第2章 この地位など要らない

11話 私の地位についての話


私は皆さんと会議室で対面している

何故かと言うと、進行前に話した『詳しくはここではお話できません。進行が終わったらお話し致します』と言ったから


言ったからには言う必要性があるでしょ?

だからね。私は宴の前に皆さんを呼んでその旨を話さなければならないわけ



「すみません。私情のことでお呼びしてしまって」

「いえ、そこまで気にしていない。だから気にせずに話すといい」

「ああ!そうだ!ガハハ」

その言葉に他の人たちも頷く

「ありがとうございます。この事は他言してくださって構いません。どの道、大陸中にバレますから」

「ん?何故だ?あぁん?」

「それは今話す話に理由があります」

「ふむ。了解した」

「ではお話致します」

みんなして頷いた


「皆さんは私のことをどう思ってますか?ただのバハムートの血縁者だとは思ってませんか?」

「実際そうではないのですか?」

「いいえ。わたしはただの血縁者ではありません」

「ではなんだと言うのだ?今は当主であることくらいしか特になかろう?大聖公は死した今では」

「だから『大聖公が死した』ことが間違いなのです」

「間違いですか?」

「ええ。大聖公は顔を出さない人だとはご存知ですよね?」

「ああ。大規模な式典は行わないと聞いた」

「ではいつから父は大聖公になったのですか?いえ、なぜ父が大聖公だと思ったのですか?」

「なぜって……。彼は英雄として有名だからじゃないのか?ガッハハハ」

「大聖公はどのように選ばれたか、陛下はご存知ですか?」

「確か最も血の濃い者を選んだと」

「ええ。そうですね」

「だとすればクロム卿の父が妥当だと思うが?」



「皆さんは勘違いしてます。皆さんどころではありません。大陸全体です」

「え?」

「竜族。特にバハムートに限っては孫の代に大いなる力が反映されます。その結果、私は竜人化が出来ると共にバハムートの力でもある破壊魔法が使えるのです。なので父は祖父の強い肉体と威厳を掠めもらっただけにすぎません」

「ということはまさかクロム卿がバハムート大聖公だと言うのか!?あぁん?!」

すると皆がザワつく



「ええ。そうです。なので聖教国に行く時は父が聖騎士として私の警護をしていました。その父が死んだ今、新たな聖騎士を選定する必要性があります」

「それは我々はなれないのか?」

「不可能ではありませんが、そのためには女神からのお告げがなければなれません。それも私の警護をするものである者ならば尚更重要視されます。教皇よりも……」

「もしかしてそのお告げを聞いた者がいたと?」

「ええ。可能性があります。私を批判する奴らの一味の可能性があります。ですので迎えた際には彼の詮索を入れる旨をお伝えしたく」

「それは理解しました。もしも、肯定派だった場合は厚く迎えようではないですか!」

「そうしてくださると助かります。私からは大まかな理由とヒメラルギー王国の行動の正当性を伝えます」

「ああ。理解したぜ」

「それとですが、民やバハムート教に問い詰められたら話してください。どの道、教会で顔を出す羽目になるのです。先手バレようが大したことはありません」

「ことについては理解した。マーヴィン卿には先日話した通り、正装を着て安全に向かうといい」

「分かりました」





✿.*・✿.*・



その後、1時間ほどして宴が始まった


この宴とやらは国民と臣下の礼らしい

というのも話によれば王族は国政を苦しめていたらしく不満に思う民や臣下は大勢いたらしい


どうやら私の宣告はバハムート教にだけに使うものになりそう

まぁ、バハムートの血族が生きているのだ

助けてくれたであろうヒメラルギー王国に批判をする人はこの国にはいなかった


だが、毒を仕込む可能性があるので食べ物とワインを受け取っただけとなった。もちろん陛下のワインはわざわざグレン卿が呑んで確かめたやつだ

食べ物も毒味済み



私は呑まずに宮殿を見ていた

かつてそこは私が行きたくないと思っていた場所だった

女に絡まれるのが面倒なのもあるけど何よりも王族や王族派のいじめがよく行われてたからだ


そのせいか私は楽しめずにいる

それにまだ残っている王族派がイヴァンを殺しにくるかもしれないので、警戒もしている


すると黒い影がイヴァンの後ろに見えた。私はアタマで考えることも無く勝手に体が動きイヴァンの方へ走り出す

その前に振りかざされた刃がキーンという金属音が響き、受け止められていた




※※※※※※


俺は暗殺者が襲ってくるであろうことは察していた

だからそれを気づいていない振りをして太刀を受け止めた


本当に馬鹿にしてるのか?

少なくとも国を滅ぼした奴がただのバカじゃないことくらいわかるだろ?

頭、かち割って見てみたいものだ


「随分と俺を甘く見たものだ」

「っ!?!」

すると顔が見える。青髪に緑色の瞳の女だった

びっくりしているみたいだ


うん。正直いって不細工だ。リゼルの方が断然美人だしたちがいい。あの女性らしい体つきがなくとも可愛い。多分、普通の平民とか貴族ならこの女を美人と言うだろうけど。俺的にはリゼルが世界一可愛いし好きだ



「ふむ。女か。不細工だな。好みではない」

「ぶっ!!!」

「イーサン(アダム卿)。ワインを噴くな。普通に血を吐いたみたいで気分が悪くなる」


汚っ!!

