第7話
王城を慣れた足取りで歩いて行く。
もう七年も通っているのだ。流石に迷う事はない。昔はしょっちゅう迷っていたけど広いから仕方ない話だ。
「リーゼ!」
控え室に向かっている途中、駆け寄って来きたのはベルンハルトだった。後ろには陛下と王妃様もついて来ている。
どうして三人がここに居るのだろうか。
王族三人が揃い踏みとは慣れていない人が見たら卒倒しそうな光景だ。現に私の後ろに立っているユリアーナとフィーネは若干顔色が悪くなっている。
「久しぶりだな、リーゼ」
「久しぶりね。王妃教育が終わってから全然顔出してくれなくて寂しいわ」
陛下と王妃様に声をかけられる。
王妃教育は学園が入る前に修了した為、王妃様と会う回数もかなり減ってしまったのだ。
「陛下、王妃様、お久しぶりでございます」
お二人に淑女の礼をしてからベルンハルトと向き合う。
「おはよう、リーゼ。今日は父上達が無理を言ってすまなかった…」
「おはようございます。気にしなくて良いですよ」
別にベルンハルトが悪いわけじゃない。レオンハルトの出迎えは次期王太子妃として当然の事なのだ。
そう思っているとベルンハルトは「父上達も謝ってください」と陛下達を見た。
この人は何を言っているのですか…。
「ベルン様、お願いですから陛下達を謝らせようとするのはやめてください」
陛下と王妃様に頭を下げられた日には口から心臓吐き出す自信があるのでやめて欲しい。
全力で拒否すると「遠慮しなくて良いのに」と残念がられた。
「遠慮じゃないですから…」
「そっか、分かった。じゃあ、僕が控え室まで案内するよ」
控え室として使われているのはちょっと前まで勉強部屋として使われていた場所だ。勉強部屋という割には豪華な部屋だった。
「控え室なら分かりますよ?」
「今日は連れて行った事がない部屋に案内するから」
「そうなのですか。分かりました」
行った事がない部屋ってどこでしょうか。
そう思いながら陛下と王妃様の方に向き合う。
「陛下、王妃様、失礼致します」
二人に頭を下げるとベルンハルトに腰を抱かれた。並んで歩き始めると後ろから揶揄うような声が飛んでくる。
「相変わらず仲良しね~」
「これなら孫の顔もすぐに見られそうだな」
お願いだからそういう会話は本人の居ないところでしてほしい。
揶揄うところは昔から変わらない人だ。
「父上達がごめん」
「あの揶揄いには慣れましたけど…」
「けど?」
「流石に恋人になってから言われると恥ずかしいですね」
顔が熱くなってきた。もう真っ赤になってるような気がする。隣を見れば顔を逸らすベルンハルトは耳まで真っ赤になっていた。彼も恥ずかしいのだろう。
「リーゼって天然よね」
「可愛らしいですが……それを見せている相手が変態王子なのは気に食わないですね」
後ろからユリアーナとフィーネの呆れるような声が聞こえてくる。
天然じゃないし、王城なので言葉選びは気をつけてほしいところだ。
「ところで陛下達は何をしに来たのですか?」
ベルンハルトは私の案内だと分かったけど陛下達が来た理由が分からない。
首を傾げていると「揶揄う為だけに来たんだよ」という答えが飛んできて苦笑いを浮かべた。
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