幕間2※ベルンハルト視点
試合前にエリーアスに声をかけられた。
「次の試合、僕が勝ったらリーゼ様に告白する許可をください」
そう聞かれて内心では驚いたし、彼に対して嫌悪感を覚えた。
それでも止められなかったのは彼の想いの強さを知っていたからだろう。
「どうするんだ?」
「勝たせてあげるつもりはないよ」
ディルクに聞かれて即答する。
勝たせたくないに決まってるだろ。
トルデリーゼが自分以外の人間に告白されるだけで吐き気がする。さっきだってクラスメイト達に囲まれて幸せそうに笑う彼女を見て閉じ込めたくなるほど嫉妬したのだから。
「僕って重いな」
「今更かよ。まぁ、俺はリアスを応援するぜ。クラスメイトだからな」
お前も頑張れよ、と背中を押される。
エリーアスと向かい合い礼をした後に試合開始の合図が鳴り響いた。
開始直後、身体を浮かされてしまう。一瞬動揺するがすぐに彼の風魔法だと気が付いた。
バランスの取り辛い空中に投げて隙を作らせる作戦なのだろうけど負けるわけにはいかない。体勢を立て直して、地面に降りる。
「先手必勝だと思ったのですけど」
「驚いたよ」
今度は僕の番だとエリーアスの周りに火柱を作っていくが巻き起こる突風によって消されてしまう。
「流石に簡単には勝たせてくれないか」
エリーアスの魔法技術は非常に優秀だ。
きっと父親に似て素晴らしい魔法師になるだろう。将来国を背負う身としては是非味方で居て貰いたいものだ。
「よそ見してる場合じゃないですよ」
追風に乗って距離を縮めてきたエリーアスから逃げようとするが、腕を掴まれてしまう。
不味い。
「危なかったな…」
風の刃が脇腹を掠めて、服が破れてしまった。
避けられると思ってなかったのだろう。一瞬だけ焦った表情をするエリーアスを見逃さなかった。火で剣を作り上げて斬りかかる。
「……負けませんっ!」
エリーアスは叫びながら風で壁を作り上げて僕の火剣を防ぐ。
負けたくないって気持ちは僕も同じだ。
押し切ろうとするが、なかなか通してくれない。立て直そうと後ろに逃げようとしが突風が吹いてバランスを崩す。
「ベルン様!」
不味い、負けてしまう。
負けるのは絶対に嫌だ。
トルデリーゼは僕の恋人なのだから。
「嫌だぁ!」
エリーアスに向かって炎の牢獄を作り上げた。
温度は手加減してある。怪我はしないはず。これで勝てると思ったのに彼はそれすらも風で吹き飛ばしてしまった。
これがエリーアスのトルデリーゼに対する想いの強さなのか。
僕はそれに負けてしまうのか…。
「ベルン!」
鈴を転がすような美しい声が耳に届く。
僕の大切な恋人。
人生を賭けて守りたい婚約者。
トルデリーゼの声が響いた。
「負けない…」
そこからはどうやって戦ったのか自分でも分からない。
ただ一つだけ。
「すまない、リアス」
一心不乱に戦った結果、僕はエリーアスに勝ったのだ。
地面に転がるエリーアスの喉元に火の槍を突きつけて、勝っていた。
「……負けちゃいましたね」
悔しそうに呟くエリーアス。
両手で隠された目からは涙が溢れ出ていた。
「僕はリーゼが好きだ。愛してる。だから…」
勝たせたくなかったんだ。
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