第20話
主人公表記をアンネに変えました。
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振り向くとユリアン君の手を引っ張ってこちらにやって来るアンネの姿が視界に映り込む。
何故ユリアン君を連れて来るのでしょうね。
しかも手を握り締めているとは許せない。
「おはようございま~す」
いくら学園内が身分不問だとしても舐めたような挨拶は許されない。馬鹿なのだろうか。
きっと馬鹿なのですね。
昨日散々睨まれたくせに懲りていないとはアンネの記憶力は鶏レベルなのだろうか。
「あ、あの、ベルンハルト王太子殿下…」
アンネに続いて話しかけてきたのはユリアン君だった。
怯えた姿も可愛いですね。いえ、他意はないです。
「ラント君、どうしました?」
「いきなり声をかけしてしまい申し訳ありません。一応彼女を止めたのですが…」
どうやらユリアン君はアンネを止めようとしてくれたらしい。
本当に良い子です。可愛い。
「そうですか。気にしなくて良いですよ」
「でも…」
「気にしなくて大丈夫です。申し訳ないのですが婚約者リーゼとの時間を無駄にしたくないので失礼しますよ」
婚約者を強調する必要なかった気がするのだけど。後、腰を抱かないで欲しい。
「嫌なの?」
耳元で聞かれる。怒っているというよりもイライラしている時の声だった。
声だけでベルンハルトの気持ちが分かるってあれですけど。
「いえ…」
「だよね。見られて困る事はないよね」
「まだ疑いますか…」
「彼を見る目がキラキラしてたから」
それは私が悪いですね。
ユリアン君を近くで見ると自然と輝いてしまうのだ。直すようにしないといけない。
「それでは私達は失礼しますね」
「は、はい!」
私とユリアン君を話させない気持ちが伝わってくる。
別に良いですよ。話そうと思っても緊張して変な事を口走りそうですし。姿を近くで見られたってだけで幸せですからね。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
歩き出そうとした私達を止めようとしたのはアンネだった。しかしベルンハルトの足は止まらず彼女を置いて校舎に入っていく。
「リーゼ、後でキスしてね」
「どうしてそうなるのですか…」
「嫌なの?昨日約束したのに?」
確かに約束した。でも、それは二人きりになる事が出来たらという話だ。
「二人きりの時って約束でしょ。しばらくは二人に…」
「今日の帰りの馬車でして貰おうか。恋人になった時のような感じで頼むよ」
恋人になった時って無我夢中でキスをしていた時の事ですよね。一回なら大丈夫だけど何回もするのは恥ずかしい。
「真っ赤になってる」
「誰のせいですか…」
ベルンハルトが思い出させたのだ。
流石にあれの再現は出来ない気がする。
「それでキスしてくれる?」
「嫌です…」
「じゃあ、僕からするのは?」
「……二人きりなら」
チッと後ろから舌打ちが聞こえてくる。完全にフィーネとユリアーナの事を忘れていた。
私達の邪魔にならないように存在感を消していたのは彼女達ですけどね。
「ユリア様、旦那様に報告しますか?」
「したら面白そうね」
「それはやめてくれ」
ベルンハルトは苦笑いを浮かべた。
私も自分の父親にそういう事を知られるのは嫌ですよ。
「仕方ない。今はこれで諦めておこう」
そう言って手の甲にキスをされました。
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