第40話

色々あった体育祭は無事に終わりを迎えた。

一日目の閉会式後、控え室に戻ってぐっと背を伸ばす。


「疲れた…」

「リーゼ、大活躍だったものね」


魔法戦の後にあった競技でも活躍させて貰った。頑張れたのはクラスメイトが応援してくれたおかげだ。

私は期待に応えられる女なのです。


「この姿はクラスのみんなには見せられないわね」


私だってソファに横になって寛いでる姿は見られたくない。

さっさと屋敷に帰って寝たいところだけどベルンハルトを待っている状態なのだ。

ちなみにフィーネは馬車の手配の為に席を外しているのでユリアーナと二人きりである。


「魔力を使うの疲れるの」

「知ってるわよ」


射撃の試合でパフォーマンスも兼ねて派手に魔法を放ったのが魔法消費の主な原因だ。

アンネと戦った時も結構消費したけど。


「そういえば…」

「今度は何?」

「ヘンドリックが前世持ちかもしれないわ」


今日中に話しておくべきだろうとユリアーナに伝えると「は?」と理解出来ないような表情を向けられた。

朝に起こった騒動の際ヘンドリックに見せられた本性の話をする。


「なるほどね…」

「ユリアはどう思う?」

「怪しいわね」


はっきりと言うユリアーナに「私もそう思う」と返す。

ただ確かめる術が本人に聞く事だけだ。

もし前世持ちではなかったら完全に変人扱いを受けてしまうので下手に聞けない。


「前世持ちだとしたらヘンドリックのキャラが違い過ぎるのも納得出来るわ」

「キャラが違うのはベルン達も同じでしょ」


ベルンハルトを始めとする攻略対象者と同じ名前を持つメンバーはゲームと異なる性格を持っている。

ヘンドリックがゲームと違い過ぎても別に不思議じゃないのだ。


「馬鹿ね。ベルンハルト達の性格が違うのは私達がゲームの悪役令嬢と異なる動きをしているからでしょ。幼い頃からゲーム内容を改変しているのだから性格が違って当たり前よ」


言われ通りベルンハルト達の性格がゲームと異なる事になったきっかけを作ったのは私とユリアーナだ。

それがどうしたと言うのだろうか。


「でも、ヘンドリックだけは違うわ。私もリーゼも昔から関わっていない。性格が変わるきっかけはないのよ」

「でも、ゲームの世界じゃないのだから…」

「似ている世界である事は間違いないわよ」


前世持ちというイレギュラーな存在である私達が干渉していない部分はゲームと同じでも不思議じゃない。


「ヘンドリックの件はきちんと確かめましょう」

「そうね」


もしもヘンドリックが前世持ちだったとして敵か味方か分からない。隙を見せないように慎重調査をした方が良いだろう。

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