第19話
レオンハルトの編入日。
学園は朝から騒ついていた。隣国の王太子様が編入して来るのだから浮かれていても仕方ない事だ。
「どこを行ってもレオンハルト殿下の話題一色ね」
「そうね」
今日はどこを歩いてもレオンハルトの名前が聞こえてくる。平民達は純粋に隣国の王子と会える事を楽しみにしているのだろう。しかし貴族は含みがあるように感じられる。その中でもアンネの存在が気になっているけど、アレクシアの方も気掛かりだ。
「おはようございます、リーゼ、ユリア」
フィーネと別れて教室まで歩いていると声をかけてきたのは担任のヘンドリックだった。
二人揃って挨拶をすると笑顔を向けてくる彼に首を傾げる。
「今日は編入生が居ますよ」
「授業に集中出来ない生徒が多くなりそうですね」
体育祭以降ヘンドリックとは距離を置いているところがある。会話をしても早々に切り上げようとしているし、彼も無理に話を続けようとはしない。微妙な距離感が続いたままなのだ。
無難な答えを言うと彼はくすくす笑いながら「確かに大変そうです」と返す。
「頑張ってくださいね、リック先生」
「ところで先程レオンハルト殿下にお会いしたのですがリーゼの事を聞かれましたよ」
別れようとした瞬間、聞こえてきた言葉に戸惑う。
どうしてレオンハルトが私を気にかけているのか。
振り向いてヘンドリックを見ると「この話題には食い付くのですね」と返す。
「レオンハルト殿下は何と仰っていたのですか?」
「ベルンとリーゼは昔から仲が良いのかと聞かれましたので仲良しですと返しておきました」
「そうですか…」
どうしてそんな事を聞いたのだろうかと考えているとヘンドリックは意外な事を口にする。
「どうやらレオンハルト殿下は初恋の人を探しているみたいですよ」
初恋の人を探している?
もしかして私を初恋の人だと勘違いしているのだろうか。そうだったら早々に勘違いだと教えた方が良い気がする。
「でも、彼は記憶喪失ですよね?」
「僅かに残った記憶を元に探しているみたいですね。詳しくは知りませんのでこれ以上は聞かないでくださいね」
手を前に出してこちらの問いかけを止めに入るヘンドリック。含んだ笑顔を見る限り色々と知っているような気がするけど聞いたところで教えて貰えないのだろう。それにしてもレオンハルトはどうしてその話をヘンドリックにしたのだろうか。
彼には色々と聞くべきみたいだ。
「教えてくださりありがとうございます」
失礼しますとその場を後にする。
レオンハルトがヘンドリックに初恋の人の話をした事も気になるが、ヘンドリックが私教えた事も違和感を感じる。
これについては後で調査をするべきなのだろう。
「ヘンドリックって本当に変な人よね」
ユリアーナの言葉に「そうね」と小さく呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。