第6話 ●全員集合 ~ 報告しますね

あれから一週間経過した。その一週間の間にトウリョは3回、石を鑑定に持っていったが、トウリョのもとにカナタたちは訪れることはなかった。


あれだけきつく言ったのだから、もう来ることはないだろう。


そうトウリョが思っていた矢先、


「こんにちは。」


カナタがオオトリとコネクトと共に、トウリョのもとに訪れた。


「あんたか!もうオレの前に現れるなと言っただろ!」


トウリョはカナタの顔をみるや、怒鳴り声をあげた。


「今日お伺いしたのは、例の調査結果がでたからですよ。なので、鑑定人の方のところに来ていただきたい、というお願いです。結果が気になりますよね。」


カナタは相変わらず、涼しい顔をしている。


「は?出たのか?調査結果が?どうやって?」


「それは、関係する方たちの前で説明したいと思いますので、とりあえず鑑定人の方のところに来ていただけますか。私たちは先に言っていますので。」


そう言うと、カナタたちは、一足先に鑑定人のところへ向かった。




鑑定人の店の前に、当事者が集まった。


鑑定人であるジャジー、領主であるガメツ、採掘人であるトウリョ、カナタ、オオトリ、コネクト。


そして、このほかにコネクトの後ろに2名の男性が立っていた。




「皆さん、お集りいただきありがとうございます。石の出荷量が少なくなっている件での調査結果がでましたのでここでお知らせいたします。」


カナタがそういうと、表情に変化があったのは、ガメツとトウリョの二人だった。ジャジーは相変わらず無表情であり。


「で、犯人はだれだったんだよ!」


トウリョが食い入るように聞いてくる。


「じらすのは趣味ではないので、さっさと報告します。犯人はトウリョさん、あなたですね。」


カナタがそういうと、全員の視線がトウリョに向けられた。


「は?何を根拠に言っているんだよ!犯人はこの領主と鑑定人だろ!アンタ、こいつらから何かもらったのか?!」


トウリョはあらぬ疑いをかけられたといわんばかりに、抗議をした。




「もう証拠は挙がっているので説明します。」


「まず、鑑定人のジャジーさんの鑑定は全く間違っていませんでした。鑑定はとても正しいもので非の打ちどころもありません。」


「ジャジーさんに渡す前に、すでに鑑定通りの石が入っていました。つまり粗悪な石の割合が多かった、ということです。」


「これでジャジーさんが犯人、という説は無くなりました。」


カナタは淡々と説明した。


「はあ?なんで、ジャジーの鑑定が正しいってわかるんだよ。あんたこの前、鑑定の同席断られたろ!同席したっていうのかよ!もしあんたが鑑定に同席したなら、このジャジーが違反したことになるぞ!鑑定には他の人間は同席しちゃいけないんだからな!そもそも真面目なこいつが法を犯すわけないだろ!」


そのカナタの説明に対して、トウリョはまくしたてるように反論した。




「その通りです。ジャジーさんは法を犯すような方ではありません。先ほどのトウリョさん、あなたの指摘を一つ訂正させていただくと、鑑定には『他の人を同席させてはいけない』ではなく、『鑑定資格のないものを同席させてはいけない』、とあります。」


「そんなこまけーこと、だから何だっていうんだよ。」


「ですから、鑑定資格のあるものであれば、同席してよい、ということです。なので、コネクトさんの後ろにいらっしゃる鑑定資格のあるお二人の方を、コネクトさんに頼んでお呼びして、ジャジーさんの鑑定に同席させていただきました。」


そういって、カナタはコネクトの後ろにいた二人の男性(鑑定人)を紹介した。


「で、鑑定のダブルチェックならずトリプルチェックを行った結果、ジャジーさんの鑑定は全く問題なかった、という結論に至りました。」


カナタの説明に対して、トウリョが何か言おうとしたところ、カナタはその前に畳みかけるように話をつづけた。


「で、トウリョさんあなたはきっと、1回の鑑定ではばらつきがある、というでしょうから、日を変えて3回分鑑定を行いました。その3回とも同じ結果がでましたから。私たちが1週間前の最後の鑑定に同行してから、3回鑑定のため石を持ち込みましたよね?」


カナタの指摘に対して、トウリョは何か反論をしようとしたが、これ以上言い訳する言葉がでてこない。




「トウリョさん、あなたは、鑑定人であるジャジーさんが無口で他言するような人ではないこと利用して、わざと粗悪な石を入れ続けたのでしょう。」


「ちなみにトウリョさん、私が一週間前にジャジーさんに、謝礼払うから鑑定に同席させてくれ、とか、粗悪な石を10倍の値で買い取らせてくれ、とあえて違法なことをお願いしたことを覚えていますか?あの時、ジャジーさんの反応だけでなく、あなたの反応も見ていたんですよ。大慌てするあなたの反応をね。」


「案の定、ジャジーさんは、私の申し出に対して全く興味をもたなかった。それだけでジャジーさんの真面目な人柄がわかりました。」


「一方、トウリョさんあなたですが、わたしがジャジーさんに違法なことをお願いした時、あなたはかなり慌てていました。もちろん自らの採掘権がなくなることを心配してのことだったかもしれませんが、コネクトさんに確認してもらったところ、通常、鑑定人が採掘権をはく奪する、ということは無い、とのことです。それにもし鑑定人がそんな暴挙にでたら、国に訴えればいいことですので。」


「そう考えると、あなたのあの慌て方は、もしジャジーさんがわたしの要求のどちらかを受け入れた場合、あなたの悪事が明るみにでることを恐れた、ということですよね。」


「私の調査結果は以上です。ということで、なぜこのようなことをしたのか。あとはコネクトさん、よろしくお願いします。」


そういって、カナタはコネクトにあとは任せることにした。




「では、トウリョさん、詳しいことは別のところで聞きますので、こちらへ。」


コネクトがそういうと、いつの間にか来ていた衛兵にトウリョの連行を依頼し、トウリョは連れていかれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る