第14話

ちょっと忘れかけていた。というよりも恥ずかしい話なので忘れようとしていたのだ。


「確認だけど先程の件ってキスの話よね?」

「その言い方はやめてください!」

「他にどう言ったら良いのよ…」


接吻?口付け?

その辺りが妥当だと思ったのにフィーネからの返答は全く違った。


「皮膚同士がぶつかった件です」


吃驚するくらい色気のない言い方ですね。

確かに皮膚同士の接触ですけど。


「他の言い方ない?」

「ないですね。あれはただの皮膚の接触です。ぶつかっただけです」

「そ、そう…」


キッパリ言われちゃいました。

もう良いです。話が進まなくなってしまうので皮膚同士の接触という事にしておこう。


「その、ね…。私、ベルンが好きでベルンも私の事を思ってくれてたの。彼と両想いになって、それで……どうして耳を塞ぐの?」


フィーネってば両想いって言う前ぐらいで耳塞いでましたよ。

さっきまで聞かせろというって態度だったのに。

恥ずかしいのを我慢して話したのに。


「なんとなく分かってました。けど聞きたくなかったです!」

「聞かせて欲しいって言うから話したのだけど…」

「分かりますよ。急に皮膚の接触を始めたかと思ったら何度も何度も…。つい盛り上がっちゃったみたい感じでしたもん!」


もんって…。

この世界に言う人が居たのですね。

それよりもやっぱりガッツリ見られていましたし、つい盛り上がってた事もバレてます。

そして頑なにキスって言いませんね。


「護衛の人達にも見られちゃったのかしら?」

「最初の接触で後ろ向かせましたよ!」

「フィーネは優秀ね。そして私の事を考えてくれてるのね」


見られてなかった。いや、フィーネには見られていましたけど、護衛にも沢山のキスを見られるのは流石に私も嫌ですからね。


「あの性悪王子はこっちを見て笑ってましたよ」


ちょっと待って、それは聞いていない。

フィーネの言う通り性悪ね。それに関しては否定出来ない。

今度会ったら説教しましょう。

それは置いといて、とりあえず今は最後まで話をしましょう。


「それで私達恋人になって…」

「婚約者の座まで奪い取っておいて恋人の座も奪い取ったのですか、あの変態王子」


変態王子って…。

もう不敬罪が止まらないわね。


「婚約者がいるのに他の方を恋人にする方が問題だと思うわ。それで呼び捨ての件だけど」

「恋人になったから呼び捨てにされたのですか?」


そんな憎そうな顔しなくても…。

頷くともう泣きそうな顔をするフィーネにどうしたら良いのか分からない。


「私の天使が、私の天使様がぁ…」

「さっきから言ってる天使って私の事?」

「当たり前じゃないですか!出会った頃からリーゼ様は天使です!」

「いや、天使じゃないのだけど…」

「天使です!あの性悪王子は悪魔です!」


天使じゃないですよ。


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