第21話
フィーネが私付きの侍女になってから一週間が経った。相変わらず真面目モードの姿しか見せて貰っていない。
しかし流石はエマの孫娘である。仕事が早くて正確だ。
なにより私の気持ちを察する能力が高いのが素直に凄いと思う。まだ十二歳なのに。
「そう考えると私って駄目な主人ですよね」
「なぜ僕は君の愚痴を聞かされているのかな…」
目の前で苦笑いをするのは婚約者ベルンハルトだ。
今日は彼とのお茶会の日である。
なぜか毎回二人きりなのだ。子供と言っても貴族の男女が二人きりというのはあまり良い事ではない。しかし初回の時以外はずっと庭のガゼボでお茶会を開いているのだ。
遠くに護衛が配置されているのでオッケーだそうです。護衛だけじゃなくてフィーネ待機しているのはなぜだろうか。
「リーゼは最近あの侍女の事ばかり話すね。妬けるよ」
ベルンハルトとフィーネはあまり仲良くならしい。あまり親しくされても困るけど、会うたびにバチバチしているので困りものだ。
「仕方ないじゃないですか。ベルン様は自分の事をあまり話さないのですから」
「…聞きたいの?」
「友人関係は気になりますね。お兄様とも友人だったみたいですし」
屋敷から出して貰えない私は友人と呼べる存在がいない。
母が招待を受けたお茶会について行く事も最近は増えたが遠巻きにされてしまう。
公爵令嬢は辛いものだ。
「そうか…。良かったら今度僕の友人の家に一緒に行かないか?」
「友人?」
「フランメ伯爵家の嫡男だ」
フランメ伯爵家の嫡男って、まさか…。
「ベルン様のご友人のお名前ってディルク・フォン・フランメ様ですか…?」
「知っていたのか?」
「き、貴族図鑑で見ましたわ」
「君は勉強熱心なんだな」
ごめんなさい、半分は嘘です。
ディルクはゲームの攻略対象者だから知っていたのだ。実在するのか確認するために貴族の図鑑は見たけど本当に居た。
「あそこには妹もいるし、友達になれるかもしれないだろ?」
「ユリアーナ様ですわね」
「本当に凄いな、リーゼは…」
いえ、ごめんなさい。ユリアーナも前世の頃から知ってます。彼女はディルクルートの悪役令嬢ですから。
超が付くほどのブラコンな妹だ。
ただガサツというか、大雑把な性格なのでやる事も古典的な嫌がらせだけだ。
大好きな兄に「お前なんか妹じゃない」と突き放されるのが可哀想だったのをよく覚えている。
悪役令嬢同士で友達になったら悪の組織を作ってるみたいで微妙な気分になる。
「それで、どうする?」
「……行きますわ」
それでも友達が欲しいのだ。仕方ないじゃないですか。
それに今のユリアーナは悪い子じゃないかもしれないし、悪役令嬢になる未来を潰せるかもしれない。
会いに行くだけ会いに行きましょう。
「そうか、良かった。しかし初めて一緒に出掛けるのがディルクの家とは…」
「良いではありませんか」
「そうだね。君と出掛けられるならどこでも大歓迎だよ」
まさか
何も起きないと良いですね。
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