけど?」

「それなら俺の自室に来ないか?」

「は!?!?」

リゼルは赤面させた

「ダメか?」

「にゃ、にゃにを!?まさか私を犯すつもり?」

「ん?どうだろうな」

「そ、それは嫌だー!!」


そう言ってリゼルが逃げ出した

よし引っかかった。あの時の約束を忘れたのか?

俺は顔をニタァーとさせた


※『次逃げたらあの時の約束を果たさせてもらうからな』より

そして空間支配魔法を使い逃げるリゼルを魔法で無効化させて、捕まえた。俺は今、リゼルを背後から抱きしめている


俺はリゼルの口を手で押えた 。間一髪でリゼルの声が響くことは無かった

んぐっ嫌だ!?!!んググッ離して!!」


リゼルは暴れている。とは言えど俺との体格差からしてそんなに意味が無い

感情が暴走しているせいで冷静ではないから護身術を使うことは無い


俺はリゼルの耳元で話す

「断る」

「んっ!?!?んぐがなんで!???」

「約束を破ったからだ。だからお仕置をしないとな」


とは言っても抱かないけどな。本人が嫌がっていることはしたくない

好きな人を守りたいし傷つけたくない


「……ん?んーんんぐー嵌めやがったな!!」

「ふっ。利用させてもらった。まんまと引っかかる当たり可愛いなぁ」

そう言って俺はリゼルの頭を優しく撫でた

「んぐっ!?!?ん、んぐな、何を……!!??」


そう驚きつつも大人しく撫でられている

嫌じゃないらしい。やっぱり、俺のことが好きなのか?自意識過剰のし過ぎか?本当は嫌で逆らえないとか?


心配に思った俺はリゼルの口を押さえている手を離し、後ろからキスをした

リゼルは目を大きく見開き、唖然としているみたいだ

しばらくして現状を理解したリゼルは大人しくしている


嫌じゃないってことだよな?

そうであって欲しい。諦めた可能性もあるが

いや、ポジティブに行こう。リゼルはきっと……


俺はキスを止める。そして誤魔化した

「暴れたり大声出したら本当に抱くぞ?」

「っ!!?!???」

びっくりしたあと顔を赤面にしている

「全く。可愛いなぁ。俺の陰略には弱いみたいだな」

「……バカ」

俺はリゼルの頭を撫でる

「あぁ。馬鹿だ。リゼルには滅法弱い馬鹿だ」

「……」

リゼルは顔を赤くして伏せた

すると首元がよく見えるようになった

……。お仕置きを決めた。首元にキスマークをしよう。そうすれば見られそうで恥ずかしい思いをするはず


俺はキスマークをした

「なっ!??なにを…!??」

「キスマーク。所有印だ」

「ば、バカ!!」

「お仕置だと言っただろ?だから、今回は抱いたりなどしない。次、逃げたら許さないからな?」

「むっ……。酷い」

「嬉しいくせに」



俺はリゼルから手を離し、立ち去ることにした

俺は信じてる。リゼルが俺の事が嫌いではないと









読んでいただきありがとうございます‎(◍˃ ᵕ ˂◍)

相思相愛だと分かっていても不安はあるものです

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