13話 会議めんどくさい
私たちは予定通りに到着することが出来た
一日、寝ずに走ったかいがあった
私は自分の持つ、屋敷に赴き、メイドたちに正装を準備させる
その間にメルヴィンに声をかける
「メルヴィン」
メルヴィンは屋敷の庭を私の自室から見ている
どうやら美しい庭に惚れ惚れしているらしく声をかけても振り向こうともしない
へぇー……。花が好きなんだ
まぁ、大聖堂には精霊草とかこの地で生える花が植えられていないし
それに、教皇様ってさ。仕事人間だから花とか見る暇があったら仕事するから植えられてないしね
その点、私はここにいる時は大体、暇だから植えてる
まぁ、最初見た時は美しいなぁと思って一日中見てた時あったけどさ
見慣れると綺麗だなとは思うけど見続けるものでは無いね
「はぁ……。すぅーーー。メルヴィン!!!!!」
「うわっ?!?!!」
メルヴィンは大きく後ろへ下がり、剣の柄を握る
私だとわかって嫌そうな顔をして顰めた
やっぱり私のことは嫌いなんだね
「何の用ですか?」
「そんなに精霊草が珍しいのかなぁ?よくここら辺だと生えてるのに……」
「俺は平民上がりの聖騎士だったのもあり、聖教国に入ること自体、ない事だったので……。それにフロイツェン大聖堂で警護をしていたので」
「そうなんだ。てっきり、貴族の子息かなと思ったよ」
「そうですか?」
「うん。沢山の貴族や王族を目にしてきた俺が言うんだ。当然だろ?」
「そうですね」
「まぁ、立ち振る舞いが綺麗だっていう話だよ。悪いやつなら徹底的に指導しないと行けなくなるしね」
「ははは」
メルヴィンは苦笑いした
「きっとあんたを教えてくれた騎士や講師がいい人だったんだよ。どんなにクソ野郎とか思っててもさ。意味あることだったんだから」
「……え?」
「契約している時にあんたの記憶を見た」
「っ……」
メルヴィンは顔を顰めた。辛そうな顔をしている
「バハムートの血族や私については何も言うつもりはない。憎むなら憎み続ければいい。勝手に裏切ろうと何も言うつもりは無い」
「肯定するということなのか?」
「いや。静観する意味だよ。自分の遅れた行動で死んだ者もいる。逆にとった行動によって沢山の命を救えたのも事実」
「え?大聖公は何もしなかったと……。ノーランが……」
「何もしてないわけが無いでしょ。流石に。逆に何もしてないと思ったの?」
「………」
「はぁ……。少しは客観的に見てほしいんだけど。普通に考えてくれないかな?それで憎んでいるなら私は何も言わないさ」
「…すまない」
「宗教戦争を終わらせるために俺はここに訪れて信仰をする意思表示の為に礼拝した。そして張り出しを行った結果、バハムート教はアイテール神に永遠の服従と信仰を捧げる事になったの。その結果、今は多くの国が休戦になってる。それでも宗教対立は今でも耐えずにある」
「それが批判派と肯定派……」
「そう。肯定派は戦争を完全集結と大陸を統一させること。それに対して批判派は邪心徒を宗教理念から排除すること」
「俺は馬鹿だったんだな」
「自然とバハムート教を憎むのはしょうがないことだよ。責めなくていい」
「ありがとう。目が覚めた。俺は後悔を産む運命を選ぼうとしてたんだな。あんたの騎士として生きるさ。俺は戦争をあの悲劇を起こしたくない」
「そう。それがあんたの選んだ道か」
「ああ」
淡く蒼く光る桜が窓からヒラヒラと入ってきた
この世界の蒼い桜はこの話にはピッタリだ
✿.*・✿.*・٭❀*
俺ことワイアット・マーヴィン・スミリアは2人の和解した状況を見て困惑していた
というのもメルヴィンはクロムナイト卿を嫌ってた。それも酷く
それは彼が批判派に属していることが丸分かりな程に
一体何が?