というか今ので噴く要素あるか?

うわぁ…。普通に暗さによっては血に見えるんだよな。ここ少し暗いしな

そういえば。昔、文明開化の時に製糸場でワインを呑んでいた雇い主や講師を見て血を飲んでいると勘違いして吸血鬼がいるという噂があったらしい。まぁ、分からなくはないな。見えるといえば見える


「済まない。イヴァ。お前、やっぱりあの生意気女が好きなんだな」

こいつ。ジャレッドから聞いたのか?

はぁ……。面倒臭い奴に教えやがったな


「はぁ……。ジャレッド卿から聞いたのか?」

「いや、見てわかる」

ん?そんなに分かりやすかったか?

まぁ、知らないうちに目で追ってたかもしれないしな。それにイーサンならわかるか


するとハーバード卿とアラン卿が来た

「ん?陛下はあの方が好きなのですか?」

「そうみたいです。父上」

「ん?ライリー(アラン卿)か」

「この人、何かにつけて会おうとするんです」


え?そんなに会おうとしてたか?

1日1回声掛けていただけだが?

何気にアラン卿のガードが高いなとは思ったが…


「そんなに会おうとしていたか?目では追ってたような気がするが」

「それは重症だな」

バハムート卿はため息をついた


するとジャレッド卿とアダム卿が現れた

「マーヴィン卿に聞いた話によれば陛下を探索する時にはあの方がいいぜ」

「そうなんですか?」

「ああ。陛下が我慢できなくて出てくるらしいぜ。だから無駄な仕事が省けて嬉しいとマーヴィン卿が喜んでたぜ」

「それはなんと……。可愛そうだな」

ハーバード卿が哀れむ顔をした


「しょうがないぜ。陛下に捕まったら逃げられないみたいだしな」

「そうなんですか?」

「ああ。そうだぜ!だってグレン卿と会話してた時に相談に来たからな。本人曰く、魔法で中和されてしまって魔法が効かないし、力では負けるから連れ去られるだけだと」

「うわぁー。それは可哀想。でも、おれを川にぶっ込む発言とアリ扱いは憤慨したからぜってー助けねぇ」


あー。あれば面白かった

普通に上手く嘲笑うよな。本当に

まぁ、ゴキブリは悲しかった。確かに職業柄、逃げるのと捕まえたり隠れたりするのが得意なのはしょうがない気がするが?


「それは自業自得であろう?聞いた話によれば相当悪徳だったらしいぞ。アラン卿は謝ったのだアダム卿も謝るとよい」


あれはリゼルに土下座して謝りたい。でもこの地位だから無理だな

本当にすまなかった。リゼル


「はぁ……。ハーバード卿はあいつを信じるんですか?」

「信じるも何もあの人は忠誠を示したのだ文句も言えない立場だ」

「だからって敵だったんですよ!」




✿.*・✿.*・



私は言い合っているハーバード卿とアダム卿がいる

イヴァンやアラン卿、ジャレット卿はそれを止めようとしない


なぜとめないの?するとも止めるほどではないから?まぁ、理由を聞かない限り変わらないか

それにイヴァンの野郎。女性をきつく抱きしめてるし。あの時もそうだったよなぁ……

全く、反省してるの?あれで?


「何をしているんですか?」

「ん?クロム卿か」

「それよりもその人を縛って警護兵に渡してはどうですか?可哀想です。陛下の暑苦しい筋肉に締められ潰されてて苦しそうですよ」

「そうか?これくらいだと生暖かいくらいだが?」

「まぁ、見てるこっちが可哀想に見えるんです」

「ふむ。それも確かに。苦しそうな顔をしているな。アダム卿。連れて行ってこい」

「え?なんで俺なんすか?ハーバード卿!?」

「なかなか謝ろうとしないアダム卿への罰だ」

「えー……」

「これは後方支援部隊長の命令だ」

「ついでに俺の命令もつけてやるぜ?」

「えー……。はぁ……。分かりました」

アダム卿は大きなため息とともに罪人を連れてイヴァンとリゼルの前を立ち去ったのだった



私は4人を見る

「そういえばなんの話しをしていたのですか?」

「ん?あー…。なんでしたっけ?」

「ふむ?覚えていらなんだ」

なんか2人してとぼけたふりしている


なんじゃこりゃ?てか、ハーバード卿てそんなこと可能なんだ。意外すぎる

でもさすがに問い詰めてマズイ話だったは避けたいから問い詰めるのはやめとこ


「そうですか」

「ん?あ、そういえばマーヴィン卿に事前に確認を取らなくてはいけないことがあったのでしたそれでは失礼します」

「…………ああ」

私は立ち去った


「あー……。多分、帰ってきたら食われますね。父上」

「ああ。もし来なくとも次、会った時に陛下は間違いなく食うだろうな」

「「陛下はオオカミだからな」」




その後、私は危険を察知したわたしは陛下の所へ戻ることなく眠りについた








読んで頂きありがとうございました

初めてイヴァンの視点を取りえました

どうでしょうか。寡黙男の心の中は

少しでも見えたなら良かったです

逃げろ!リゼル!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る