第19話
フィーネとエマを引き連れて、屋敷の中を歩いていく。大きな屋敷である為、部屋もいっぱいある。覚えるのは大変だろうなと思う。
「まずはフィーネの部屋に行きましょう。荷物を置いてからの方がゆっくり回れますからね」
「はい!天使様!」
変な単語が聞こえてきたような気がするけどおそらく気のせいだ。
ゴンッと鈍い音がして振り向くと頭を押さえるフィーネと握り拳を作るエマがいた。
「ご案内ありがとうございます、リーゼ様」
やっぱり、さっきの言葉は聞き間違いだったようだ。
天使はフィーネのような子を言う。私みたいにやさぐれ人間には相応しくない言葉だ。
私の勉強部屋の近くにあるフィーネの部屋に到着する。
「ここがフィーネの部屋です」
「……あの、こんな立派な部屋をもらって良いのですか?」
普通の部屋に見えるけど立派なのだろうか。
私も公爵令嬢生活が長くなってきたのでまともな判断が微妙なのだ。
「あ、もしかして誰かと相部屋ですか?」
「いえ、一人部屋ですよ」
驚くフィーネの背中を払ったのはエマだった。
「貴女はヴァッサァ公爵令嬢であられるリーゼお嬢様に仕えるのです!責任ある立場になる事を自覚しなさい!」
「は、はい!」
怒ったエマは怖かった。
驚いていると「失礼致しました」と謝られてしまう。気にすることないのに。
エマに言われて自覚したけど私はかなり偉い立場の存在らしい。中身は使われていた側の社畜だったので違和感がある。
「この部屋は好きに使っていいから荷物を置いて着替えてください」
「は、はい!」
「終わったら一番奥にある部屋に来てください。私の部屋なので」
「え……リーゼ様の?」
「勉強をする為の部屋です。自室はもうちょっと離れた場所にあるわ」
「な、なるほど」
この一角は使用人の部屋が集まる場所になっている。使用人と言っても専属侍女や侍従、執事長や料理長など責任のある立場の人達がいるだけ。他の方々は敷地内にある別邸に住んでもらっている。
「では、また後で」
「はい!」
勉強部屋にてフィーネの着替えが済むまではエマの淹れてくれた紅茶を飲みます。
「フィーネ、大丈夫かしら」
「あの子はあれでもデューネ家の者ですよ」
「ふふ、期待してるのね」
「だからこそ厳しくしているのです。愛の鞭です」
素敵な関係だ。
私も久しぶりにお婆様に会いたくなって来た。
あ、この世界のですよ。前世を思い出してからは会っていませんが気になりますね。
祖父母は公爵領に住んでいる。父が長期休暇を取らなければ会いに行けないのだ。
フィーネに聞けば二人の状況を教えてくれるかしら。
そんな事を考えていると扉をノックする音が聞こえてくるので「どうぞ」と返す。
「お待たせ致しました、リーゼ様」
「フィーネ、その格好…」
驚いたのはフィーネの服装が侍女服だったから。私の侍女になるので当たり前の服装だけど今日は仕事がない。私服でも良かったのに。
「リーゼ様、先程はお見苦しいところをお見せしてしまい大変申し訳ありませんでした。屋敷の案内ですが、他の者に頼む事にします。リーゼ様はごゆっくりお寛ぎくださいませ」
誰ですか、この子…。
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