第21話
学園に入学してから早いもので一週間が経過した。
友人と呼べる人が出来たかと聞かれたら黙りたくなる。
勇気を振り絞った様子で話しかけてくれる人は居るのだけど私が口を開く前に逃げられてしまう。
それは婚約者ベルンハルトも同じみたいだ。しかし多くの人が彼と話したがって遠巻きにしている中で唯一空気を読まず声をかける人物が居る。
「ベルンハルト様ぁ!」
勿論アンネだ。
最初は廊下であったら話しかけて来る程度だったのに今は特進クラスの教室まで押しかけて来るようになった。
「また君ですか?」
近寄って来るアンネにベルンハルトは冷たく言い放つ。
何回も見せられているせいでこのやりとりにも慣れて来た。幸いと言って良いのか分からないけどアンネが私に絡んでくる事はない。
完全に悪役令嬢は無視状態なのだ。
攻略対象者達だったら誰であろうと絡みたがっている。
あれはもう病気ですね。絡みたい病ですよ。
「また来てるよ。相手にされないのに」
呆れた声を出すのはユリアーナだった。
彼女はアンネに突っかかろうとしていたのですけどね。
流石に一週間も相手にされてない様子を見続けていたら注意する気も失せたみたいだ。
私と一緒に傍観者になっていますね。
「呆れているのは私達だけじゃないけどね」
「でしょうね」
ユリアーナの他にも注意をしようとする人は居たのだ。しかし何の効果も見られなかった。
今では相手にされないアンネを痛々しいものを見る目で見ていますね。
「流石にここまで続くのは予想外ね」
「同じような事をしようとして一日しか保たなかった人も居るのに」
「あれも諦めてくれないかしら」
冷たい視線をアンネに送るユリアーナは深く息を吐いた。
「今日はベルンハルト様にお菓子を作ってきたのですぅ」
「すみませんが手作りお菓子は婚約者から受け取りたいので他の方にあげてください」
そういえばベルンハルトにお菓子を作った事はない。
今度あげましょうか。
前世では祖父母や幼馴染によく作っていましたけど今世では作った事がない。あげる前にちゃんと作れるように練習が必要そうだ。
「えー、食べてください!」
無理矢理渡そうとするアンネに苦笑いが漏れる。
あそこまで来ると逆に尊敬してしまう。
「あの子、本当に凄いわね。名前も名乗ってないくせに」
「そういえば、まだ名乗ってませんね…」
一週間、名乗らない人に絡まれる続けるベルンハルトが可哀想で仕方ない。
結局、彼とアンネの攻防戦は授業が開始されるまで続いた。
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