16話 可哀想な私

そのクソッタレなイヴァンのせいで仕事に追われていた私は今、アダム卿に襟を捕まれ、無理やり会議室に連れていかれている


それも私の顔は完全にゾンビみたいに覇気がはない顔だ。そのせいか度々騎士に会うと憐れむような顔をされる

普通に悲しいんだけど。ねぇ、そんな顔するならたすけてよ(泣)

まぁ、心の中で話してないと寝てしまうから話してるんだけど。んじゃなかったら話してないさ


そんなわけでさ。隈ができた死にそうな顔をしている私は会議室に着いた



「はぁ。連れてきました」

「早いな」

そう言ってニコニコ笑っているイヴァンはまじで殺したい


「うわぁ……」

「これまた酷いですね」

「可哀想に」

「これはまたすごいことになっているぞ!ガハハハ」

あー。笑わんといて普通に頭に響いて痛いんだから。てか今すぐにでも寝たい

「陛下!!!!また、アンデットを増やしてるではないですか!!」

イヴァンは微笑むことで誤魔化す


突然、私は怒りが湧いてきた

ストレスのせいでいつもは穏便に済ませていることもどうやら穏便に済ませるということが出来ないらしい。うん。元々、戦闘狂の半面が出てしまったみたい。頭もよく回らないから余計にね


私はアダム卿の手首を握り、背負い投げする

そして拳に魔力を込める


「ふざけんな!!クソ男!!」

そしてイヴァンを殴った

「うぐっ!!?!!??」


その一部始終を見た彼らは知っただろう

私は追い込まれるととりあえず殴る性質がある事に。そして彼らはその状況に唖然としている

私はと言うと1発殴ってやっと冷静になることが出来た


ふう。さすがに我慢の限界だったわ

.....ん?みんな固まってる?...えっ?.....あ、殴っちゃった!?

あぁぁあああー!!!!!!

国王を殴るなんてなんて馬鹿なの私

うわぁぁあああ!!死刑にさせられる

私は会議室を出て廊下を走り出した


「あぁぁぁあああーーーー!!!!!」

通りすがりの人達は『あーー!!』と言いながら走っていく同僚を見て唖然としている





✿.*・✿.*٭❀*


俺は思っきりリゼルに殴られたイヴァンだ

そして俺は転生してから初めて顔面を殴られた

それも魔力を込めて殴りやがったせいか右頬が滅茶苦茶痛い

リゼルはと言うと『あぁぁああーー!!』と叫びながら会議室を出てどっか走っていた

俺のせいでぶっ壊れていることくらい見なくとも分かる。本当にやらかしてしまった


領地の件はなるべく執事がやっていると聞いていたから大丈夫だと思っていたが。どうやらそれでも多かったらしい。補佐官を付けとくべきだった

はぁ……。リゼルに殴られると尚更痛い



「うっ……。痛いな。俺の顔面を殴ったやつは初めてだ」

そう言って俺は殴られた右頬をさする

「……。クロム卿って追い込まれた状態で腹が立つことが起きると殴るんですね……」

「マーヴィン卿の場合は不気味笑いだったな。ガハハ!」

「どうやら、追い込んではいけない人らしい。クロム卿はな」

どうやらアーチー卿は激怒しているらしく俺に近づく

「あれほど言わなかったですか!!?なぜまたゾンビを増やしているのですか?!!」

「……済まない。この国の貴族については詳しくない上にここの国の貴族に任せるのは危険だと思った。それゆえに普通ならありえない量の仕事を押し付けてしまった」

「だとしても少しは仕事量を減らしてやることくらいはできますよね!?ね?!!」

「そうだな……。やらかしてしまった」

「やらかしたじゃないですよ。人をなんだと思ってるんですか!?陛下は!!」

「それについては同感です。マーヴィン卿の時よりも酷かったですぞ。あの顔は」

「ああ。分かってる。すまない」

「済まないと思うんでしたらクロム卿に謝りに行かれてはどうですか?普通にあの様子だと1時間くらい走り回った後、ぶっ倒れるでしょうから。それに会議も遅れてしまうので」


うっ。皆して冷たいな。それもマーヴィンについては特に冷たい。まぁ、当然だ。俺は過度な仕事を任せてしまったのだ。怒られて当然。逆にリゼルが倒れてない方がおかしい

リゼルには土下座でも何としても謝って許してもらおう


「分かった」


俺はイヴァンを探しに行くために会議室を出たのだった




٭❀*✿.*・✿.*・


私は絶叫しながら走り中。それももう、ガチの走り。そして私を唖然としながら見ていく同僚のことなどお構い無し。私は夢中になって走る

するとイヴァンが見えた

私は止まることができずスライディングをしてギリギリとまりそして逆走を始めた


後で思うんだけど、ここまで来るとどうにも私は考える思考を停止させるらしい

ほんとに人間の生存本能と言うやらは凄いね!


するとイヴァンが私を追いかけてきた

私はガチで走る。もう、例の『逃○中』のハンターのような走り方だよ


するとイヴァンの声が聞こえてきた


「リゼル!!止まってくれ!!」


止まるわけが無いでしょ!!!殺されるもん!!


「嫌です!私を処刑するんですよね!!!そんなの聞かなくたって分かってまもん」

「違う!!!俺はただ謝りたくて!!」


絶対!嘘だ。きっと捕まえるための口実だ。よくやる方法だから知ってる!!