いや、あの人なら上手くこちらに引き寄せることは可能だな。なんたって一番敵に回したくない人だからな。あれは普通に敵わない。陛下同様、化け物
はぁ……。なんか味方でよかったわー
「クロ……。バハムート大聖公。そろそろ時間みたいですよ」
「マーヴィン卿でも言い間違いはあるんですね」
「今のは忘れてください」
「へー…。マーヴィン卿って弱みを見せないので色々と面白くないんですよね」
「そうなんですか?」
「うん。ヒメラルギー王国に来たらきっとメルヴィンはびっくりすると思うよ。個性の濃さに。あと菓子好きが多いね。というかほとんどの人が菓子好きみたい」
「えっ……???」
メルヴィンはあからさまに引いてる
俺もそれは思ってた。何気にセドリック卿もアダム卿も。なんならハーバード卿がよくお茶を飲むついでにお菓子を食べているせいか菓子好きになりつつある。他、3人は言わずもがなだな
あまり食べないのはグレン卿とクロム卿、俺だけだ
普通におかしいことになっている
「バハムート大聖公。どうせならお菓子でもお土産に買っていきましょうかね?」
「そうですね。買っていきましょう」
「では参りましょう」
「ええ。あのクソジジイ豚野郎共の所へ」
※※※※※※
私たちは大会議室に辿り着いた
すると、白と金の目立つ服を着る人がざっと100名ほどいる
その中でも私は多くの視線が集まる。そしてそれを見た人がコソコソ話したり、驚いたりしている
私はただ毅然として教皇が座る上段のすぐ下にある右側の席に座る
それから十数分が経ち、金髪に黄金に輝く瞳を持つ人間が御前に座った。そう彼が教皇。私の味方だ
「本当に久しぶりだね。バハムート大聖公」
教皇は私に向かって満面の笑みを浮かべた
「ええ。そうですね。色々と忙しすぎて礼拝にも来れませんでしたから」
「ということは滞在中は礼拝される予定で?」
「ええ」
「ほう。それは随分とたいした信仰心で」
はぁ。嫌いな奴だ。こいつはフレイド大司教総括。批判派の裏ボスでもある。表はレジー聖公がトップとなっているがただの操り人だ
「同然のことでしょう。主神は我らの主ですから。挨拶もせずに帰るのは失礼でしょう?」
「ふっ。確かにそうですな」
ブレイド大司教総括は鼻で笑った
「それよりも教皇様。大衆の面前で安否の報告をしたいのですがよろしいでしょうか?」
「そうしてくれると助かるよ。どこかの邪心者が安否も取れていないのに死んだと言いふらすもんだからね。バハムート教の一部が抗争していてね」
そう言って左側にいるフレイド大司教をチラッと見る
フレイド大司教は気にした風もなく毅然としている
「申し訳ありません。我々が穏便かつ速急に対応できなかったが故の事態です」
「そんなことはないよ。我々が救済軍を送らなかったが故に君の父を殺したんだ。すまない」
「いえ。お気になさらず。ヒメラルギー王国軍が我々一族が命の危機に瀕しつつあるのを察して救って下さりましたから。そのお陰で父という犠牲1つで私達は生き残れましたから」
すると、またもやいい責めどきだと思ったらしく話に乗っかり始めた
「ヒメラルギー王国軍が救済に来た?ヒメラルギー王国軍がバハムート大聖公のお父君を殺したというのに?」
「殺したのはヒメラルギー王国軍ではありません。味方の騎士によるものです。殺られ方がヒメラルギー王国軍のものではありませんでした」
「嘘を言っておるのではないですか?」
「嘘もないでしょう。元々、ヒメラルギー王国軍は父をバハムート大聖公にしてバハムートの最も濃い血族と思っていたのです。なるべく捕虜として捕まえて自軍に迎えたいのが普通でしょう。それに対してフランソリワ王国は我々を消したく思ってたのです。言わなくとも分かるはずでは?」
「っ……。それは予測に過ぎないのでは?」
「予測も何も実際に私が経験し、そして軍の方に護衛として付いて来てもらっているのです。嘘八百もないでしょう?」
「それならよろしいのです。バハムート大聖公の安全のためですからな」
「それはありがとうございます。ですが、いらない心配です」
「ほほほ。そうですか」
ここでは私の勝ち。こいつにとって今のは力量調べだろう。私がここで押し返せなければ侮られる
フゥ……。めんどくさい。どうせならただの貴族の子息で。騎士として暴れまくる方が好きなんだけど
「それで日にちはどうするかい?」
「1週間ほど滞在するのでその間に」
「では、明後日にしよう。コナー大司教。張り出しの準備をお願いするよ」
「分かりました」
私はその後、話すことは無いので沈黙し、会議は無事終了した
私は背伸びをする。メルヴィンとマーヴィン卿は思っきり背伸びをして、大きな溜め息をついた
余程、疲れたらしい
私の威圧に耐えられるぐらいだと、あれくらいはケロリとするみたい
我ながら一体どれだけの気迫を放ってるんだって思うわ。というか怖いわ
「大丈夫です?」
「すごい気迫で……」
「なんか威圧的な雰囲気が会議室に充満していて入っただけで死にそう」
「ははは。あそこは国同士の外交の場でもあり、言葉による抗争の場だから。常に気迫であったり威圧的じゃないとね。少なくともメルヴィンは慣れないとだね。年に1度は必ず行くことが決まってる会議だから」
「はい……」
メルヴィンは青ざめた顔をした
「まぁ、そんなわけだけど。喜んで。うちの屋敷の飯は美味しい上に快適かつ、安全だから。のんびり休んで。なんなら明日は観光してもらってもいいから」
「まじすか?」
「え?暇になるんですか?準備とかないんですか?」
「うーん。私はあるけど。2人はないよ。演説と聖都を回って歩くだけだから周囲の人は隣で突っ立って守っていればいい話」
「なんか楽ですね」
「まぁ、バハムート教の始祖であろうと教皇様よりも位は低いですからね」
「なるほど」
「んだからゆっくり休んでくださいな」
「うっす」
「はい」
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