第17話

「ベルンハルト王太子殿下、リーゼ様、お待たせ致しました。大変申し訳ございません」


ベルンハルトを出迎えた使用人たちへ説教ではなく注意を終えたフィーネが戻って来ました。


「リーゼと話す時間が出来たから感謝するよ」

「ちっ……いえ、それは良かったです」


誤魔化していますけど舌打ち聞こえてますよ。

ベルンハルトは笑顔のままだけど怒らないのでしょうか。怒らなければ良いと言うわけではないのでフィーネには後でお説教です。


「そろそろ行こうか」


手を差し出してくれるベルンハルトの手に自分の手を重ねる。

久しぶりにエスコートして貰うが違和感を感じない。むしろしっくりくるような感覚に変な感じがする。


屋敷を出ると馬車に三人で乗ります。

いくら中が見えない場所といっても外でふたりきりは避けたいですからね。


「リーゼと二人が良かった」

「リーゼお嬢様に関して変な噂が出るのは嫌なので」

「僕が揉み消すよ」

「噂は簡単に消せません。それに殿下が消されるとそれに関してまた良くない噂が出ますので」


うーん、やっぱり仲良くないですね。

別に喧嘩をしているわけでもないので放っておくのが一番かもしれません。

世の中にはこういう意思疎通の図り方もありますからね。拳と拳で語り合うみたいな。


「こっちはリーゼの話をしているのに本人はどうでも良さそうだね」

「リーゼ様はそういう方なので」


急にこちらを見てきます。


「噂ですか?貴族の噂は半分以上が信憑性の低いものですからね。耳に入ってくる噂はほとんど聞き流していますよ」


特に他人を貶すものは耳障りだ。

前世の頃から陰口とか大嫌いなんですよね。

それとなく言わないように、信じないように注意しますよ。


「それに悪い噂なんて他にもっと悪い噂が出たら勝手に消えますよ」


これは前世から言える事。

人はより話題になりそうな、叩きやすそうな噂に食い付くのだ。そして噂の相手を貶めたら次の噂に食い付きまた人を貶める。

本当に愚かですよね。

私に関して酷い噂を流そうとした人がいましたが、その人自身が自分に関する悪い噂に飲み込まれて自滅してしまった事がある。

どこかの親バカがそうなるように仕向けたのでしょうが怖いですね。


「同じ人物が追い込まれる可能性だってあるだろう…」

「そうです、もっとご自身を大切にしてください」


どうして二人に責められているような感じになっているのでしょう。

さっきまで言い合いをしていたのに急に息ぴったりになるのは吃驚するのはやめて欲しいです。


「気持ちは有り難いのですが、そこまで心配しなくても私は大丈夫です」


私は自分の悪口は気にしないタイプですからね。気にしたら相手をつけ上がらせるだけですから。

看過できないものに関しては動きますけど私が動く前に動いてくれる人もいます。

ただ普通の妬みのような噂は好きに言わせてあげますよ。ほらストレス発散って大事ですし、それくらいの壁になってあげる心の広さはあります。

ただ私の大切にしている人達の悪口を言うのなら容赦するつもりはない。


「それでも心配なんだ。気を付けてくれ」


ベルンハルトの言葉にフィーネも頷きます。

要するに言動に気を付けろってことですよね。


「ベルン様には言われたくないのですが」

「え…?」

「ベルン様が無闇やたらと私に絡んでくるせいで変な噂が流れるのです」


仲の良い婚約者であろうとする気持ちは分かるけどやり過ぎは良くない。

主に王族に媚を売ろうと必死な貴族達に私が睨まれてしまうのだ。


「ですのでベルン様も外での言動には気をつけてくださいね?」


うんうん、とフィーネが頷きます。

どっちの味方なのでしょうね。もちろん私ですよね。


「……善処はする」

「では、私も善処しましょう」


フィーネが小さく拍手をした気がしますが気にしないでおきましょう。

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