と言うか新たな脅し文句にしか聞こえない


「絶対、嘘に決まってる!!と言うか新たな脅し文句!??!!」

「違う!!!本当に謝りたいだけなんだ!!!」

「嫌です!!!」

死にたくない!だから嫌だ!!!


2人の追いかけっこを見ている騎士たちは『クロム卿が陛下に襲わるから逃げてるんだ!助けるぞ!!』と一致団結してイヴァンを止めにイヴァンの後ろを追いかける

どうやら同僚はイヴァンのことを男色家だと思っているらしい


それを見た私からすると『皆して私を捕まえる気なんだ!!逃げないと!』とさらに焦る


イヴァンは大軍の足音に驚き、ちらっと後ろを見た。そこには後方支援部隊の騎士たちが追いかけていた


「お前らなぜ俺を追いかける!?」

「クロム卿を襲う気なのは理解してます!!」

「違う!俺は男色家ではない!!!」

「嘘をつかなくとも、マーヴィン卿が言っていました!!」

「クロム卿を姑息に狙っていると!!」

「はっ!?!?俺は単純にリゼルの反応が面白いからからかっているだけだ!」


だったらキスなんてしないでしょうが!!?

一歩間違えたらやばかったんだからね!?

というか私のファーストキスを返して!!


色仕掛けしかけてはされる前にほとんどの敵を駆逐してたんだから!まぁ、学生時代は陰キャだったからそんな経験がなかったんだけど……(泣)


「誤魔化さなくとも結構です!!」

「リゼル頼む!弁解してくれ!!!」


こうなったら処刑しないというやつで駆け引きするしかない!弁解したら殺されるかもしれないけど。マーヴィン卿とかの高官に


「そしたら処刑しないでくれるんですよね?!」

「ああ!!と言うか元々、お前に謝りたくて追いかけているだけだ!!」

私は止まるためにスライディングをした

止まった私を見てイヴァンは安心したらしくため息を着き、足を止めた


「はぁ……。お前はどうして足がこうにも早いんだ?一向に捕まる気配ななかったぞ?」

「そこは生存本能です」


そう言いながらイヴァンと距離をとる

普通に殺されたら嫌だし。まぁ、その前に後ろの彼らがいるから大丈夫?多分ね?


「過度な仕事を任せたことに謝る。どれくらいの仕事量なのか把握していなかった。殴ったことについては怒っていない。それと俺は男色家じゃない!マーヴィン卿のデマだ」

そう言って申し訳なさそうに私に謝ったあと、彼らを見て険しい顔をした

やはり男色家扱いは嫌だよね。普通に男の人だし

まぁ多分、前世を含めた年齢で言うとオッサンくらいの年なんだろうけど


「はぁ……。良かった。処刑されるのだけは嫌だったんだんだよね」

私は安堵のため息を着いたあと、どっと疲れが来た。それでも約束なのでイヴァンの言い訳を手伝わないとね


「それは俺の方に非があるからな」

「それで男色家じゃないのは事実ですよ。ただの女性恐怖症で可愛い物が好きな人です。だいたい、男色家だったらアダム卿が食われてますよ」

「そこは中性的な美青年のクロム卿が……」

「だいたいいつもこの人の行動に振り回されているだけで特に性的な行動はされていませんし。あの時、悶えて顔を赤くしていたのもいたのも兎の妖精の話をして興奮していたからです」

「え?兎の妖精?」


彼らは知らないらしい。あの可愛い生物を

「ええ。通り道に千癒の森があるのですがそこにはとても可愛らしい兎の妖精が居ましてね。とっても珍しい上に見たら縁起物の妖精がいまして。本で見たけどあの姿は壊滅的に可愛かったですよ。それを生で見られるなんて人生にて1度あるかどうか……」


本当に出くわしたらしくありがたい限りだね

実際に破茶滅茶可愛いよ。私でさえも可愛いと思ったもん。クリクリお目目にちっちゃなお口。水色やピンク、白などのパステルカラーな兎

その上、もふもふで枕にしたいくらい

一目見たら怒ってた人でさえも収まるほど

出会うのも珍しい上に幸福を呼ぶからとても縁起がいい


「確かにあれは可愛かった。可愛すぎて死にかけたほどだ」

そう言って想像してはニコニコしているイヴァンを見て彼らも気になってしまっているようだ


「ええ。あれならどんな人であろうとも可愛いと思うはずです。可愛いものに執着のない俺でさえ可愛いと思ったしな」

「ああ。イーサンも見て目をキラキラさせてたぞ。なんか気持ち悪かったから頭をぶっ叩いた」

「それは先決ですね。兎の妖精さんに失礼ですから」

「ああ」

「そんなわけで別に男色家じゃないしただの紛らわしいドSで可愛い物が好きな変人です」


彼らは互いを見つめあったあと、ひれ伏し、イヴァンに謝ったのだった


「「「「申し訳ありません!!陛下!」」」」

「別に構わない。紛らわしい行動を取った俺の責任でもある。だからこれからは物事をしっかり調べて裏取りを取ってから行動するように」

「「「「はい!!!」」」」



まぁ、君たち。ほぼ当たりだよ。イヴァンが男色家じゃないというところ以外は当たってる

私は狙われてるのさ!あのケダモノに


そんなわけでイヴァンは私の腕を掴む


「リゼル。行くぞ。会議室に」

「えー……。寝かせてよ……」

イヴァンは動かない私を見て襟を掴み引っ張っりながら会議室に向かったのだった




寝かせて!!!!!!眠いのー!!!

絶対、会議終わったら寝てやる!!!!

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