幕間3※エリーアス視点
トルデリーゼにハッキリと振られた。
僕からの告白はさせてもらえなかったけど。
泣きながら自分が好きなのはベルンハルト殿下だけと言うトルデリーゼは吃驚するくらい儚げで綺麗だった。そして痛いくらいに彼女の気持ちが伝わってきた。
「大丈夫ですか?」
振り向くとフィーネがハンカチを差し出してくれていた。
「リーゼ様のところに居なくて良いの?」
ハンカチを受け取りながら尋ねると苦笑いを向けられる。
「リーゼ様は試合中ですので」
「勝つだろうね」
「強いですから」
軽く風が吹いて髪がぐちゃぐちゃになる。
乱れた髪をくしゃりと握り「僕、格好悪いだろ」と呟く。
誰かに気持ちを聞いて欲しかったからだ。
フィーネは表情を変えずに首を傾げた。
「そうですか?」
「格好付けてベルン様に挑んだのに負けて告白も出来ず振られちゃってさ…」
本当に格好悪過ぎる。
辛辣なフィーネなら「そうですね」と肯定してくれると思ったのにかけられた言葉は全く違うものだった。
「どこが格好悪いのですか?」
「え…」
「リーゼ様の為に戦ってもう少しのところまであの方を追い詰めて凄いじゃないですか。好きな人の為に戦えるリアス様を格好悪いと言える人は居ませんよ」
追い詰めたのはまぐれかもしれない。
負けたのだから別に格好良くないのにフィーネは僕を労るような優しい笑みを浮かべた。
「そもそもあの王太子殿下に喧嘩を挑むだけで十分格好良いと思いますよ」
「フィーネ…」
僕は情けない男じゃなかったかな。
そんな風に聞きたくなる。
「それにリーゼ様の声が無かったら王太子殿下は勝ってなかったですよ」
「え…」
試合中トルデリーゼの声は聞こえなかった。
あの大勢の中からどうやってトルデリーゼの声を拾ったんだ。
「……やっぱり、殿下には敵わないなぁ」
大勢の中からトルデリーゼを見つけたベルンハルト殿下の想いの強さを思い知らされた。
どれだけ彼女を想っていてもあの人は敵わないのだろう。
「あれはかなり手強いですから」
「フィーネも負けてるの?」
「リーゼ様を奪われた時点で負けてますよ」
悲しそうに笑ったフィーネは初めて見る。
「リーゼの事、大切なんだね」
「えぇ。ですから見守る事にしてるのです」
「見守る…?」
「それで時々二人の邪魔をするのです」
見守るって言った後に邪魔をするって…。
思わず笑ってしまった。
「ようやく笑えましたね」
「……僕を笑わせる為に今の話を?」
「事実ですよ。邪魔をするのはストレス発散になりますし、殿下の悔しそうな顔が見れますからね」
くすくすと笑うフィーネ。
彼女はこんなに表情が豊かな人だったんだな。主人に似たのか無表情ばかりの人だったので意外な発見だった。
「それは良い事はを聞いたかな」
「リアス様がこちら側になってくださるのなら邪魔の仕方も増えますね」
「風魔法で殿下の髪ぐちゃぐちゃにするとか?」
「それだとリーゼ様が整えてしまうので駄目ですね」
手厳しいなぁ。でも、確かに二人に悪戯をするのは楽しそうだ。
「ありがとう、フィーネ」
「何の話ですか?」
「……君は主人に似ているね」
「最高の褒め言葉ですね、それ」
楽しそうに笑うフィーネはやっぱりどこかトルデリーゼに似ているような気がした。
「スッキリしたよ、ありがとう」
「よく分かりませんが『どういたしまして』と言っておきましょう」
「よく分かってないのに使っちゃ駄目だよ」
くすりと笑った彼女につられて頰を緩めた。
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