第19話

シーン6 その1


 暗転した。エンドロールが進む。低い声、高い声が暗幕で覆われた教室のあちこちから漏れた。すぐに拍手が起こった。照明がついた。視聴覚室は満杯とはいかないまでも八割くらい埋まっていた。そのほとんどは見知った顔だった。同学年の他に先輩後輩にも声をかけた効果があったのか、わざわざ足を運んでくれた。自主製作動画の上映が終わったのだ。

 教室の前に並んだ。宇治大吾、根岸さよ、海原ちとせ、櫛田、大市、岐原、須賀らが一礼をした。海原ちとせが簡単な挨拶をすると、再び拍手が起こった。指笛を吹く生徒もいた。宇治はこづかれた。一言をという意味だ。が、事前に何も言えないと拒否を示していた宇治大吾ははげしく首と手を横に振った。笑いが起こった。長くもなく、短くもない一言の後、一礼した。教室の戸が開けられると、観客のすぐ後に、大市や岐原、須賀は脱兎のごとく出て行ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る