第41話
ヘンドリックが前世持ちであるか調査する事が決まったところで馬車の準備が出来たとフィーネが呼びに来てくれる。
「リーゼ、そろそろベルン様が来るわよ。起きなさい」
怠い身体をのろのろと起き上がらせるとフィーネが乱れた髪を整えてくれる。
手が気持ち良くて眠くなってくる。急激な睡魔に襲われてうとうとしていると優しい声が聞こえてくる。
「リーゼは眠いのかな」
「ベルン様…」
ついさっきまで居なかったのにいつの間にやって来たのだろうか。
跪いて見上げてくるベルンハルトの表情は心配そうなものだ。
「眠いなら運んであげようか?」
「お願いします」
「素直だ」
「疲れてるので」
両手を広げて甘えてみます。
よく分からないが肩を震わせるベルンハルトに首を傾げた。
どうかしたのだろうか?
「可愛い、連れて帰りたい」
「連れて帰ったら旦那様が迎えに行かれますよ」
フィーネの鋭いツッコミが入る。
その間にも眠気は襲いかかってきて離れてくれない。
「リーゼ、馬車まで行こう」
「はい…」
ベルンハルトは軽々と私を抱き上げた。
今世では初めてのお姫様抱っこだ。
嬉しい気持ちを誤魔化す為、彼の肩口に頭をぐりぐりと押し付ける。
「リーゼ、馬車まで運んであげるから寝てて良いよ」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
折角のお姫様抱っこなのだ。楽しみたい気持ちもある。遅くなっていたからか既に生徒の大半は帰っていた。
おかげで人とすれ違う事はない。
「全員に僕のリーゼだと自慢出来る機会だと思ったのに」
残念そうに呟くベルンハルト。そんな事を自慢されても相手は困ると思うし、こんな状況を自慢して欲しくない。
「ベルン様、嬉しそうな顔をしているじゃないですか」
「素直に甘えてくれるリーゼは初めてだからね、嬉しいよ」
呆れたように言うユリアーナの方を向いて笑顔を見せたベルンハルトは楽しそうだ。
私に甘えられて嬉しいと思ってる事が嬉しいと思うが口に出すのは憚れた。
「そうだ、写真を撮ってくれ!」
写真良いですね…って流石にそれは嫌です!
「写真は駄目です、下ろしてください!」
ベルンハルトの発言に眠気が吹き飛び完全に目が覚める。
ジタバタと暴れて下ろして貰った。
眠かったからって甘え過ぎたと羞恥心に襲われて逃げ出したくなる。
「リーゼ、目が覚めたみたいですね」
「甘えてくれてたのに…」
揶揄うネタが増えたとほそく笑むユリアーナと残念そうにするベルンハルトがこちらを見てくるので苦笑いを浮かべた。
それにしても先程の眠気は一体何だったのだろうか。疲れと魔力消耗もあったけどそれとは違う妙な力に押さえ付けられていたような気がした。
寝惚けていたのでよく分からなかったがおそらく気のせいだろう。いや、気のせいであって欲しい。
「リーゼ?」
「いえ、何でもないです。帰りましょう」
面倒な事にならないと良いのですけどね。
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今回で前編は終了です。
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