8話 王都への道は険しい


それから、一週間あまり経った

これから侵攻を始めるらしい

私はと言うと領地の仕事に部隊の仕事でてんてこ舞いなんだけどさ

まぁ、ケヴィンは優秀だからよく支えてくれてるよ

うん、過労で死にそう(泣)



「クロム卿」

「ん?あ、アーチー卿ではないですか」

「ちょっとお体が心配になったので来てみたんです」

「そんな。ありがとうございます」

「よく寝れてますか?お食事はしっかり取れてますか?」

「ええ。まぁ、3,4時間は寝れてるので大丈夫ですし、無理やりにでも時間を取って食事は取っているので大したことはないです」

「それのどこが……。大したことがないですか!!!??」


うわぁ!?!

そんな大声出るんだ。セドリック卿てさ。

普段、会議の様子とかしている仕事とかでてっきり物静かで優しいお兄さんだと思ってたけど、そうでもないみたい


「うわぁ!?そんな大声出るんですね……」

「普通に過労ではないですか!」

「うーん。まぁ、仕方がないですね。他の人に頼めるだけの仕事は頼んでこれなので」

「いえいえ。部隊の仕事は陛下に相談して省けさせますから!」

「えぇ〜ー」

「えー。じゃありません!普通に過労です!そのうちぶっ倒れますよ?」

「うーん。まぁ、倒れないという保証もないしなぁ……。分かりました。お願いします」

「ええ!かならずあの鬼畜男イヴァンを説得してみせます!」


ん?今、セドリック卿から絶対出てこなさそうな言葉が出てなかった?『鬼畜男』って…

もしかしてセドリック卿もイヴァンの被害者?

その可能性高いかも……


あの人ってまだまだ仕事振れそうだなぁと思ったらとことん振る鬼畜みたいだし(ハーバード卿の情報)

まぁ、それでいて休暇はしっかり取ってくれるからまだマシらしい(ジャレット卿の情報)


