冷ややかな街
雪見夜は夜の冷気が冷ややかな街を一人静かに歩いていた。
警邏のパトカーが一台道路を通る。パトカーはサイレンを鳴らしながら、どこかに向かっていった。
すっかり夜の冷気に冷やされて、頭が冴え冴えになっていた。
一面が血液で満たされていた。
夜はしとしとと垂れ落ちる血液をただ呆然と眺めていた。
頭が陥没した骸が地面に倒れている。その骸は女子高生だった。制服を着たヒトであったものは白目を向いて仰臥していた。地面に頭を打ち付けて、キスしていた。血液が頭から滔々と流れ出て、排水溝へと吸い込まれていく。
先刻のパトカーはこの光景を見つけたのだろうか、おそらく見つけていないのだろう。でなければ、こうして誰も集まっていないのは可笑しい。野次馬が夜なだけもあるまい。
夜は死体から魂の気流が立ち上るのを感じ取った。もくもくと空に登る霊魂の導べは空気を濁らせる。
空を見ると、月が綺麗だった。青白い月光が夜の足元を照らし出す。足には紅色の液体が流れ出す。赤と青の色が混ざり合い、紫の流体へと変わりだす。
夜は空を見た。空には月夜の影に六つの魂の陰影が見えた。
夜は胸くその悪さを感じた。六つの魂が出払っているのは、この事態、出来すぎている。やるせない焦燥感が夜を襲った。
「はぁあ、もうなんで。化け物退治なんて懲り懲りだよ」
夜は静かに呟いた。この呟きも、静寂を切り裂くほどのものだとは誰が思おうか。
夜はビルの中へ向かった
完全な廃墟ビルは人々を鬱屈とした闇へと誘う。暗がりの階段を一段ずつ登ると立入禁止の門扉が一つあった。扉を開けると、そこには六つの魂がふよふよ浮いていた。
夜が学生服のスカートを少し捲し上げると、そこには鞘に収まった短刀が見え隠れする。短刀を鞘から抜く。器用に短刀をくるくると回転させる。3回転した所でナイフを逆手で握る。
魂は形を変え人間の姿へと変怪する。
夜は、ナイフでその魂を切り裂いていく、一人は頭を切り、また一人は体を切り刻む。
どこに行こうとも魂は成仏させてみせる。彼女にとってはそれが生き甲斐なのかもしれなかった。
人形の幽鬼を夜は切り刻む。切った先から体は溶け落ちて、ずずりと溶解液を垂らしだす。ナイフの切っ先が月夜に照らされている。また一人二人とどんどん成仏に追い込んでいく。全てを切り裂いていく。
「貴様らなんかに私が負けるとでもホントに思っているの?」
夜は独り言を呟いた。
人形の幽鬼は既に消え去っており、それ反応する存在なんか消えてしまっていた。
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