第33話
屋敷の案内が終わりアレクシアと自室で話しているとユリアーナがやって来る。アードリアンと話し終わったみたいだ。まだ寝るには早い時間だし、もうちょっとのんびりしていて良かったのに。
「お兄様とうまく行ったみたいね」
ユリアーナに笑いかけると頬を引き攣らせ、目を逸らされる。こちらが何も知らないと思って誤魔化そうとしているのが丸分かりだ。
私の隣でにこりと微笑むアレクシアは揶揄う気満々のご様子。逃す気はないと「ユリア、こっちに来て詳しい話をお願い」と手招きをする。
「いや、話す事は…」
「友達に隠し事?傷付くわ」
「ユリアが話してくれないならお兄様に聞いて来ようかしら」
煽るように笑う私とアレクシアにユリアーナは諦めたように溜め息を吐いた。苦笑いを浮かべて「ちゃんと話すから落ち着いて」と歩いてくる。
「えっと、どこから話せば良いのかしら」
「とりあえず聞くけど付き合う事になったの?」
キスをしていたから付き合う事になったと思うけど念の為に確認をする。ユリアーナは恥ずかしそうに「恋人になりました」と報告をくれる。
良かったと安堵の息を吐いた。
「恋人になったって事は婚約者になるのよね」
想い合っている貴族は当たり前のように婚約を結ぶ。
ユリアーナの実家は伯爵家だけど名門貴族だ。
ヴァッサァ公爵家の次期当主との婚約を反対する者は居ないはず。
邪魔をするなら私が潰すけど。
「あの、それはまだ……とりあえず恋人になるって事で落ち着いたから」
「そうなの?」
「恋人に婚約者っていきなり関係を進められないわよ!」
「まあ、いきなり婚約者にはなれないわね」
ユリアーナの言葉にアレクシアは納得したように頷いた。
前世の感覚だと付き合っていきなり婚約者になるのは考えられない。今のユリアーナは恋人という関係だけで一杯一杯なのだろう。
婚約者のいる生活が当たり前になっていたからその感覚を忘れていた。
「どっちから告白したの?」
「私から、かな……」
「どうして不安気なのよ」
くすりと笑うアレクシアに「乗せられて告白したようなものなのよ」と答えるユリアーナ。
彼女の口から語られたのは少女漫画のような掛け合いの末に結ばれる事になった二人の話だった。
それにしても許可なくキスするってどうなのかしら。
今度アードリアンと話す機会があったら注意しておこう。
「甘酸っぱい青春劇ね」
「笑わないでよ」
アレクシアに揶揄われるユリアーナに「ようやく二人がくっ付いて良かったわ」と声をかける。
二人が両想いだと気が付いてそれなりに経つけど無事にくっ付いてくれて良かったと思う。
変な誤解が生じて最悪な結末にならなくて安心する。
「もしかして私達が両想いって知ってたの?」
「気が付いていないのは本人達くらいよ。ね、リーゼ」
「そうね。ずっとモヤモヤしていたわ」
「リーゼには言われたくないのだけど」
じっと見つめてくるユリアーナに頬を引き攣らせる。
全くもってその通りだ。
私の場合は両想いだと分かっていながらゲームに縛られて関係を進める事を怖がっていたのだけど。
「い、今は私の話は良いでしょ!ユリアとお兄様の話をしましょう」
「ちょっと話を戻さないでよ!」
「私は両方の話を聞きたいけど?」
余裕たっぷりで笑うアレクシア。一人だけ高みの見物をさせる気はない。
「シアとレオンハルトの話も聞かせてよ!」
「そうよ!小さい頃の話を聞かせなさい!」
ユリアーナと揃って攻めるとたじろぐアレクシアは苦笑いで「聞いても面白くないわよ」と笑った。
それでも聞きたいのが女子会というものだ。逃すつもりはない。
「聞かせて」
お願いするように言うとアレクシアは仕方ないと言いたそうな表情で「分かったわよ」と思い出を語り始めた。
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