幕間6※フィーネ視点
私の名前はフィーネ・デューネです。
デューネ家は貴族ではないが代々ヴァッサァ公爵家に仕えさせて頂いている名門。
私も生まれた時からヴァッサァ公爵家に仕える事が決まっている。それに対して不服はない。むしろ誇りに思っているくらいだ。
いつから仕えるのだろうと考え始めていたある日の事、私が公爵様の愛娘トルデリーゼ様の専属侍女になる事が決まりました。
どんな人なのだろう?
優しい人だったら嬉しいなと思いながら一ヶ月を過ごした。その間、両親から散々扱かれたせい…いえ、おかげで見られる程度のスキルは身に付ける事が出来た。
王都に向かうの日がやって来た。
別に会えなくなるわけでもないのに親に泣かれてしまいました。
公爵家が用意してくれた馬車は馬車なのかと思ってしまうくらい快適で、一人で乗るという贅沢はもう二度と出来ないだろう。
私の緊張が薄まってきた頃にようやく馬車が王都にあるヴァッサァ公爵家に到着した。
領地にあるお屋敷に比べると小さいですが、それでもかなりの大きさをしている。
薄まっていた緊張が一気に高まります。
鳴らしていいのかと戸惑いつつベルを鳴らしました。
こんな大きい屋敷でもベルってあるんですよ。驚きです。
「フィーネ!」
「エマおばあちゃん!」
出迎えに来てくれたのは私の祖母であるエマおばあちゃんだった。抱き着いたら抱き締め返してくれましたがすぐに離されてしまう。
久しぶりの再会だというのに…。
「おばあちゃん?」
「お嬢様をお待たせするわけにはいかないよ」
「あ、は、はい!」
「姿勢が悪い!しっかり歩きなさい!」
この感じ、お母さん達を思い出すなぁ。
両親よりもエマおばあちゃんの方がずっと厳しい人ですけどね。
長年公爵家に仕えているだけある。
「ほら、行きますよ!」
「はい!侍女頭!」
「よろしい!」
あの態度のエマおばあちゃんにおばあちゃんと言ったら長い説教をされますからね。
そこはもうお母さん達で経験済みだ。
長い庭を越え、辿り着いた屋敷の中に入っていく。
もうすぐ主人に会うと考えたら吐きそうになってくる。
「しっかりしなさい、お嬢様はお優しい方なんだから…」
「はい…」
これまた長い廊下を抜けて辿り着いたリビングのような場所。そこにあるソファに一人の少女が腰掛けていた。
太陽の光に当てられてキラキラと光る銀色の髪、甘く緩められた琥珀の瞳。
天使ですよ、天使がいます。
天使っているんですね、ここは天国ですか。
「初めまして。私はトルデリーゼ・フォン・ヴァッサァと申します。お名前を伺っても?」
天使は私に近づいて囁き…ではなく挨拶をしてくれました。
声まで素敵なんて最高ですね。
「は、はひっ…。あ、えっと…」
ちゃんと挨拶を考えて来たのに天使の登場に全てが吹き飛んでしまった。
「しっかりしなさい」
バシッとおばあちゃんにお尻を叩かれてしまいました。
うう、お嬢様の前で恥ずかしい。
「お初にお目にかかります…。エマの孫のフィーネ・デューネでございます…。お、お嬢様にお仕えさせていただくことになり…光栄です…」
今度は言えました。声が震えてましたし、辿々しかったですけど言い切りました。
おばあちゃんは呆れた顔をしていたけど、お嬢様を見ると優しそうに微笑んでくれた。
やっぱり天使ですね。
「フィーネと呼んでも?」
「こ、こ、光栄でございます!」
天使様に名前で呼んでもらえるとはもう死んでも良いくらいだ。
いや、ダメです。死んだらこの方にお仕え出来なくなりますから。それはダメです。
「私の事はリーゼと呼んでください」
天使は私にそう言ってくれました。
「は、はい!リーゼ様…」
リーゼ様。
これから何度も呼ぶことになる名前であると胸に刻みつける。
「フィーネ、私が屋敷を案内するわ」
「お嬢様、それは…」
リーゼお嬢様の提案をおばあちゃんが止めようとしました。
主人が侍女の案内をするのは良くない事ですからね、仕方ないです。
「エマ、ダメなの?」
「お嬢様がそうしたいのなら…」
堅苦しいおばあちゃんが一瞬で折れましたよ。でも、無理ないです。
しゅんとするリーゼお嬢様の愛らしさには敵いませんよ。
「フィーネ、行きましょう」
「は、はい!光栄です!」
差し伸べられた手を握った瞬間、素敵な笑顔を向けられる。
どこまでついて行く覚悟が決まりました。
一生お仕えしますからね、
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