第18話
お昼休みになりベルンハルト達と別れてユリアーナ、アレクシアと三人で中庭のガゼボに向かう。
「レオンが寂しそうにしていたってどういう事なの?」
会話を聞かれないように防音の結界を施した後アレクシアから尋ねられる。
ユリアーナと顔を合わせるがどう答えて良いのか分からない。ただそう感じたとしか言いようがないからだ。
「何となくそう感じただけよ。挨拶の時も食事会の時も大した話をしていないからどんな人なのか分からないし」
レオンハルトが何を思って私との距離を詰めようとして来たのか分からない。
本当に関わりを持ちたかったら食事会の後でも話しかけてくると思うし、やっぱり次期王太子妃としての素質を見られていたのだろうか。
「でも、あの顔はどこかで見た事があるような気がするのよね」
顎に手を添えて何かを思い出そうとするユリアーナは一分ほど思案した後に「あ…」と声を漏らした。どうやら思い出そうとした何かが分かったらしい。
「ゲームのレオンハルトが初恋の人を思い出そうとして、でも思い出せないってシーンの顔よ」
そういえばゲームのレオンハルトは主人公に「思い出さないといけない人がいるのに思い出せないんだ」と言う事がある。バッドエンドフラグが立った時、つまりはレオンハルトとアレクシアが結ばれるエンドになった時のシーンの台詞だ。
言われてみればあの時の表情に似ていたけど…。
「私はアレクシアじゃないわよ」
「そうね…。同じ公爵家の人間だから勘違いしているとか?」
それはどうなのだろうか。アレクシアを見ると気不味そうに目を逸らされる。変な事を言ったせいで誤解されてしまったのだろう。
「何か事情があるのかもしれないわ」
「リーゼに一目惚れをしたのかもね」
「あのレオンハルトの様子からしてそれはないと思うけど」
「そうかしら。私は見ていないから分からないわ」
ユリアーナの言葉に悔しそうな声を漏らすアレクシア。自分達が余計な事を言ってしまったせいで微妙な空気になってしまった。
ただ私の気のせいかもしれないけどレオンハルトの表情は悲し気なものに見えたが申し訳なさそうなものにも感じられた。
「ごめんなさい。変な空気になっちゃったわね」
「シアが悪いわけじゃないわ。こっちこそ不安にさせるような事を言ってしまってごめんなさい」
中身が大人だからだろう。余計な衝突を避けようとしている。しかしアレクシアは内心複雑なはず。
「レオンが編入してくれば何か分かるかもしれないわ」
「気を使わせてごめんなさい」
「謝らなくて良いわ」
結局、微妙な空気になったまま一週間が過ぎる事になってしまった。
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