うーん。そのせいできっとアーチー卿も振り回されているんだろうなぁ。きっと

わたしは赤べこのように頷いたのだった



そのおかげか私は過度な仕事はしなくて済んだ

多分だけど、あの空気読めない2人がやってるんだと思う。まぁ、いい気味さ





それからすぐ侵攻を始めた

1度目の侵攻は失敗

2度目の侵攻はいい所まで行くが結局、失敗


そして2度目の侵攻の時にアルディバラン領の隣にあるクロディバランを侵攻時に占領したのだが。2回目の攻略ではそこを取られてしまい撤退不可になってしまった

そのせいで軍議は荒れに荒れているらしい



まぁ、私的にはとても困るといえば困る。私は何としても生きなければならない

最悪、聖教国に助け舟を出してもらうのもありだけど、それよりも先に王族達がわたしを捕まえて処刑しようとするだろう

死体がないということは生きている可能性があるということだしね。余計に血なまこになって探しているはず


だけど方法がないわけではない

最悪、破壊魔法を使えばいい。ドラゴンになってしまえば王族やその騎士らなど簡単に殺せる

我々を裏切ったヤツらなんだ。皆殺しなど容易い


だけどしなくはない

それが本来のバハムートの姿ではない

バハムートは大陸を護る守護神であるべき

それに奴らバハムート批判派を有利に立たせてしまうかもしれない。いや、立たせやすい


それが嫌なんだ。バハムート教とベレヌス教その2つが対立すれば大きな戦争が起きる

その戦いは何百年と続くことになるかもしれない。それくらいバハムート教とベレヌス教は大きな宗教なのだ

私が大聖公としてベレヌス神を信仰していれば争いは起きなくて済む



すると私は背中をトントンと叩かれた

私は振り向く、そこには空気の読めない2人ことアダム卿とアラン卿がいた


リゼル「何か用で?」

アダム卿「お前、敵国について何か知ってるか?」

リゼル「は?」

アラン卿「マーヴィン卿が塞ぎ込んでるんです」

リゼル卿「……。それは私にマーヴィン卿がいる意味を否定しろと言えと言ってることと同じだよ」

アラン卿「ですが、あのままだとさらに悪くなる一方です!」

リゼル「はぁ……。それならエドワードに聞いたら?」

アダム卿「エドワードは策略が得意ではないらしい」

リゼル「だからって私?」

アダム卿「ああ。それに仲がいいだろう?マーヴィン卿とは」

リゼル「確かに仲はいいけど。だからってそれとこれは別の話だよ」

アダム卿「別の話って……」

リゼル「あのさ。あんたら馬鹿なの?敵国の策士だった者が完璧な策略を教えたらどう言うことか知ってる?『ヒメラルギー王国はそんな策士ひとりも作れない無能な国』だと言ってるのと同じなんだよ?だから例え苦しくも頼んでこないんだよ。それにマーヴィン卿がいる意味を否定してしまう」

アダム卿「なら、どうすればいいんだよ!!このままだとヒメラルギー軍は全滅してしまう!」

アラン卿「私も同意見です。無駄に地位や名誉や権限を汚しても勝たねば死ぬだけです」

リゼル「はぁ……。それなら陛下から許可を貰ってきな。話はそれからさ」

アダム卿「そうしたら教えてくれるんだな」

リゼル「ん」





私はそのあとの会議に呼ばれた

マーヴィン卿がいたのだがどうやらまともに食事も寝てもいないみたいで顔色が悪い

更には先程の不躾な話をマーヴィン卿がいる前で話してしまったのだろう。苦しそうですぐにここから抜け出したいようなそんなくらい雰囲気がある


リゼル「はぁ……」

アラン卿「………」

リゼル「……。あのさ、ヒメラルギー軍て何が持ち味なわけ?圧倒的な機動力?鉄壁?展開力?」

アラン卿「……」


何も言えないらしい。まったく、これだとマーヴィン卿が可哀想でしょ

イヴァンって策略が得意って訳ではない見たいね。ある程度はできるけど専門外ってわけか

ジャレット卿もしかり


リゼル「それがないのにこの包囲網をとくことも侵攻も無理だけど?」

アダム卿「それくらい何とか……」

リゼル「『何とか』ができなかったから今、この状況なわけでしょ?」

アダム卿「それは……」

リゼル「アダム卿は武術に対しては優秀だけど策略がめっぽう弱い。そのまんまで大陸制覇に貢献できるわけ?」

アダム卿「……」

リゼル「アラン卿も同様。アラン卿の持ち味はなに?はっきりいって親の七光りでその職に就いているようにしか見えない」

アラン卿「………」

リゼル「それを見つけるのがあんたの課題だよ。それが明確になるまではあんたを1人の将とは認めない」

グレン卿「それはあまりにも酷すぎるぞ!クロム卿」

リゼル「グレン卿。それは武術の才があるものだから言える話ですよ。彼はそれが現れないが故に悩み、諦めている」

グレン卿「……」

リゼル「その色を見せてくれるまでわたしはこの発言を撤回するつもりは無いです」





リゼル「さてと、論点がズレてしまいましたね。この軍の持ち味を探すのが今、すべき事ではありません」

ハーバード卿「では何をするべきなのか?」

リゼル「単純です。私の言う通りに訓練してもらって、私の言う通りに動いて貰えればいいのです」

ジャレット卿「駒になれと?」

リゼル「はい。そうです。ジャレット卿」

グレン卿「変なことはさせないよなぁ?」

グレン卿は大笑いする

リゼル「しませんよ。この前みたいには」

私は笑って返す

グレン卿「あれは面白かったぞ」

リゼル「そう思っていただき感謝します」

グレン卿「うむ」



イヴァン「それでクロム。我々のすべき事はなんだ?」

リゼル「まず、皆さんが持つマーヴィン卿のイメージを壊しましょうか」

マーヴィン卿「……え?」

マーヴィン卿が顔をあげた。驚いている


リゼル「マーヴィン卿。あなたは勘違いしてます。別にマーヴィン卿は策略が強みではありません。マーヴィン卿の強みは圧倒的な判断力と士気を高める力です」

マーヴィン卿「え?」

リゼル「実際、度々の侵攻でマーヴィン卿が絶妙なタイミングで撤退しているから我々は大した打撃を受けてません。そのうえ、彼の命令は他の指揮者よりも響く上にここまで完敗なのに士気は高い。そうなれば前線に出てもらって鼓舞奮闘してもらえばより効果が出る。それがマーヴィン卿が1番輝ける方法です」


マーヴィン「それは父に否定された才能……」


リゼル「そうですねぇ……。例えるなら私の父と同じ分類です。そういうタイプは悲願を達成する上で不可欠です。その才能は天賦の才です。欲しくても持てない才ですよ。ご自分を凄い人だと言い回ってください」


みんなが沈黙した

うん、私も思った。マーヴィン卿が言い回ってる姿はさぞかし面白し、ギャップ萌えだよなぁ

可愛いというか。うん


マーヴィン卿「……言い回ったりはしないです」

そして何故か全員、ガッカリした


リゼル「さてと、そういうわけなのでマーヴィン卿には前線で指揮してもらって。陛下はとりあえず邪魔なので後方に行きましょうか。後方に下がれば後方部隊が山ほどいるので、近衛部隊を減らしてその分を歩兵部隊や新部隊に分けましょうか」

イヴァン「ああ。わかった。マーヴィン卿のためにもな」

リゼル「ええ」



リゼル「それでなんですが。私の知っている限り、ヒメラルギー王国って魔法研究や魔導教育が盛んな国だと把握しています。それについては間違いないですよね?」

グレン卿「あぁ!そうだ!ガハハ」

リゼル「なら、魔法に強い方って居ますよね?」

グレン卿「ああ!いるさ!アラン卿はとても魔法に強いのだ!ガハハ」

リゼル「ん…?これは聞き捨てなりませんねぇ。これは直ぐに前言撤回ですね。教えてくれれば言わなくて済んだのですけどね」

アラン卿「……。言わなくてすみません」

リゼル「いえいえ。それなら、アラン卿にお願いした方が早いですね。アラン卿、魔導部隊の隊長として動いてもらっていいですか?その分の補填とかの書類仕事は暇な陛下に決めて貰いますので」

アラン卿「……えっ?あ、はい」


リゼル「ステルス魔法の習得と付与は習ってますよね?」

アラン卿「ええ」

リゼル「魔力は有り得ないくらいに持っている上に有り余ってますよね?」

アラン卿「えっ?あ、はい」

リゼル「そんじゃ、自分でステルス魔法を付与出来ない人全員に付与して欲しいのです。兵士を含めて。後、探知魔法の妨害魔法がありますよね?それの練習も出来たらでいいので練習してください」

アラン卿「……鬼畜」

リゼル「あ、そこんところは安心してください。全部隊から魔法部門にて優秀な騎士や兵士を集められるだけ集めますので」

アラン卿「あ、はい」

リゼル「さすがにどこぞやのセドリック卿を困らせるような鬼畜男ではないですから。安心してください」

お茶を飲んでいたセドリック卿はお茶を吹き出した。みんなは困った顔をしてイヴァンを見つめる

イヴァンはなんの事やらと知らん振りをする



リゼル「それでその間の訓練方法なのですが、軍隊かくれんぼをしてもらいます。部隊の1人でも見つかったら負け。ステルス魔法は使用可です。それを一日中しててください」

マーヴィン卿「えっ???」

イヴァン「はっ??」

アダム卿「あ…??」

ジャレット卿「あぁん??」

ハーバード卿「.....は?」

リゼル「それだけです。鬼はそうですねぇ。ザッカリー卿の隠密部隊にお願いしますね」

エドワード「分かりました。クロム卿」

リゼル「今すべきことはこれくらいですね。あとは侵攻前に話しますね」












読んでくれてありがとうございます!(*^^*)

それとギャグ少なくてすみません!

次は面白い確定演出決め込んでるのでお楽しみに

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